コロナ感染記
これは2020年7月の第二波が始まった頃の話です。
その頃は今の第七波と違って、コロナの感染者が出たこと自体が大きなニュースになっていました。
それこそ感染者を出した飲食店はネットによって潰されかねない怖さもありました。
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私はバー経営の63才男性
2020年7月3日金曜日
お店の来店客がコロナを発症し、その本人から私に電話があり、私が濃厚接触者であると告げられた。
翌日から当分の間お店を臨時休業にした。
7月5日に保健所から連絡があり、お店で立ち会い現場検証をした。感染者が当店に来た時の様子、座席の位置、他の来店客などを聞かれた。保健所員はそこから濃厚接触者を特定するようだ。
7月7日、保健所からの電話でPCR検査を受けるように言われた。
その日の午後に指定場所で検査を受け、翌日8日に陽性と判明、すぐ病院に隔離された。
入院すると若い女性の看護師さんに「どこのお店で感染したんですか?」と聞かれたが、自分の店でコロナ感染があったと漏れ伝わったら大変なことになると思ったので、とっさに「保健所から言わないように言われてます」と答えた。
入院後に携帯に保健所から連絡があり、当店で濃厚接触者に特定された来店客に対し、私から電話をする様に言われた。その後、保健所員が直接電話をしてPCR検査を促すらしい。
数日後、PCR検査を受けた来店客から陰性だったと連絡をくれたが、その人と一緒に来店していた友人は検査を拒否したとのこと。私はその時、検査拒否ができるのかと思った。
さらに、別の来店客の女性2人も、悩んだあげく検査を拒否したと知った。
もし陽性と判定されれば2週間の隔離と接触者の聞き取り調査があり、親友や家族も濃厚接触者になる可能性がある。周りからコロナと見られ、日常が壊れてしまう恐怖で検査を拒否してしまう人もいるのだ。ただし保健所は拒否者にも2週間の健康観察をしていると思う。
看護師さんは私の病室(個室)に入るたびに完全武装で、出る時には着ていたビニールの服とフェイスシールドとビニール手袋をダンボールのゴミ箱に捨てて行く。
あっと言う間に段ボールが一杯になり、数日すれば部屋に段ボールが積み上がった。
入院時は少し喉がいがらっぽく、少し下痢気味だったが、数日したら38度の熱が出た。
朝起きたら汗びっしょり。常に喉にタンが溜まった様な感じで嫌な咳が出る。
体温は37.1°Cと微熱、翌日夜に38.0°C、その翌日は平熱、その翌日はまた微熱。
毎日体温が一定しない。36.5°Cだと思ったら5分後には37.5°Cだったり、体温計が壊れていると言って取り替えてもらった程だ。
レントゲン撮影2回、血液検査などを行ったが特に問題無し。ただ嫌な咳があったので先生にお願いして肺のCTを撮ってもらうと、少し肺炎の兆候が見られた。
毎日、シャワーに行く以外は病室から出られない。
i Padと病院内のWi-Fi があるから何とか過ごせるが、ベッドで横たわっているだけの生活は本当に苦痛だ。
入院から10日目を過ぎて先生に退院を勧められたが、嫌な咳が治らないのでPCRの再検査をお願いした。
後日陰性判定が出たので、入院から15日目にやっと退院できた。
入院費用は一切払っていないが、後に健康保険の通知を見ると20万円かかっていた。
退院後も肺の機能が弱く感じるので、たまに大きく深呼吸して肺を膨らませる様にした。
完治するには数ヶ月はかかりそうに思った。
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幸い、当店来店者の陽性確認者は4人でした。
もし5人以上だったらクラスタとみなされ、新聞報道されていたと思います。
当時は、感染者の出た店舗は公表すべきだというネットコメントも多く、もし店が特定されればネット拡散による魔女狩りで廃業に追い込まれていたかもしれません。
当店が急に臨時休業にしたので「あの店はコロナに違いないから、もうあのビルには近づかない」と言いふらしていた人もいました。
コロナより怖いのは人間ですね。