ショートストーリー ミートスパゲティ
あー、面倒い。
遊び盛りの子供達を見ながら、ふと思う。
可愛い我が子が、兄弟でもみくちゃになって遊ぶ姿は、それはそれは愛らしい。
面倒見の良いお兄ちゃんとヤンチャな弟の我が子達は、癒やしだ。
子供達の面倒を見ることが嫌なのではない。
出来るなら、一緒に駆け回りたいし、一緒に泥だけになったって良い。
面倒くさいのは、家事。
掃除と洗濯は終わらせた。
でも、料理はいちいち作らなければならない。
なんて面倒くさいんだ。
しかも、今日は夫からのリクエスト。
ぶっちゃけ萎える。
子供達の愛くるしい瞳でお願いをされるから、おねだりも聞くのであって。
同年齢で、オッサンと言っても差し支えない夫に、お願いをされてもいわゆる「キュン」が足りない。
それでもリクエストを聞いたのは、子供達が喜んでいたからだ。
「今日はミートスパゲティ」
と子犬みたいに走り回って喜ばれたら、ナポリタンに変更とは言えなかった。
今は最悪、レトルトパウチで良いかな。
なんて思っている。
公園で駆け回りながら、二人して私に手を振ってくる我が子達。
「おかーさん! 今日、ミートスパゲティ?」
朝からの何度もやり取りしたこの会話。私の答えを待ち望む彼らに、やっぱり嫌なんて。
とても言えるわけない。
卑怯な天使達めと、内心重々しく感じながら、「そうだよ」と二人に負けない大きな声で返す。
またしても、きゃあきゃあと湧く二人の歓喜の声に自分の感情なんて、どうでも良くなった。
それよりも、美味しいミートソースを作ろうと考えを改める。
脳内冷蔵庫の扉を開けて、野菜室も開けて、買い足す材料がないか探る。
ありったけの野菜、きのこをみじんに切ってやろう。
あとは、トマトソースがなんとかしてくれる。
トマトソースも火を通して、酸味を飛ばしてコンソメを入れて、隠し味に醤油とソースも入れて煮込めば、甘酸っぱいミートソースが出来る。
そう考えたら、なんだか楽なんじゃないか。
なんて思考が緩くなってくる。
今のうちに支度をしなければ。
すぐに立ち上がり、ミートスパゲティ作りに帰ろう。と大声で子供達を呼ぶ。
いつもは、遊び足りないとグズる下の息子も嬉しそうに、戻ってきた。
よし作ろう。子供達の為に。
出来たてのソースを目の前でかけてやれば、二人は悲鳴と言えるほどの声量で歓び、平らげる。
体全体を使って喜ぶ彼らのために、コチラも全力で挑ませて頂こう。
ついでに夫も喜べば万々歳ということにしよう。
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