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シン・長田を彩るプレイヤー ~『三国志』作者の偉業を後世へ!ギャラリー館長の誓い~(前編)


今回は、KOBE鉄人三国志ギャラリー館長の岡本伸也さんを取材しました。
『三国志』や『鉄人28号』で有名な横山光輝よこやまみつてるゆかりの地・長田。
そんな長田で、横山作品の魅力を通してまちおこしに尽力されている岡本さんの想いとは。
前編では、岡本さんと三国志との出会いや、三国志の魅力について教えていただきました!


【出会い、そして好きなことが仕事になるまで】

―記者―
ご出身はどちらですか?

―岡本さん―
須磨です。

―記者―
三国志との出会いはいつ頃ですか?

―岡本さん―
小学校高学年ぐらいに、児童文学の三国志を読んだのが最初ですね。
同じ頃に、NHKで人形劇三国志というのをやっていて、それも観ていました。
ただ、高校生ぐらいのときに、もう掘り尽くした感じがあったので、一旦卒業したんです。

―記者―
それからどうして戻ってこられたんですか?

―岡本さん―
24年ぐらい前、広島でWeb関係の仕事をしていたときに、新規事業として三国志の事業を提案したんです。
三國無双というゲームのデザイナーさんに絵を描いていただいて商品を展開するという事業と、中国から三国志に関連する商品を輸入して販売するという事業だったんですが、そのときに勉強し直しました。
小学生から高校生の間に、大学の先生が書いたような専門的な本まで集めていたので、それを捨てずにおいていたのがすごく役に立ちましたね。

―記者―
学生の頃から詳しく勉強されていたんですね!
Web関係のお仕事から、なぜ鉄人三国志ギャラリーを運営されることになったんですか?

―岡本さん―
山口県に三国志城博物館というのがあったんですよ。
中国の成都という都市にある、諸葛孔明しょかつこうめい劉備りゅうびが祀られている博物館がプロデュースした施設です。
その三国志城博物館が勤務先と近かったので、そこで10年ぐらい三国志イベントをさせてもらっていました。

活動しているうちに、神戸で横山光輝先生の鉄人28号と三国志を中心としたまちおこしをするから、協力してもらえないかという話があったんです。
勤めていたWeb会社がちょうどたたむタイミングだったので、こっちに戻って来ました。それが17年ぐらい前になります。
当時イベントで実際にお客さんと関わったり、博物館の展示にちょっと携わらせてもらったりした経験が役立ってます。

【展示の工夫】

―記者―
長田で鉄人三国志ギャラリーを始めて、苦労されたことはありますか?

―岡本さん―
NPOでやっているので、基本的に予算がほとんどないことですね。
展示物は、ほぼ私の持ちものだったり、貰ってきたものなんです。
ちゃんと作ったのは、趙雲ちょううんの銅像ぐらいですかね。

諸葛孔明の像

―岡本さん―
この孔明像も貰ったものなんです。
全国で三国志の展示会があったときに協力したんですけど、それが終わった後に「これ使う?」って言われたので頂きました。

ギャラリーの展示をほとんどお金をかけずに作ったのは、自慢でもあります。
しかも、鉄人28号が完成した2ヶ月後に作ったんですよ。
2ヶ月で、こういうギャラリーを整備しようって話になって(笑)

―記者―
そんなに短い期間で作り上げたんですね!すごいです。

―岡本さん―
展示内容も時々変えています。
昨年末はドラマ『パリピ孔明』の展示をしてました。
ディーン・フジオカさんが着ていた劉備の衣装展示や、神戸出身の森山未來さんが演じたオーナーの名言を中心にしたパネル展示などを行いました。

―記者―
ギャラリーではソフトクリームも売られてますよね。
メニューも岡本さんが考えられてるんですか?

―岡本さん―
そうですね。三国志にこじつけたソフトクリームです(笑)その武将のシールが付きます。
わざわざ遠くから来ていただくので、面白いことをと思って。
お客さんも、ゲームや漫画が好きな人から研究的なことが好きな人まで幅広いので、その人のレベルに合わせた「三国志100問テスト」も用意しています。
これはテレビ朝日の『博士ちゃん』にも取り上げてもらいました。
この100問テストを目当てに来る人もいるし、ゲームが好きな人はゲーム関連の展示が目当てだったりするので、本当に幅広くやってます。

本当はね、横山先生の作品をどんどん推して使いたいんですけど、版権があってなかなか簡単には使えないんですよ(笑)
鉄人28号のモニュメントはすごい経済効果を生んでると思うんですけど。
2010年頃には、わずか1年で140億円くらいの経済効果があったとか言われてましたね。
ここからどう継続していくかですね。

【時代も国境も超えて】

―記者―
ギャラリーに来られるお客さんは、どんな方が多いですか?

―岡本さん―
地元の方というより、全国から観光で来られる方が多いです。
どこから来られたか、白地図に色を塗ってもらっているんですが、去年は1年で全都道府県達成しました。
お客さんの数もコロナ禍で減ってたんですけど、ちょっとずつ戻ってきていて。
今年もだんだん増えてきています。

―記者―
地図を見ると、海外の方も来られているのがわかりますね!

―岡本さん―
三国志はそもそも中国の話なので、アジアには三国志が好きな人が多いみたいです。
でも、中国にはこういうエンタメ展示館みたいなものはなくて。
日本ですごい人気なので、最近は逆輸入して中国でも人気があるみたいです。
三国志の時代は日本の戦国時代に似てるので、日本人にとって親しみやすいんですよね。

ファンの年齢層も本当に幅広くて、小学生からご高齢の方まで来られます。
三国志の人気は江戸時代からですからね、もう400年ぐらい続いてる、珍しい作品だと思います。
時代ごとにいろんなメディアに取り上げられて、進化してるみたいな感じ。

―記者―
パリピ孔明とか、まさにそうですよね。

―岡本さん―
そうそう。
三国志は廃れない作品なので。
横山先生の『三国志』は1000万部突破しています。
普通の作品は、物語が終わってしまうと人気が落ちていくと思うんです。
でも三国志は、ずっと人気が続いて売れ続けるという特殊な作品なんですよ。

―記者―
三国志のどういうところが人を惹きつけていると思いますか?

―岡本さん―
三国志は、長い分物語に名シーンがいっぱいあるんです。
その名シーンが面白くて。
当時は儒教*文化なので、約束を守るとか、日本人の心を打つような義理人情とかが結構あって。
諸葛孔明も、最初の約束を守って死ぬまで戦い続けるという人なんです。
そういうところに魅力を感じますね。

それからね、全員が成功してないんですよ。
他の時代にも似たようなお話はありますけど、始皇帝が国を統一したとか言ったらもうそれで終わってしまう。
でも三国志は、三国って言ってるからもちろん一国になって終わるんですけど、それまでみんなが成功せずに終わっていくという刹那的な感じが人気の理由だと思います。
完結しない魅力というか。

―記者―
確かに、他の作品にはなかなかない魅力だと感じます。
岡本さんはどの人物が特にお好きなんですか?

―岡本さん―
結局、劉備です。まわりまわって劉備。三国志の主役です。
本人は普通の人なんですけどね、すごい人たちに支えられて成功していくんですよ。

―記者―
普通の人というイメージはありませんでした!意外です。
三国志に興味を持ち始めた人におすすめの作品はありますか?

―岡本さん―
もうそれこそ漫画、アニメ、ドラマになったパリピ孔明だったりね。
今はドラマやアニメでも、三国志にまつわる作品が多く見られるので。
それから児童文学みたいな、1冊で楽しめるものも、実はおすすめだったりします。
いきなり横山先生の作品を読めといっても、漫画だけで60巻あるんですよ(笑)

―記者―
そんなにあるんですね!(笑)

―岡本さん―
1回読んだだけじゃ全体像は全然つかめないし、そもそも何回読んでも全体像をつかむのは難しいので。
それより名シーンを知っていくことで、頭の中で何となく組み合わさって、「ああ、こういう流れなんだな」ってわかる。
児童文学は大事なところを押さえてあって読みやすいので、良かったらぜひ読んでみてください。

―記者―
三国志の魅力が凝縮されているんですね。読んでみようと思います!


前編では、岡本さんがKOBE鉄人三国志ギャラリーを運営されるに至った経緯や、時代や国を超えて愛され続ける三国志の魅力について伺いました。
登場人物が成功しないのが面白いという意外なお話に、記者たちも三国志への興味が増すばかり!
後編では、三国志がつないだ絆や岡本さんのこだわりを深掘りします。お楽しみに!
(編集:すず、かかけつ)


*孔子を創始者とする、個人の道徳や社会の理想を説く思想・宗教。