岸田奈美さんは、やっぱりすごかった。
播州人3号です。岸田さんが神戸新聞にやってきました。あの岸田奈美さんです。神戸市出身、西宮市の大学に通い、兵庫ともゆかりの深い作家さんです。インタビューに撮影、録音、著書へのサインとほぼ3時間にわたる当日の模様を紹介します。
12月7日午後。岸田さんは大きなスーツケースを転がしながら神戸本社に来られました。
インタビューが実現したのは、ある新聞記事がきっかけでした。
岸田さんのエッセイの中にも取り上げられている父、岸田浩二さんのインタビュー記事です。
20年前、地域の魅力的な人を取り上げる連載で紹介されました。
この記事についての岸田さんのツイッターからつながり、インタビューが実現しました。
神戸本社10階「スタジオリブ」に入り、席につかれた岸田さん。
おもむろに尋ねます。
岸田さん「あのパンダは何ですか?」
社員「スタジオの大明神なんです。王子動物園とコラボしてジャイアントパンダのタンタンのグッズなんかも販売してまして…。ごにょごにょ」
岸田さん「そうなんですか。いやー、何か倉庫みたいですね」
全員「???」
「スタジオリブ」のある部屋は、もともと災害時の備蓄品の保管場所でした。
スペースをつくってスタジオに仕立てていますが、現在も「アルファ米」や「災害用飲料水」の段ボールが仕切り板の間から見えてしまうのです。
これまで何人ものゲストがスタジオを訪れましたが、そして何人かはきっと気づいていたはずですが、真正面から「倉庫」と指摘したのは岸田さんが初めてでした。
そんなやりとりで場がなごみ、インタビューが始まります。
文章を書き始めたきっかけや本のタイトルの決め方、神戸に対するイメージなど、どんな質問にも岸田さんは丁寧に、よどみなく答えてくださいました。
ぜひ聞いてみたいと思っていた問いも投げ掛けてみました。
「岸田さんの表現には嫌みがなく、読んでも人を傷つけない文章のように感じます。気をつけていること、発信する際のルールのようなものはありますか」
答えは意外なものでした。
「だれも傷つけない文章っていうのは、この世の中に存在しないと思っていてます」
「宝くじに当たった」という文章をたとえに、その理由を説明していただきましたが、ネタバレになるのでここでは控えます。
岸田奈美さんのインタビュー動画などを配信するオンライン特番「神戸新聞フェス2021」はこちら。
インタビュー動画(長いバージョン)はこちら
インタビューのきっかけが岸田さんの父浩二さんの記事と書きましたが、実は母ひろ実さんも、そして岸田奈美さん自身も神戸新聞に登場しています。
岸田さんの記事が掲載されたのは2011年6月11日付朝刊です。東日本大震災の発生から3カ月に合わせたものでした。
当時大学生だった岸田さんが、災害時の障害者介助の方法を冊子などで発信し、被災地支援に役立てている活動を紹介しています。
切り抜き(コピー)を示し、「この当時から物書きになるという考えはありましたか」と尋ね、当時の思い出を交えたエピソードを期待しました。
が、答えは「取材を受けたことすら覚えてないんですね」。
取材当時、ベンチャー企業に参加し、会社に泊まり込むような忙しい日々だったといいます(本にも紹介されていますね)
ただ、記事の内容を見てこんなふうに話されました。
「津波で車いすを流された人や避難所で困っている障害のある人たちに何か支援したいという思いがあったんです」
1時間弱のインタビューを終え、写真撮影のためカメラマンが本社ビル内を連れ回します。
当日はあいにくの雨でしたが、晴れていたらビルのあるハーバーランド周辺をかなりの時間歩いていただくことになっていたでしょう。
その間、スタジオではばたばたと模様替えが進んでいました。
音声コンテンツ「めっちゃ兵庫」の収録のためです。
スタジオに戻った岸田さんは30分ほど前とほぼ同じ内容の質問に対しても、初めて聞かれたかのように答えてくれました。
音声も撮り直しなしの一発OKです。
岸田さんが出演した「めっちゃ兵庫」はこちらから。
ここまで約1時間半。
弊社からのお願いはさらに続きます。
今年10月に発行された著書「傘のさし方がわからない」へのサインです。
積み上げられた10冊の本へのサインです。
インタビューは12月25日の特番「神戸新聞フェス2021」で配信するほか、26日付朝刊の「編集委員インタビュー」でも紹介します。
サイン本は特番のプレゼントです。
サインといえば、戦国武将の花押のようなものだと思ってましたが、
岸田さんは丁寧に書き込み、かわいいイラストも添えてくれました。
ちょうど8冊目だったと思います。
ちらりと見えたのは「パンダ」の絵でした。
スタジオ入りしたときのやりとりを覚えてくれていたのか――
その場にいただれもが感動したはずです。
社員「パンダですね。パンダは好きなんですか」
岸田さん「全然~」
全員「……」
岸田さん「でも、嫌いではないですよ」
とっさのフォローにわれわれは救われました。
事前にお伝えしていた予定が終わりかけたときです。
社員「あの~、今回のインタビューを配信する特番のPR動画に一言お願いしたいんですが、撮影をお願いできますか」
居合わせたほかの社員は「なんぼほどお願いするんや」と心の中で突っ込んだはずです。
「あ、いいですよ」と岸田さん。
「何てしゃべりましょう?」「いつ配信するんですか」などのやりとりがあって、カメラが回ります。
今度もリハーサルなしで、一発で撮り終えました。
いよいよ、終了というときです。
播州人3号「われわれもnoteで『うっとこ兵庫』というのをやっているんですが、そこで今日のやりとりを紹介してもよろしいでしょうか」
岸田さん「どうぞ、どうぞ」
約3時間。すがすがしい印象を残し、岸田さんは再び大きなスーツケースを転がしながら神戸駅方面へと向かわれました。
<播州人3号>
1997年入社。岸田さんの著書「もうあかんわ日記」の12ページに岸田さんが手掛けた神戸の地図があります。本の中で「特段、なにもない」と描かれた新開地駅付近には顔のイラストと「ヤス」が配置されています。どうしても聞きたくてインタビューの合間に尋ねてみると、やはりファミコンゲーム「ポートピア連続殺人事件」のヤスでした。「今さらネタバレもないでしょうから」と岸田さんはさらりと言いました。
#岸田奈美 #note #神戸新聞 #神戸 #フェス #傘のさし方がわからない #もうあかんわ日記 #パンダ #ヤス