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ひょうご彩前線
異変?なのでしょうか。いや暖かくなることはうれいしいことです。3月15日、東京で桜(ソメイヨシノ)の開花宣言がありました。全国一番乗りです。観測史上で最も早かったと聞きますが、調べてみると、2020、21年も同じ日なので異変とまでは言えないかもしれません。
慌てているのは桜祭りなどイベントを開催する人たちではないでしょうか? 予定より2、3日早まってもえらいことです。一方、新聞社もひそかに慌てています。毎年この時期、新聞の1面ではスケッチ素材として、各地の桜を掲載するんです。神戸新聞でも朝刊1面で毎年、3月下旬~4月上旬にかけ、7、8回の桜連載をします。その連載を仕込む、映像写真部の同僚たちは「今年はどこにいこうか?」「どんな撮り方がいいのか?」などなど、準備に大あらわです。
こんちにはド・ローカルです。今年の桜はこれからですが、神戸新聞で昨年に連載した桜のスポットを紹介します。今年の花見の参考にしてもらえれば幸いです。
小高い丘 ピンク一色 上郡町・さくら園
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小高い丘が淡いピンク一色に染まる。兵庫県上郡町の「かみごおりさくら園」で、10種あるサクラの開花リレーが始まった。
桜名所として同町が1999年に開園。花びらの多いヒナギクザクラ(雛菊桜)や花付きのいいオモイガワ(思川)、黄緑色のウコンザクラ(鬱金桜)など約1200本が植わる。
今年の開花はやや遅れ、現在はオオカンザクラ(大寒桜)が丘を覆うように咲き誇る。訪れた人たちは、下向きに咲く花を見上げながら丘を登り、ベンチに腰を下ろして弁当を広げていた。
エドヒガン 風に揺られ 小野・おの桜づつみ回廊
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春の風が駆け抜ける。エドヒガンが堤の上で揺られるたびに、ピンクの輝きが増していくようだ。
小野市の加古川と東条川の約4キロにわたって650本が並ぶ「おの桜づつみ回廊」。北播磨地域が誇る桜の名所にも彩りの季節が訪れた。ソメイヨシノやオオシマザクラなど計5種が順次開花していく中、上流のエドヒガン70本は一足先に満開。水面に映り込む「逆さ桜」や夜のライトアップなど演出も多彩で、各地から訪れる写真愛好家らを魅了する。
開花状況は小野市のホームページで確認できる。4月10日ごろまで、回廊そばの粟田橋と新大河橋付近に臨時駐車場が開設されている。
闇夜 舞い落ちる純白 佐用・光福寺
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降り注ぐ白い花びらは、季節外れの粉雪が舞っているようだった。墨色に包まれた山あいの古刹(こさつ)・光福寺(兵庫県佐用町)に、スポットライトを浴びた大イトザクラが浮かぶ。近づくと、悠久の時を重ねる枝ぶりの迫力に圧倒された。
高さ約13メートル。腕を大きく広げたような枝は東西で約15メートルに及ぶ。樹齢300年を超える県天然記念物。幹の空洞化など、樹勢の衰えが著しく「台風などで倒壊の危険がある」といい、今年の秋には、全体に支柱を組む工事を予定している。
昭和レトロに華やぎ 神戸・王子動物園
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1年で最も遊園地が華やぐ季節が巡ってきた。晴天の下、サクラに囲まれて彩りが増していく。「遊びにおいで」。昭和の懐かしさ漂う乗り物たちが誘っているかのようだ。
約480本のソメイヨシノが植わる神戸市立王子動物園(同市灘区)。園内のレトロな遊具はこの時期、花見にも一役買う。観覧車から花を見下ろすも良し、サイクルモノレールで木々の下をくぐるも良し。ちょうど1日、満開を迎えた。
一方、市が昨年12月に示した王子公園再整備の方針素案で遊園地は廃止の対象に。愛着を持つ市民からは、見直しを求める声も聞かれ、今後の行方に注目が集まる。
谷あいの絶景 住民守り続け 川西
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川西市中部、高台のニュータウンから清流猪名川へと下る山の斜面に、サクラの野生種「エドヒガン」の群落が広がっている。地域住民が保全する7ヘクタールに自生しており、種から育てられた若木も含めた約300本が谷あいを彩る。
かつては雑木林だったが、森林ボランティアの住民らがサクラの存在に気付き、2008年に「渓(たに)のサクラを守る会」を結成した。雑木の伐採など整備を続けている。
環境保全のため普段は立ち入れないが、エドヒガンが見頃の時期には一般公開している。
美の城郭 和船ゆく 姫路城
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うららかな陽気に包まれた美の城が春色に染まる。昼下がり。音もなく、水面を滑るように進んでいく和船が目の前の情景に溶け込んでいく。
世界文化遺産・国宝姫路城(姫路市本町)で今春、2年ぶりに運航を再開した木造船「はりま」。地元識者や技術者らでつくる「姫路藩和船建造委員会」が文化保存や技術継承を目的に製造した。2013年に始まった期間限定の事業だが、昨年は新型コロナウイルスの影響で船は陸に上がったままだった。
船頭の櫓(ろ)で内堀の約1・4キロを進む。咲き誇る花を石垣越しに見上げる光景は圧巻。桜門橋をくぐり、東側から望む大天守に、戦知らずで今も威容を誇る城郭のありがたさを知る。
歩いても歩いても、春 夙川河川敷1600本
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歩いても歩いてもサクラが尽きない。西宮市の阪急夙川駅を中心に、南北2・8キロに連なる夙川河川敷緑地の桜並木。水辺を渡る風は心地よく、ソメイヨシノなど15種計約1600本がつくりだす風景に息をのむばかりだ。
見ごろを迎えた花は、陽光にきらめく水面に向かって枝を伸ばす。川岸では子どもが元気に走り回り、大人はカメラ片手にシャッターをパシャリ。春らんまんの光景に心が和む。
日没から午後9時まで、苦楽園口駅付近でのライトアップがあるが、夙川駅付近では夜間、花見はできない。
せせらぎ 両岸から競演 稲美町・曇川
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桜並木が小川を覆うように咲き誇り、一面をピンクに染める。日が傾いて夕日が河原に差し込むと、周囲はより幻想的な雰囲気に。満開のサクラの下、きらめくせせらぎで親子連れが遊び回っていた。
加古川の支流で、兵庫県稲美町北山地区を東西に流れる曇川(くもりがわ)沿い。川は古くから地元住民に親しまれ、桜並木は約30年前から10年以上かけて植えられた。今では両岸の約1キロにわたり、約400本のソメイヨシノが咲き誇る。
並木の周辺には町特産の大麦畑が広がる。冬場に出た芽が成長し、一面緑のじゅうたんのよう。見頃を迎えたサクラとの競演も楽しめる。
薄紅色の雲 古刹包む 丹波・常勝寺
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まるで山麓を漂う春の雲を見ているようだった。満開の桜が古色蒼然(そうぜん)とした仁王門と、参道の石段を柔らかく包み込む。
丹波市山南町谷川の常勝寺は大化年代(645~650年)の創建と伝わる古刹(こさつ)。宮崎実康住職によると、「竹林山」の山号が示すように周辺は竹やぶだったが、桜は1960年ごろに境内を整備した際に植樹されたという。
ソメイヨシノとヤマザクラが計170本ほど。少し時期が重なりながらも入れ替わるように咲き、山里を彩り続ける。「しばらく天気も良さそうなので、今年の花は長く楽しめそうですね」と宮崎住職。拝観自由。
鉄路染める桜色 豊岡・JR竹野駅
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そこは「桜の駅」だった。豊岡市のJR竹野駅。駅ホームを覆いそうなほど花が咲き誇る。オレンジ色の列車がゆっくりと動き出し、桜色に染まった鉄路を走り抜けていった。
駅は日本海のほど近く。夏は透明度の高い海水浴場で知られるが、春はソメイヨシノの並木に彩られる。たけの観光協会などによると、同駅の桜は半世紀以上前からあるといい、現在も毎年多くの花を咲かせている。
車窓から眺めるもよし、駅に降りて楽しむもよし。さまざまな角度で見られることから鉄道や写真の愛好家らが兵庫県内外から訪れている。
山城包む春色 洲本城跡
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山城が桜色に包まれる。急峻(きゅうしゅん)な坂道を歩くと、陽光を浴びた花が最後のきらめきを放ち、目に優しく溶け込んでくる。
国史跡・洲本城跡(洲本市小路谷)は、標高約130メートルの三熊山にそびえる。戦国期からという歴史を伝える城周辺では、約200本のソメイヨシノやヤマザクラが花を付ける。
今月2日ごろに八分咲きとなった。現在も満開の木はみられるが、ここ数日の暖かさで散り始め、時に花吹雪が起きる。みずみずしい新緑が芽吹き、山上で季節の移ろいを味わえる
<ド・ローカル>
1993年入社。映像写真部記者たちが東に、西に、北に、南に、足を運び、カメラを構え、ドローンを飛ばし、シャッターを切った渾身(こんしん)の1枚を並べてみました。今年はどんな桜を目にすることができるでしょうか? 花見の場所でどんなドラマが待っているのでしょうか? 少し楽しみです。
#サクラ #姫路城 #夙川 #王子動物園 #洲本城 #竹野駅