ショートストーリー エビフライ

ちょっと奮発。
外で食べるエビフライはそんなイメージ。

煉瓦造りのおしゃれな外観の洋食屋さんで頼んだエビフライ。
大ぶりのエビが三尾、そびえ立っている。
自家製タルタルソースは、ピクルスも卵もゴロゴロ。

カトラリーもピカピカと輝いて、待ち受けてくれている。
キラキラのナイフを手にとってナイフを入れると、プリプリの弾力とホクホクの身の甘さが伝わってくる。
タルタルソースの海に十分に沈めてから、舌に乗せる。
思った以上の甘さと弾力と、存在感のある卵とピクルス。
なのに、身はすぐにほどけて喉の奥へ流れていった。
もったいなくって、小さく切りながら食べているはずが、あっという間に一尾食べてしまった。
二尾目もするすると、飲むように食べてしまい、残るはたった一尾となってしまう。

たっぷりあったはずのタルタルソースも、使いすぎて底を尽きた。
美味しいとはいえ、味気がないのではないかと警戒しつつ、泣く泣くそのまま食べる。
しかし、エビは私の考えをことごとく裏切ってくる。
塩味が甘みを引き立てているのを直に感じる。
タルタルソースはあくまで、引き立て役。
そんな風格ある味わいで、エビフライに敬意を払いながら完食した。

自分へのご褒美なんて仰々しい言い方。
だけど、あのエビフライを食べられるのは、まさに贅沢だ。
私は、財布から二千円引き抜いてレジに向かった。

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小早川 胡桃
沢山の記事の中から読んで頂いて光栄に思います! 資金は作家活動のための勉強(本など資料集め)の源とさせて頂きます。