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動物園のない阪神間で、ネコ科猛獣?に出会える8スポット

来年は寅年ですね。「阪神」で「トラ」と聞くと、ソワソワする人が多そうですが、今回は違った視点から。野球のタイガースではなく、寅年にちなんで、ネコ科の猛獣(…のようなもの)に会える阪神間のスポットを紹介します。「阪神間」とは、神戸市と大阪市に挟まれた兵庫県南東部のことで、動物園が一つもありません。それでは、今季大活躍したタイガース佐藤輝明選手の背番号「8」にちなみ、来年の末広がりを祈念して「8選」で参りたいと思います。 

■スポット1*「甲子園浜」(西宮市)
 ~干潮時にだけ会えるライオン~

  甲子園浜を散策していると、ちょっと変わった石を見つけた。大きく開いた口に、たてがみやひげまで。フジツボや海草がびっしりとついているが、それはまさしく百獣の王ライオンの顔だ。

 実はこれ、戦前に東洋一の遊園地と呼ばれた「浜甲子園阪神パーク」の遺構。ここ甲子園浜一帯に動物園やレジャー施設が広がり、大衆浴場もあったらしい。ライオンの顔は、その浴場で使われていた湯口部分に飾られていた像だ。口から湯を流していたという。しかし戦時になると、パークは軍に飛行場として接収され、取り壊された。海中には飛行場の遺構もある。
 潮が引くこの時期だけ、浜辺に姿を現すライオン。誤って踏んづけると、思いっきりほえられるかも?

(2007年6月6日付朝刊より)
(1942年の鳥瞰図。中央下にあるのが初代阪神パーク)

今で言うと、スーパー銭湯みたいなものでしょうか。
戦後になると、阪神パークが復活し、2代目は約1キロ北東の阪神甲子園球場の近くにできます。
とりわけ人気を博したのが「レオポン」です。

■スポット2*「リゾ鳴尾浜で待機中」(西宮市)
 ~レオポン、安住の地は?~

 ヒョウとライオンの異種交配で生まれ、西宮市の阪神パーク(2003年閉園)で一大ブームを呼んだ「レオポン」の雄の剝製が居場所を失っている。パーク閉園後は阪神電鉄から市に寄贈され、リゾート施設「リゾ鳴尾浜」で展示されてきたが、同施設も新型コロナウイルスの影響で昨年11月に廃業したためだ。再び〝安住の地〟は見つかるか―。かつての人気者が、不安な日々を過ごしている。
 頭はライオン、体はヒョウ。明るい褐色の毛にヒョウ柄が浮かぶ。旧「リゾ鳴尾浜」の建物に入ると、備品撤去の作業が進む中、体長2メートル近いレオポン「ジョニー」の剝製が透明ケース内でひっそりとたたずんでいた。
 レオポンは1959年、阪神パークが集客の目玉として世界初の2頭を誕生させ、続いて61年にジョニーら3頭が生まれた。ヒョウ(Leopard)とライオン(Lion)の英名を組み合わせて命名された。

 マスコミが「世紀の珍獣」と大きく取り上げ、人気が沸騰。入場門そばのレオポン舎には平日でも観客が押し寄せ、魔法瓶や市販薬のキャラクターにもなったという。
 しかし異種間の人工交配で生まれた動物は生殖能力が低く、レオポンも子孫を残せない一代雑種だった。「自然の摂理に反する」と批判が高まり、この5頭以降は生まれなかった。

 レオポン誕生から約26年後の85年7月、最も長寿だったジョニーが24歳で天国に旅立つと、レオポンは文字通り〝幻〟の動物となった。
 死後は5頭全てが剝製となり、03年の阪神パーク閉園に伴って、国立科学博物館(東京)と天王寺動物園(大阪市)に各2頭、西宮市にジョニー1頭が引き取られた。
 リゾ鳴尾浜では、翌04年春から入り口付近で公開。プールやフィットネスクラブの利用者が「懐かしい」と眺め、子や孫に阪神パークの思い出を語る姿もよく見られたという。
 ところが2020年、新型コロナによる臨時休業や利用者減少が経営を直撃。運営会社に出資する西宮市が廃業を決め、施設の立つ臨海地区一帯の再整備を検討すると表明した。
 レオポンの剝製について、市公園緑地課は「一世を風靡(ふうび)した歴史の証言者。必ず適切な保存・展示場所を見つけたい」とする。
 長年、一つ屋根の下で過ごした運営会社の担当者は「がらんと静まり返った館内で向き合うと、表情もどこか寂しげに感じる。安住の地が見つかり、ずっと愛される存在でいてほしい」と願う。

 【メモ】レオポンのほか、世界にはライオンの雄とトラの雌から生まれた「ライガー」や、トラの雄とライオンの雌を交配させた「タイゴン」などもいる。いずれも生殖能力が低いほか、先天的な疾患や骨の発育不全などを患うケースが多く、短命になりやすい。

(2021年3月21日夕刊より)
(手前が旧阪神パーク=2003年3月)

この記事が出て半年が過ぎた今も、剥製のレオポンは引っ越し先がまだ決まっていません。リゾ鳴尾浜の建物の中で出番を待っていて、気軽に会えるにはもうちょっと時間がかかりそうです。
さて、さくさく進めましょう。
次はレオポンではなく、レオに会える場所です。

■スポット3*「手塚治虫記念館」(宝塚市)
 ~進めレオ! でくつろぎ~

 宝塚市で少年時代を過ごした漫画家、手塚治虫氏(1928年~89年)の業績を紹介する同市立手塚治虫記念館=同市武庫川町=が、2019年の開館25周年を前に改修を終え、再オープンした。「常設展示カプセル」で紹介する手塚作品やゆかりの品を再構成し、訪日外国人観光客向けに英語表記を追加。親子がくつろげるスペースも新設した。
 同館は1994年4月25日に開館。初年度は53万人が訪れたが、ここ10年は来館者数が低迷。09~11年度と15~17年度は10万人を割り込んだ。このため、19年4月の25周年を控えた18年12月から休館し、約1億2700万円をかけて館内を改修した。
 宝塚と手塚治虫氏のゆかりを伝える常設展示室は、内容を再構成した。1952年の医師国家試験で合格した手塚氏の医師免許証の写しなどを新たに用意し、年表もより詳細な記述を盛り込んで更新した。
 来館者の約1割を外国人が占めることもあり、英語の説明文も加えた。作品を展示するカプセルの照明は発光ダイオード(LED)に改め、手塚氏が愛用した眼鏡やベレー帽のほか、昆虫標本の写生や小学生の頃に描いた漫画なども見やすくした。
 また、親子らが靴を脱いでくつろげる「ジャングル大帝休憩コーナー」も設けられた。ジャングルの世界観をイメージし、主人公のライオン「レオ」と父「パンジャ」もいる。
 手塚氏の長男で、同館名誉館長の手塚眞(まこと)氏は「来場者にやさしく生まれ変わらせた。『世界の手塚治虫』の視点で情報を発信していきたい」とコメントしている。

(2019年4月7日付朝刊より)

この記事掲載後、手塚治虫記念館は2020年春に2回目のリニューアルをしました。1階の入り口付近には大きなディスプレーが置かれ、火の鳥やリボンの騎士と一緒に、ジャングル大帝の主人公「レオ」も出迎えてくれます。
宝塚市の文化芸術センター前にはレオの像もあります。

■スポット4*「尼崎中央三丁目商店街」(尼崎市)
 ~あの日が近づくと、空を泳ぐ

  プロ野球の阪神タイガースを応援する尼崎中央三丁目商店街。日本一早い優勝マジック「点灯」で知られるが、そのボードの上の新キャラクターが注目を集めている。
 トラ模様の体に大きな目と口が特徴の「めでタイガー」。縁起物のタイと虎のタイガーを組み合わせた架空の動物で、大きな口には「相手チームをのみ込む」という意味が込められている。
 約18年間タイガースを応援してきた先代の鳥形キャラクターが老朽化で引退し、後を引き継いだ。ホームグラウンドの甲子園球場も新しくなり、縁起を担いだ新キャラクターが、大きな目でタイガースの活躍を見守っている。

(2008年4月9日付朝刊より)

今年は惜しかった。来年に期待です。 

■スポット5*「世界の貯金箱博物館」(尼崎市)
 ~福よ来い来い、招き虎も~

 球春の到来に合わせ、プロ野球・阪神タイガースや虎に関する貯金箱約150点が並ぶ特別展「虎豪(こごう)復活貯金箱展」が尼崎市西本町北通3、尼崎信用金庫世界の貯金箱博物館で開かれている。
 同館は世界約60カ国の貯金箱約1万4500点を収集し、テーマを決めて特別展を開く。今回の展示はプロ野球のキャンプインと同時に、同金庫が募集するタイガース定期預金のPRも兼ねた。

 会場では、メガホンを持ち選手にげきを飛ばした星野仙一さんや、赤いリストバンドが印象的な赤星憲広さんなど、名監督や選手を模したユニークな貯金箱が目を引く。トラの勝利を招こうと、黄色に黒のしま模様の「招きトラ」も集合し、階段状に並べられた姿はまるで甲子園のライトスタンドのようだ。
 夫と立ち寄った宝塚市の女性は「赤星選手の貯金箱があってびっくり。現役時代を知っているのでうれしかった。今シーズンもたくさん勝ってほしい」とタイガースの躍進に期待した。

(2020年2月14日付朝刊より)

 ■スポット6*「伊和志津神社」(西宮市)
 ~知る人ぞ知る、トラ党のパワー?スポット~


 虎視眈々(こしたんたん)とリーグ優勝を狙うプロ野球阪神タイガース。虎党の神社といえば甲子園球場そばの素盞嗚(すさのお)神社(西宮市)が有名だが、隣の宝塚市にも虎がいたという神社があった。ただし、この虎、かなり弱かったようで―。
 阪急逆瀬川駅の北東、閑静な住宅街の中に約2500坪の森が広がる。春日造りの本殿。砂利の白と、うっそうと茂る木々の緑の対比が美しい。
 「昔はもっと広かったんですよ」と野木久子宮司。もともと6千坪あった敷地は15年前、道路工事で分断され、半分以下になった。それまでは雑木が茂り、キツネも見かけたという。
 広い広い境内だけに、こんな逸話が残る。
 安土桃山時代、朝鮮出兵した武将加藤清正が、主君の豊臣秀吉への土産に生け捕りの虎を連れ帰った。しかし、大阪城内で危険な虎は飼えない。白羽の矢が立ったのが伊和志津神社だった。
 市教委編さんの「宝塚の民話」には「境内の隅のやぶの中で飼った」とある。餌は生きた犬。村人たちは毎日捕まえて与えたが、そのうち犬がいなくなってしまった。そこで猟師が仕方なく猟犬を差し出したところ、虎ののど笛にかぶりつき、かみ殺してしまったという。
 驚いた村の役人が大阪の奉行所で事情を説明すると、「犬にかぶりつかれるなんて、その虎は猫にでもなったのだろう。放っておけ」。おとがめを受けずに済んだ村人たちは万々歳。里には再び犬が戻ってきた。
 「めでたしめでたし」で終わるのだが、それにしてもこの虎、低迷期のタイガースにも似た情けなさ。年女の野木宮司は「今年の阪神は強そうだから大丈夫ですね」と話している。
【メモ】虎については話だけで、物は伝わっていない。本殿は江戸中期の建立とされ、市文化財に指定されている。正月は4、5万人の初詣で客でにぎわい、平日は通勤前に参拝する人も。

(2010年6月10日付朝刊より)

どちらかというと犬のパワースポットでしょうか。犬に負けるような虎では優勝は遠いかも。やっぱり必勝祈願は、いつものここです。 

■スポット7*「広田神社」(西宮市)
 ~二つの被災地をつなぐ~

 プロ野球・阪神タイガースが必勝祈願に訪れる広田神社(西宮市大社町)で恒例の春祭りがあり、東日本大震災の被災地・岩手県の民俗芸能「虎舞(とらまい)」を受け継いだ阪神間の若手団体「阪神虎舞」が登場。にぎやかな囃子(はやし)に乗せて迫力あふれる舞を披露し、参拝客らを魅了した。
 虎舞は、岩手県の釜石市や大槌町で航海の安全を祈願する舞とされる。地域住民らが継承してきたが、東日本の大津波で、活動拠点が大きな被害を受けた。
 阪神虎舞は、阪神・淡路大震災で被害に遭った関西にも虎舞を広め、防災につなげようと2018年11月、民俗学者の橋本裕之さん=大阪府豊中市=が若手ダンサーを集めて結成。大槌町の「城山虎舞」に指導を受け、神戸市長田区を拠点に関西の神社やライブハウスで公演を重ねてきた。
 春祭りでは、メンバーの男女5人が2頭の虎が戯れ、ササを奪い合うなどする演目を披露。春の日差しの下、虎の姿で境内の石畳や階段をしなやかに跳びはね、荒々しく舞うと、境内から拍手が沸き起こった。
 メンバーの男性は「東北と関西をつなぐ懸け橋になれるようもっと技術を磨いていきたい」と話した。

(2019年4月20日付朝刊より)

広田神社は勝利の神さま「天照大神荒魂(あらみたま)」を祭り、境内には今、虎を描いた大絵馬を掲げています。
ちなみに近くの西宮神社は商売繁盛の「えびす大神」を祭っています。阪神タイガースは毎年、両神社を参拝して「勝利」「繁盛」をお祈りしているんですね。 

■スポット8*「兵庫県警甲子園署」(西宮市)
 ~目指せ! トラッキーとの共演~

  警察署単独では珍しいマスコットキャラクターが、甲子園署で新たに誕生した。雄のトラ「コウシくん」と雌のトラ「エンちゃん」。もちろん「甲子園」に掛けつつ、「正義の行使(コウシ)」と「エン(円)満な市民生活の実現」から名付けたとし、広報や交通安全イベントで活躍していく。
 広報用のバックパネルとウエルカムボードになって公開された。トラは近くに甲子園球場があることから阪神タイガースを意識しており、今後、着ぐるみにしてタイガースのマスコット「トラッキー」との共演も目指したいという。

(トラッキー)

  コウシくんは2019年に同署で生まれたキャラクター「トラポリス」が原型になっている。多発する特殊詐欺対策を使命とし、管内の発生件数を半減することに貢献。しかし今年に入って「もっと警察活動に広く活躍してほしい」との声が内外から寄せられ、生まれ変わりに向けて2021年5月、絵が得意な署員10人が「トラポリス工房」を結成した。

(原型となったトラポリス)

 基本デザインは、トラポリスを描いた警務課の塚本彩香巡査長が担った。コウシくんはトラポリスよりも頰の模様を雄のトラらしくとがらせ、鼻を大きくして愛らしさを強調。一方で、新キャラのエンちゃんは垂れ耳にして頰を桃色に染めた。そして、共に制服には階級章を付けた。
 同署によると、現在は「巡査」だが、「市民に親しんでもらい、今後の活躍次第では昇格するかもしれない」としている。
 名前は署員から応募のあった98候補の中から、地域4課の蔵下健也巡査の案が選ばれた。

(2021年9月10日付朝刊より)

どんどん活躍して昇任もしてほしいですね。
虎は勇気と力の象徴です。阪神間に動物園はなくとも、わたくしネコトラも虎巡りをして鋭気を養いたいと思います。 

皆さま良いお年をお迎えください。大トラ(酔っ払い)になってハメを外し過ぎませぬように。
来年もよろしくお願いします。

 〈ネコトラ〉
 2001年入社。祖父の名前は「トラオ」でした。上杉謙信こと長尾景虎、フーテンの寅さんこと車寅次郎…と「トラ」は名前に付けられることも多いようです。そういう意味では私もトラの血を受け継ぐ一人ですが、40歳を過ぎてもなかなか凄みが出てきません。ちなみに、実家で飼っているネコの毛模様はキジトラです。「ネコさま」になって膝の上で寝られると、もう身動きができません。

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