ショートストーリー イカめし
内蔵を引きずり出す。
足を切る。
内蔵の変わりを詰める。
おぞましいホラー映画のようなはじまり。
れっきとした調理法なのに禍々しい。
なんだか、自分がサイコパス人間になった心地。
人の事をどうにも思わない。
自分とはかけ離れた人間像に気分も高揚してくる。
自分が鼻歌を奏でていることにも、気が付かないほどだった。
鼻歌が漏れていることに、気付いてもどうすることもない。
ただ、少しばかり音量を大きくしてドラマの主人公に浸るだけだ。
煮込み液に浸されていくイカ。
これから、米が膨らんでパンパンになることを想像したら、笑えてきた。
もちろん、美味しそうという意味で。
食べる頃には、モチモチの飯に染みこんだイカのエキスを呑気に味わっているはずだ。
でも今は。
あー食べたい。
と普通のことを言うだけで笑える。
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