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「ラクゴの知らない世界 〜落語界へ足を踏み入れた公務員〜」-Part1-

-Iさん-
ある老人ホームでね、毎年9月敬老の日に行かせてもらってるんですけど
若い人で83歳くらいで一番年上で99歳とかやと思うんですよ
30人40人いてはって、平均年齢が僕が行ってる中で最高に高くて90歳超えてるんちゃうかなと思うんですけど
公演が終わったらハグされるんですよおばあちゃんに「良かったわ握手して」って
この人たちがもう50歳60歳若ければどんだけ幸せやろうって笑
-記者-
モテモテですね
-Iさん-

後期高齢者のアイドルなんです(笑)

そういった人たちにも日々の楽しみを与えられるっていうのは落語家さんだからこそっていうところがありますね

Iさん:50代、神戸市職員、落語家

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-記者-
落語の活動を普段からされているとのことですが
今回でタックス寄席は3回目くらいですか?
(タックス寄席:税金部署付近で開催されている寄席のこと)
-Iさん-
3回目ですね
-記者-
新長田以外ではどのようなところで?
-Iさん-
元々ね、平成29年に始めました
-記者-
29年からですか!
落語自体はいつごろから始めたんですか?
-Iさん-

ぼくは元々弟子入りしていたことがあって

-記者-
そうなんですか
-Iさん-
22、3歳のころにある師匠の弟子になってたことがあったんですけど、破門になりまして
-記者-
それは・・・
-Iさん-
いろいろ。ハハハ
-記者-
それからはずっとされてなかったんですか?
-Iさん-
それからずっとしていなくて
設計事務所とか転々として、線路を補修する部署に34歳で入庁しました
平成18年から事務職に変わって現在に至りますね
落語自体は見ることも全然なかったんですよ
5年ほど前に弟子入りしていた師匠が脳梗塞をね、3回くらいされて
その弟子が襲名披露かなんかするのがあって
大阪のはんじょう亭という上席小屋にでるというので
行ったことなかったし、たまには行ってみようかなと思って
もう20何年ぶりですかね、落語自体を見ることがね
それを見てもう師匠が喋られないんですけど、舞台立ってニコニコニコニコしてるのに、すごい感動してね
普通は人前でしゃべる仕事は脳梗塞になったら出にくいんじゃないかと思うんですけど、その弟子が襲名したことがよっぽど嬉しかったんでしょうね
そのニコニコしてる姿にとても感動してね
やっぱり良い世界やなと
そこでなんか落語できたらええなあと思って調べてたら、今はもう習い事であるんですね
-記者-
そうなんですね!
-Iさん-
NHK文化センターに習いに行ってるんですよ
そこは師匠のお弟子さんが先生してて
どうせならその林家一門に教えてもらいたいなあって思って、5年くらい前から習いに行ってます
-記者-
見に行ったのがきっかけで落語への熱い思いが復活したんですね
-Iさん-
そうそう
-記者-
一番最初に弟子入りしたときはどうして落語への道を選んだんですか?
-Iさん-
まあ好きやったからですかね
高校生の時からかな
一人でやって笑かせれるってのがね
-記者-
今日も大爆笑の嵐でしたね
-Iさん-
落語は完全に自分一人の経験ですからね
えげつないなーとも思います
始めてプロになったときは、やばいえぐい仕事って感じました
-記者-
自分だけの空間、自分だけの演出ですもんね
-Iさん-
そうですね、一人でやらなきゃいけないんですよ
何役もすべて一人でするでしょ
演出もすべて一人で
ただ単に台本を覚えてやってるんじゃありません
新作をするとなるとね、台本から自分で考えることになるし
あらゆるものを全部ひとりでやっちゃう
-記者-
今日も3人一役ですごかったです
徐々に酔っぱらっていく役が印象的でした
-Iさん-
ただそれだけのネタですけどね(笑)
難しいのは難しい
-記者-
いるわーこういう人、と思いながらみてました
-一同-
(笑)

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-記者-
落語の一番の楽しみはどこにありますか?
-Iさん-
やっぱり人前で話しするっていうことでしょうね

「笑ってもらえる」とか、「聞いてもらえる」、「良かったやんて言ってもらえる」でしょうね


-記者-
めっちゃよかったです、今日も!
-Iさん-
ありがとうございます
習いに行くときは人前でやることさえあんまり意識せずに
ただもう一回習えたらいいなだけで行ってたんですけど
3年ほど前から老人ホームとかも行くようになって  
発表会のために半年に一個のネタを教えてもらって、発表会に年に2回ではじめました
やっぱりやり始めるとどんな趣味でも上手になりたいじゃないですか
この趣味って人前でやる以外に上達の方法ないなって思って
本番がね、練習みたいな
結局やるとなると、練習よりも人を集めるのが大変なんですけどね
そこでどうやって人を集めようかというと、人が集まっている老人ホームに営業してみた
りね
-記者-
すごいですね
-Iさん-
ぜひぜひ来てください
-記者-
ご自身で営業までされているんですね
-Iさん-
そうです、そうです
-記者-
じゃあもうマネージャー的な役割も兼ねているんですね
-Iさん-
そうですね
今は北区と中央と兵庫区のボランティアセンター3か所に、登録してるんで
地道に自分から動かなくても、連絡をくれます
-記者-
引っ張りだこなんですか?
-Iさん-
引っ張りだこなんですよ(笑)
-記者-
おお、そうなんですね
-Iさん-
月に6回くらいですね
-記者-
結構行かれてますね
-Iさん-
去年は120席しました
-記者-
120席!土日返上でされるんですか?
-Iさん-
平日は時間給を取りながらですね
-記者-
貴重なお時間を使ってされているんですね
-Iさん-
いえいえ、今日も時間給を取ってきました
-記者-
年間120席される中で、このネタ作りとか練習期間とか
スケジュールはどうな風にされていますか?
-Iさん-
とりあえず持ちネタは38個くらいありますね
その中でよくやってるやつは20回くらいやってたりするんで
その辺で全体的に、どのネタもうまくできるようになりたいなって思います
まったく新しいネタも覚えたいなとも思うし
ただ、見せる相手や行くところに応じてどんなネタが合うだろうかとかも考えて
ネタを変えるときもありますね
-記者-
へー
それは即席で?
-Iさん-
変えるときはありますよ
昔、プロがそんなことをやっていたんですよ
施設のスタッフさんが落語の後に「良かったです。そんな笑いはなかったですけど」っておっしゃってくれて
感触としてめっちゃいい日やったな!っていうのが分かるんですよね
笑い声が少なくても、すごい聞いてくれてるわと
-記者-
伝わるものがあるってことですね
-Iさん-
そうですね
想像してもらう芸なので映画みたいに全部やってくれないですから、聞いてる人に想像してもらわないといけないんです
「めっちゃ男前やな、あの人」ってセリフがあったら、
俺がどんな顔してても男前やと思ってもらわなあかんのよ
-記者-
確かに今日の公演も美人さんから多数登場人物出てきましたね
相手はどんな気持ちでやってたんやろうってめっちゃ想像しながら聞いてました
相手に想像してもらうっていうのも落語の一つのやりがいであったりもするんですか?
-Iさん-
まあその辺で責任の半分はお客さんにあると逃げれる部分もあるかなと
しゃあないな今日はって日もあります


-記者-
今まで行ったところで一番心に残ったとか、ここで出来て良かったなという思い出の場所
はありますか?
-Iさん-
ある老人ホームでね、毎年9月敬老の日に行かせてもらってるんですけど
若い人で83歳くらいで一番年上で99歳とかやと思うんですよ
30人40人いてはって、平均年齢が僕が行ってる中で最高に高くて90歳超えてるんちゃうかなと思うんですけど
公演が終わったらハグされるんですよおばあちゃんに「良かったわ握手して」って
この人たちがもう50歳60歳若ければどんだけ幸せやろうって笑
-記者-
モテモテですね
-Iさん-

後期高齢者のアイドルなんです(笑)

そういった人たちにも日々の楽しみを与えられるっていうのは落語家さんだからこそって
いうところがありますね


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