ショートストーリー サラダチキン
おとぎ話の王子様もお姫様も、きっとこんなダイエット食は食べないだろうな。
私は、袋から取り出したサラダチキンに噛りついた。
グゥっとお腹が鳴るのも、もう気にならなくなった。
ダイエットでの少食が体に染み付いて、空腹にも慣れてきた。
むしろ空腹になればなるほど、食事が美味しくなると嬉しくなるくらいだ。
友人たちには狂人と呼ばれてしまうが。
そんな狂気も飼いならすくらいになると、自分でも特殊なのかと思いたくなる。
具体的には目指す身体は、おとぎ話のお姫様なのに中身は狂者となると、どう考えたって可笑しい。
お姫様になりたいのに、考えるのは筋肉と今日の献立のタンパク量。
お姫様に似つかわしくない考えを振り払うために、筋トレをする。
フォームの確認のために、きらびやかな装飾が施された鏡を見る。
鏡に映るのは、可憐なフリルのついたスカートを履いてスクワットをする自分。
どんなお姫様も華奢で綺麗で可愛くて、時々強い。
そんな理想になるために、私は今日も身体を鍛える。
鍛えた後のサラダチキンは、胃にも筋肉にも染み入る。
しっとりした食感と、薄く味のついた肉を何度も舌で転がし味わう。
おとぎ話の王子様もお姫様も、サラダチキンなんて食べないのだろうけど。
この先に理想のお姫様があると信じて、今日も食事を楽しんだ。
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