シン・長田を彩るプレイヤー ~縁を紡ぐチャレンジャー~(後編)
今回は手作りクロワッサンとこだわり紅茶のテイクアウト専門店「9683」の代表である後藤 涼さんを取材しました。前編では、開業までの軌跡を伺いました。後編では、クロワッサンと紅茶の魅力やこだわり、長田への熱い想いをお話していただきます。
「9683」
兵庫県神戸市長田区日吉町2-1-2 108
営業時間:8時~17時(売り切れ次第閉店)
定休日:火曜日 TEL :078-766-6422
HP:https://sito.9683-nekonote.com/
Instagram:https://www.instagram.com/9683_nekonote/?hl=ja
base:https://9683.base.shop/
クロワッサンと紅茶で“口福感”を
―後藤さん―
このお店にはキャッチフレーズがあります!
『クロワッサンと紅茶で口福感を♬』です。
食べ物商売というのもあり、幸福感の「幸」を「口」にして、“口福感”にしています。
―記者―
そこにもユーモアをいれてるんですね!
―後藤さん―
ターゲットとして設定しているのは、30代から40代の女性です。
私自身、結婚し、子供を授かったことで、妻への敬意を抱くようになり、家事に育児に仕事にと、忙しい毎日を過ごしている女性の方に当店のクロワッサンと紅茶で口福な時間を提供できたらいいなという思いからきています。
―記者―
素敵ですね。
―後藤さん―
クロワッサンは町のパン屋さんに行けば取り扱いがあると思うのですが、クロワッサン“専門”と謳って商いしているのは少ないです。
知っている限りでは三宮に1軒、姫路に1軒あります。(取材時点)
―記者―
そうなんですね。
クロワッサンとても美味しかったです!
―後藤さん―
お口に合って幸いです!
―記者―
後藤さんはクロワッサンを作ったりはされないんですか?
―後藤さん―
僕はどっちかというと食べる専門ですかね~(笑)
―記者―
経営面の方に尽力されているんですか?
―後藤さん―
そうなりますね。
拙いながらインスタやネット通販・店の雰囲気作りに力を入れてますね。
パートさんには、インスタ投稿とストーリー更新を毎日必ずしてもらうようにしてます。
ほんとありがたい限りです。
他にもGoogle Mapの口コミをチェック&即返信するようにしています。
―記者―
そういった考え方はどこで身につけられたんですか?
―後藤さん―
米屋さんで働いていた時の社長の影響や異業種交流会で聞いた体験談とかが参考になっています。
あとは書籍を読んだりして取り入れたりしています。
お義父さんはクロワッサンを作り、私には何ができる?と考えた時に、紅茶に目が留まり、紅茶は異国文化のイメージがある神戸と親和性が高いし、ターゲットの女性、妊婦さんでも飲んでもいい飲み物であることや、コーヒーはコーヒーだけで完成ですが、紅茶は何かと食べ合わせることで1+1=2じゃない可能性を見出してくれます。
フードペアリングという観点で見ると、紅茶は合わせるものとの相乗効果で良さが増していく。
それがいいんですよね。
―記者―
確かに紅茶単品でテイクアウトはあまりないですね。
クロワッサンも紅茶も種類が豊富ですよね。
―後藤さん―
クロワッサン専門と絞っているんですが、ズラッと約20種類並んでいます。
おやつ系にもなり、惣菜系にもなり、バリエーションの多さが魅力だと思ってます。
紅茶も茶葉の種類だけじゃなくて飲み方も色々あり、当店では特に兵庫県下で2店舗ほどしか提供していないであろうエスプレッソマシーンを使って抽出するティーエスプレッソもあります。
クロワッサンと同様に、紅茶専門と絞っているんですが、バリエーションがすごく多いです。
―記者―
本当ですね。
―後藤さん―
当店は、汎用性が高い商品を2つ掛け合わせました。
クロワッサンと紅茶。
そこから更にもう1つ当店を差別化するために、私が大好きな猫を入れたんです。
現在、猫2匹と暮らしていまして、猫がメインの店舗デザインにしました。
地域に根差したお店になるために
----下校中の子供たちが通りかかる----
----少し談笑----
―後藤さん―
地域の子供たちについて話をすると、私は子供が好きで、お店の前の通学路を子供が通るのを見て「あー、ええな。」と思っていました。
そこで、地域の子供達が自由に落書きできるホワイトボードを店頭に用意しました。
ほんと楽しそうに描いてくれています。
―記者―
いいですね。
他にも未来チケットという取り組みをされてますよね?
―後藤さん―
子供たちにも馴染みのある・地域に根差したお店でありたいなと思って。
それに近づく1歩として、未来を担う子供たちを応援したいという趣旨で、未来チケットというものを始めたんです。
それは1枚200円のチケットに夢や今頑張ってることを書いてくれたお返しに、そのチケット1枚でお好きなクロワッサンや紅茶と交換できるんです。
―記者―
すごく素敵なことをされているんですね。
―後藤さん―
この取り組みが話題になりまして、関西テレビの「よ~いドン!」で月亭八光さんが取材に来てくれました。
地域に根差したお店になるために、子供や女性・年配の方を大切にしたい。
ベビーカー、車椅子の方も入れるようにDIYして入口部にスロープを設置したり、ワンちゃん連れの人が買い物しやすいように、お店の前のテーブルの下段にリードをかけられるように工夫したり、来るお客さんの様子をみて何をしたら喜んでもらえるかというのを日々考えてます。
長田のいいところで、そういうのを聞きやすいお人柄の方が多いです。
お客さんと「こういうのあったほうがいいですよね。」みたいな話をして、次来た時に「こんなの作ってみたんですよ。」って言ったら、喜んでくれて、こちらも嬉しいですし。
それで自然とまた次の来店に繋がってお店が潤う。
長田をもっと活かさなあかん
―記者―
長田における活動で満足していることはありますか?
―後藤さん―
長田での活動については、僕はちょっと辛口になります(笑)
ポテンシャルがあるっていうのは、この1年半で体感したので、長田をもっと活かさないともったいないなと感じています。
当店は商店街に属してないので、商店主の集まりに参加する機会もなかったんですよね。
商売ってすごく難しいし、地域のイベント情報も入ってこない。
情報の機会損失ってめっちゃあると思うんですよね。
今は新長田まちづくり株式会社運営の井戸端会議ができて、人も増えてきたのでいい形が出来てきたなと思います。
それでもまだこの地域の良さをフルで活かしきれていないと常に感じています。
―記者―
地域の良さを活かすために、何か考えはおありですか?
―後藤さん―
長田にはいろいろなコミュニティがあるのですが、そのコミュニティ同士が相乗効果を生むような何かがあればいいなと思っています。
イベントをするにしても飲食店だけじゃなく、例えば司法書士さんをお呼びして、成年後見とか相続とかのお悩み相談ができるようなブースを作ってみても面白いんじゃないんかなと。
業種問わず井戸端会議に参加する意義もあるし、そういうことを続けていきたいですね。
―記者―
そうですよね。
いろんな業種の方が集まることで、新たな顧客獲得の機会になるかもしれないですもんね。
雇用を生み出す
―後藤さん―
そうですね。
あと、雇用を生むことはとても重要な事だと思っています!
地域を知るためにも、より良くするためにも。
自分のお店だけが潤いたい訳じゃなくて、街全体が活性化して欲しいです。
活性化することで雇用も生まれて、いい循環ができると思います。
よそ者・若者・ばか者という3つが揃ってる私が長田に恩返しや貢献ができるのは、やはり雇用を生むに行きつきます!
長田は可能性がたくさんあるのに、それを活かさないのはもったいないです。
―記者―
せっかくやるなら、ちゃんとやろうよってことですね?
―後藤さん―
そうですね。
僕の昔のキャリアからもですが、せっかくやるんやったらちゃんとやろうよっていうスタイルはありますね。
長田にもそうなってほしいなって思っています。
僕ら商人は商売を通して、地域貢献しかできない。
みんなが潤うためのことを考えたらいいんじゃないかと僕は思います。
地域あってのお店だと思うので。
当店の2軒隣にはラーメン屋さんがあります。
そこの店主とは前職時代からご縁があって、ラーメン食べ終わった男性に「奥さんにクロワッサン買って帰りよ。」と言って斡旋してくれる。
僕は女性のお客さんに、「旦那さんがラーメン好きでしたら、2軒隣に有名なラーメン屋さんがあるので、良かったらぜひ。」と。
地域の盛り上がりって、そういう掛け合わせでできるんじゃないかなって思います。
隣の美容院のオーナーさんは酒屋時代に出会った友人で、この物件も紹介してくれて、オープン前から「クロワッサン屋さんできるで。良かったらぜひ。」と宣伝もしてくれました。おかげで、オープン初日はすごい行列になりました。
―記者―
みなさん協力的で、いいですね!
挑戦の場所
―記者―
後藤さんにとって長田とは?
―後藤さん―
挑戦の場です!
偶然はそこら辺にいっぱい散らばっていて、それを手にした瞬間にそれは必然に変わっていくと思っています。
長田とのご縁は色んなところにたくさん散らばっていてそれを手にした今、こうして長田で商いをさせて頂くことになりました。
生まれ育った場所や、今住んでいる場所は違いますが。長田は私にとって運命の場所なんだなと思います。
「やるならちゃんとやろう」その思いから、長田に、この地域に何か一石投じたい。
それが長田に対しての恩返しなのかなと思います。
長田は私に挑戦の場所を与えてくれました。
人との繋がりを大切にし、チャレンジすることを恐れない後藤さん。やるならちゃんとやろう!のスタイルで、お店の経営に尽力するだけでなく、商売を通して地域貢献をしたいという熱い想いがそこにはあります。皆さまにもぜひ足を運んで、クロワッサンおじさんの手作りクロワッサンと店主のこだわり紅茶、そして猫で統一されたかわいらしい空間で、口福感を味わっていただきたいです。
(編集:ひより、かずみ)