ようやく増えてきたように感じます。駅ホームに設置された転落防止の柵やロープです。「ホームドア」や「ホーム柵」などと呼ばれています。つい最近まで兵庫はどちらかというと整備の進んでいない地域でした。駅利用者らの命を守る安全施設の整備の歴史を、播州人3号が振り返ります。
神戸・三宮の主要駅に登場したのは2年ほど前でした。
神戸三宮駅ホーム柵完成 阪急
来年2月、全ホーム設置
形状は異なりますが、電車が駅に進入する際にロープや柵が線路とホームを隔てる仕組みです。
目の不自由な人がホームから誤って転落する事故が全国で相次ぎ、各社とも設置を加速します。
冷静に考えると、特急や新快速電車がかなりの速度で通過する駅も多く、そのそばを人が歩くというのは危険な状態です。
過去の紙面では「欄干のない橋」と呼ばれていました。
少し古い記事ですが、ホーム上の危険を数字が裏付けています。
駅ホーム事故死 10年で65人
近畿2府4県 06~16年
接触防止ドア設置進まず
兵庫28人 高い死亡率
危険であると分かっていても兵庫での整備はあまり進んでいませんでした。
記事中にある通り、無人運転の新交通と、新幹線を除けば、当時、ホームドアが設置された駅はわずか1カ所でした。
整備を遅らせている背景には、落ちる人の大半が「酔客」だったことも影響しているのでしょうか。「自業自得」という考えが世間にあったのかもしれません。
相次ぐ転落事故に対し、鉄道会社が放置していたわけではありません。
ホームの端で千鳥足…ではなく
酔客事故9割 突然転落
JR西が傾向分析
ベンチ置き換え、防止策本腰
線路と平行になったベンチはJR以外にも増えてきています。
けれど、線路に落ちるのは酒に酔った人ばかりとは限りません。
目の不自由な人はもちろん、体調を崩した人や子どもが転落する危険もあります。ホームの端を歩いていてバランスを崩すことも考えられます。
線路とホームを隔てる柵が有効であることがはっきりしていますが、ネックとなっているのは多額の整備費用でした。
1駅で億単位の費用がかかり、柵を設置しても開閉にかかる時間がダイヤに影響しかねません。
鉄道会社は値上げによって安全対策費を捻出するという道を選びます。
JR西 来春10円値上げ
京阪神地区の都市部 ホーム柵設置などに充当
値上げに対して賛否は分かれるでしょうが、危険を大幅に防げるのであれば理解も広がるのではないでしょうか。
年末を迎え、お酒を飲む機会が増えます。
「酔って落ちる方が悪い」ではなく、ホームから人が落ちない社会を目指す方が暮らしやすいように感じます。
<播州人3号>
1997年入社。駅ホームで電車待ちの先頭に立っていると、もしも落ちたらと考えることがあります。ホームによじ登れるか、ホーム下の空きスペースにもぐるべきか、電車が接近していたら反対の線路に逃れられるか―。ホームに柵があれば、そんな想像をしなくて済みます。橋をわたるときに落ちる場合を想定しませんもんね。
#ホームドア #ホーム柵 #転落防止 #鉄道の安全