ショートストーリー チョコミントアイス

スーッと口の中で溶けていく。
チョコ特有の口に残る甘さもミントの清涼感に溶けてなくなる。

それは夏休みの部活帰り。
午後練の無い日。
テニス部の友達とコンビニで待ち合わせていた。
チョコミントアイスは、暑い日差しを涼やかさで紛らわせ、部活終わりの疲労を甘さで吹き飛ばした。

友達は、アイスを食べきる前に来た。
紹介したいという彼氏を連れて。
その彼氏は、私が人知れず恋い焦がれた先輩だった。
初めましての次に先輩が発した言葉。
「チョコミント俺も好き」
その言葉で、先輩の腕に自分の腕を絡めていた友達がワッと明るい口調になる。
だから、先輩と私が気が合うと思ったのだと。

先輩の好きだから食べていた。
ホントをいうと、少し苦手だった。
でも先輩に憧れて、恋い焦がれて、何度も食べているうちに、チョコミントアイスが好きになっていた。
その後、二人の結婚報告を聞く頃には、先輩への恋心も溶けて消えていた。
チョコミントアイスは、ただの好物となっていた。
チョコミントアイスを齧りながら、私は二人の結婚式の招待状に丸をつけた。

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小早川 胡桃
沢山の記事の中から読んで頂いて光栄に思います! 資金は作家活動のための勉強(本など資料集め)の源とさせて頂きます。