ショートストーリー 半チャーハン

ラーメンともう一品。
半分で事足りる幸せ。
たった半分で絶大な幸福を得られる。
それが半チャーハンの威力。
俺はそう思っている。
迷わなくて良い幸せと贅沢をしている幸せ。
口内で引き立て合うラーメンとチャーハンの
旨味。

幸せに浸りながらラーメン後の半チャーハンを食べる。
妻は、それを見て大袈裟だと呆れながら笑った。
ラーメンが日々の家族との暮らしだとすれば、半チャーハンは妻とのデート。
俺がそう力説すれば、デートの帰りにラーメン屋によるのは貴方くらいだと、またしても笑った。
確かに、オシャレな店での食事の方が良かったかとも思った。
でも、交際したての時から俺のラーメン屋愛に付き合ってくれた妻とは、やはりラーメン屋に行きたかった。
暖かい半チャーハンを一緒に食べたかった。

デート帰りに食べる半チャーハンは、いつも冷えていた。
すこしでも一緒にいたくて、でもラーメンをのんびり食べるわけにもいかなくて。
半分のチャーハンをチマチマ時間を食べていた。
それは妻も同じで、冷えていないチャーハンは美味しかったと帰り際に教えてくれた。
帰宅後二人の娘達にはムードがないと散々な言われようだった。
けれど、妻の心底満足そうな顔を見たら、またラーメン屋で半チャーハンを一緒に食べるかと思ってしまうのだ。

いいなと思ったら応援しよう!

小早川 胡桃
沢山の記事の中から読んで頂いて光栄に思います! 資金は作家活動のための勉強(本など資料集め)の源とさせて頂きます。