馬との関わりから学ぶホースコーチング~そこに見えるのは自分も知らない本当の自分
■最高のロケーションの中、はじめて感じる癒しと少しの恐れ
小林:小日向さんとの出会いは、2020年のはじめに共通の知人から話を聞いたことがきっかけでしたね。小日向さんがちょっと大変な時期だったね。
小日向:そうですね。当時はいろいろな事情で、馬を手放すかどうかの選択に迫られている状況でした。どうしよう…と悩んでいるときにちょうど先生とお会いして、「絶対に後悔するから手放しちゃいけないよ」と言ってくださって。先生には全く関係のない命、しかも私とも初対面にもかかわらず、こんなに一生懸命考えてくれる方がいるなんて、もうこれは頑張るしかない!と感じたのを覚えています。
小林:無事に馬たちと一緒に、今は北海道の牧場でホースコーチングのプログラムを提供しているって話を聞いて、先日僕も牧場へ行かせていただきました。
とにかくすばらしいロケーション、聞こえるのはパカパカっていう馬の足音だけ。マインドフルネスの状態で、なんだか気持ちがスーッと落ちた不思議な体験だったなぁ。
でも犬や猫と違って圧倒的に大きい馬を目の前にすると、はじめは正直恐怖でしたね。こいつにはかなわないなぁって、なんだか“日々のおごり”みたいなものを感じて。
小日向:さすが先生。マインドフルネス、そして畏怖の念は、ホースコーチングでは大切なポイントなんです。
小林:私、噛まれたしね(笑)「噛むなよー。」ってずっと思っていたんだけどね。
小日向:でも、やっぱり先生は異質なものに対する許容度が高いんだな、と感じましたよ。だいたいそこで恐怖心がわいて、嫌がったり涙してしまう人が多いんですけど、「噛むなよー。」って、なんだか優しいじゃないですか。
■自己を映し出してくれる馬は最良のコーチに
小日向:ホースコーチングでは馬にリードを付けて一緒に歩くというプログラムがあって、馬の横に立つ方が多いのですが、中にはリードを自分の頭の上に高く持って馬のずっと前の方に立つ方もいたり。「一緒に歩く」というだけでも、ホースコーチングって普段自分がどんなふうに人と対峙しているか、自分が意識していない自分としてわかりやすく出るんです。
ちょっとドキッとするようなこともあります。例えば最近あったことですが、馬が顎を上に向けながら結構な速度で人に向かってきた場面があって。
小林:それは何を意味していたんですか?
小日向:そこは私にはわからないんです。馬にはミラーリング効果(鏡機能)があって、相手の考えていることや感じていることなど、その人の“構造”に反応すると言われています。
なので、なぜそのような事象が起こったのか、答えはその相手の中にしかない。その人が本来どんな人なのかを知らない私には解説できないですよね。でも、想像の中で「もしかしたらこうかもね」とじっくり話し合う中でだんだんわかってくる。ここがホースコーチングのポイントなんです。
小林:なるほど、まさにコーチングですね。
私も実際にプログラムを体験したけど、馬と歩いてみようとしてもびくともしないんですよね。「なんで動いてくれないんだろう。」って考える。そうするとそれが内省につながって、例えば私が病院で指示を出したときに、スタッフが動いてくれるってどういうことなんだろう…なんて、普段は考えない問いが浮かんできたんです。
小日向:馬が問いを発してくれる。まさにそこがホースコーチングの素敵なところなんです。
小林: これは体験してみないとわからないですね。ホースコーチングのことを何も知らないまっさらな状態でこんな感情になれたのは、とても大きな収穫でした。今はとにかく、いろんな人に言いふらしたくて仕方ない!(笑)
■ともに命を守る仲間。未来に向けて私たちができること
小日向:馬と人間とのかかわりの多くは、乗馬や競馬のような“目的”でしか存在しなくて、それ以外の馬は残念ながら殺されてしまいます。でも、ここでは馬の“個性”を大切にしています。背中に乗せることができなくてもOK。少々荒っぽくても、年を取っていてもOK!ここが素晴らしいところなんです。
小林:獣医のみんなはとても共感していますよ。私たちのような動物病院や企業も共同オーナーとして一緒に活動できるんですよね?
小日向:はい。月に一口一万円〜の会費で「共同オーナー」になっていただくと、ここで暮らす3頭の馬を一緒に飼うことができます。それは周辺の自然保護や、子供たちを集めた無償のキッズプログラムによる地域の活性化などSDGsへの取り組みにもつながりますし、プログラムをオーナー価格で受けていただけるなどの特典もあります。また、近くに住んでいないオーナーさんにも馬の日々の様子を届けようと牧場のLIVE配信もしています。これは見ているだけでもとっても癒されますよ。
小林:これからは動物病院だってSDGsへの取り組みをしていかないとダメだと思っています。「俺たちがやらないで誰がやるの?」という気持ちで、私も引き続き声を上げていきますね。これからも応援しています!