ショートストーリー エディブルフラワーサラダ
甘い香りとカラフルな見た目に誘われて、花を食べる。
花びら特有の滑らかな舌ざわり。
なのに歯ごたえは葉野菜と遜色なく、香りに反した野草の味。
まさしく、自然にドレッシングをかけて食べている贅沢な美味しさがあった。
蝶にでもなったような気分で、うやうやしく口へ運んだ。
デパ地下のサラダコーナーで、華やかな物を食べる。
私のダイエットルールだ。
食い気がどうにもおさまらないで、夏の暑さにも打ち勝てる食欲を持つことが私の自慢だった。
だったのだが、彼氏を友達に盗られ、さらにその友達から最近太ったんじゃないかと笑われた。
その場で言い返しても良かったが、あの調子づいた鼻っ柱をへし折ってやるのも面白そうだと思いたった。
苦手な運動をして溜まるストレスのはけ口は、もちろん食。
デパ地下のサラダコーナーに捧げることにした。
いわゆる映えるデパ地下のオシャレなサラダを一回一回写真におさめる。
中でもエディブルフラワーは、一番気に入っている。
花なんて、綺麗の象徴のようなもの。
それを食べるのだから、全てうまく行く気がしてくる。
どうやって痩せたのかと聞かれたときに、花を食べたなんて聞いたら、彼らはきっと驚くだろう。
見た目や香りの割に、ワイルドな味のエディブルフラワーは、女の生態そのものだと思いながら、紫色のパンジーにフォークを刺した。
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