ショートストーリー グリーンサラダ
フリルのかわいいサニーレタスに、分厚く切った輪切りのキュウリ、カリカリベーコンをふりかけて、好きなドレッシングをかける。
フワフワでシャキシャキ、パリパリにカリカリ。
口の中は思ったより賑やかだった。
息子が夏休みの間、自由研究の名のもとに私は料理を教えることにした。
初めての料理に浮足立っている彼とまず、向かった先はデパ地下。
綺麗にサラダが並ぶコーナーを見せ、作りたいものを選ばせた。
好き嫌いの多い息子は、ポテトサラダやかぼちゃサラダ、スパゲティやハムをふんだんに使ったサラダを選ぶと思っていた。
この息子の好みに合わせて、毎食作る料理がどれほど大変か。
実をいえば自分で経験してみると良いという、少し意地悪い気持ちも混じっていた。
だから、息子が緑一色で他よりも地味なグリーンサラダを選んだのは、少し意外だった。
家に帰って真新しいエプロンに身を包んだ息子は、やる気満々にフリルレタスをちぎり、キュウリを真剣に切る。
火を使わなければいけないベーコンだけは、
私が変わりにカリカリに焼き上げた。
簡単だけど、時間のかかった緑一色のサラダを前に息子は、喜んで口をつける。
想定したよりもあっけなく終わった息子の初めての料理。
こんなものかと思いながら、私も食べてみる。
咀嚼すれば、大きく切られた野菜たちからの音はやまず、新鮮な野菜の音楽を聞いているようだった。
緑一色で寂しそうなサラダだと、思っていたけれど案外楽しく、美味しい。
サラダが無くなるまで息子と黙って、ニンマリしながら食卓を囲む。
好き嫌いが多い息子だが、料理のセンスは私よりもあるかもしれない。
息子の笑顔と良いチョイスに、そんな親バカなことを考えていた。
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