「ラクゴの知らない世界 〜落語界へ足を踏み入れた公務員〜」-Part3-
Iさん:50代、神戸市職員、落語家
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-記者-
お笑いは時系列的には神戸に就職してからですか?
-Iさん-
23歳で破門になって
そこから民間の仕事を転々として
35歳で神戸市に入りました
40歳の時に漫才を始めて、49歳になって落語かな
-記者-
いろんな笑いの要素を自分のものにされて、サラブレットですね!
ネタの作り方の秘訣とかありますか?
私はキャラクターが先にできるんです
それに日常であったネタにできそうな話をメモしておいて、くっつけてます
-Iさん-
僕は先に面白いことを思いついて作ります
落語やとそれをストーリーにしないとあかんから結構しんどいですよ
展開がね、「起承」だけで終わっちゃうんですよ
「起承」ですでに面白かったりするんですけど
それだけじゃあかんくて、「転」がなかなか…
どのように変えたらいいか難しいですね
コントは「起承」だけで成り立つようになってる感じがありますよね
-記者-
確かに!
-Iさん-
発想だけで最後までいけるような
-記者-
ノリと勢いですね
-Iさん-
落語はやっぱり場面展開させなあかんので
それが難しいですね
-記者-
今日もオチがめっちゃ綺麗についてましたね(笑)
-Iさん-
あれはタイトルがネタバレなんですどね
-記者-
タイトルはあらかじめ皆さんに伝えるんですか?
-Iさん-
落語は基本タイトル言わないので
-記者-
「出オチやないかい」ってなりますもんね
今日もほんとに最後にオチがついていて
すごい納得して、おもしろかったなーって思いました
-Iさん-
そんなオチの綺麗な話は上方落語はあんまりないんですよ
とってつけたようなオチもたくさんありますし
-記者-
それでは演じてる人の…
-Iさん-
技量ですね
文章だけやと面白くもないようなものが、誰かがやったら面白くなったりするんですよ
“試し酒”が、ほんとにそうでしたね
たいしたことない話やと思ってたんですけど
人がしているのを見て「あーおもろいな」って
それで「これなら!」って思って、今習ってる師匠に半年ごとに何しますかって聞かれた時に、“試し酒”って言いました
師匠に「難しいですよ」って言われて、やってみたらね、やっぱり難しいんです
ただ飲んで酔って、それだけで笑わさなあかんから・・・
言葉のギャグなんかほぼないですからね
-記者-
今日見て、ほんとに酔っ払いのところが面白いなあって思いました
-Iさん-
酔っ払いのところですごく笑いが起きてましたよね(笑)
-記者-
ほんと今日は大爆笑でした
技量ですね!
-Iさん-
まだまだです(笑)
-記者-
さっき習うとおっしゃってたんですけど、
一人あたりどのくらいの時間習うんですか?
-Iさん-
10分、15分ですね
対面で教えてもらうんですよ
教室に畳が引いてあって、そこに師匠が座っていて
他の生徒の人が、自分が教えてもらってるのを見てるんです
-記者-
なかなか緊張しますね
-Iさん-
他に見られている事よりも師匠に見られている方がよっぽど怖いですね
だいぶ慣れましたけど・・・
「とりあえず自分でやってください」って言われてやるんですけど
「こうですよ」みたいに教えてもらいます
めちゃめちゃ緊張しますよ
初めて習いにいった時に「本番の方が楽やで」って言われましたもん
その時は意味分からなかったですけど、ほんまに言われた通りでした
-記者-
お客さんに見られている方が楽ですか?
-Iさん-
楽ですね
兄弟子が教えてもらってるの見てましたけど、もうあの緊張感っていうのはほんまに他では味わった事ないですね
去年直系の兄弟子に30年ぶりにあったんですよ
ほんで僕、師匠に習いにいってるってことを実はその人には言ってなくて・・・
去年カミングアウトしたんですよ!
「いやーほんま怖かったよなあ。。。」いうて喋ってました
-記者-
今まで落語人生の中で辛かったことや壁にぶち当たったことは?
-Iさん-
弟子入りした時は壁だらけでしたね、ほんまに
-記者-
みんなライバル?
-Iさん-
いやライバルっていうかね、師匠との人間関係ですかね
ハマってないってしんどいですね
まあどこもそうでしょうね
どんな職場でも人間関係がはまってなかったら一番しんどいんじゃないかな
僕通いで行ってたんですけど
いつもちょっと早く教室の近くについて、早く着いたから公園でじーっとしてるわけですよ
「はよついたなあ」思って
そしたらね「あー嫌やなあ」って思ってね
-記者-
(笑)
-Iさん-
いやほんまに仕事ですよ
嫌な仕事行く前みたいな、新規採用のサラリーマンみたいな
-記者-
新人時代思い出します
-Iさん-
この前業務で大阪に行ったんですけどね
その公園見つけたんですよ
「うわこの公園やん!懐かしい」思ってね
そこに座った瞬間にその時のしんどさとかがブワーーーって蘇ってきてね
泣きそうなりました
-記者-
トラウマですね
-Iさん-
ほんまですよ
なりたくてなってるのにその公園の時が一番しんどかったです
ほんまに好きでやってるのに
-記者-
最後に、あなたにとって落語とは?
-Iさん-
簡単には言えないんですけどね
もともとやっぱ自分が好きだったものに、今こうやって「戻れてる」っていうのが、すごいなって思いましたね人生って
また昔やりたかったことをね
なおかつこの喜楽館借りてできてるというのがね
なんか輪廻みたいなね
-記者-
切っても切り離せない
-Iさん-
人生ってこんなに繰り返すものなのかと
昔やってたことを今もやってて
-記者-
私も何年か経ってからコントの熱が・・・(記者はお笑い芸人になりたかった)
-Iさん-
やったらいいのに
M-1とか出たらね、他のプロの人と一緒の楽屋ですよ
僕アキナと一緒でしたもん、アキナの3つ後でした
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-記者-
めっちゃ緊張するんじゃないですか?
-Iさん-
ほんまにすごい人は2回戦から出るからね
アキナみたとき「こいつテレビで見たことあるわ」思って
(記者の)コンビ名はなんやったん?
-記者-
コンビ名はね「ハングリー精神」やったんですよ
本当にコントとか自分で作って、学校の催し物でやったりしたくらいなんですが
-Iさん-
じゃあ今度この会議室借りてやろか
-記者-
相方探さないと(笑)
-Iさん-
やったらええよ!
-記者-
そうですね、今回改めて向き合ってみようかなと思いました!