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映画『ばいきんまんと絵本のルルン』は30代後半のばいきんまん好きにブチ刺さるって話(ネタバレあり)


君たちばいきんまんって好き?

ちなみに私は大好きだ。
アンパンマン第一話『アンパンマン誕生』でアンパンマンがジャムおじさんとバタコさんに祝福されながら産まれる中、たった一人で落雷にうたれた卵から誕生し、「ばばばばいきーん!」と産声を上げた瞬間からばいきんまんが好きだ。
いつからどうしてそこにあったのかわからんメカメカしいバイキン城で、「アンパンマンを倒すために産まれた」と言いながら筋トレにいそしみ、信じがたい天才的科学力でUFOを作ってアンパンマンを倒しに行くばいきんまんがとんでもなくかっこよく見えた。
アンパンマンとの初邂逅で「意外と小さいな」とか言って、「こいつマジでアンパンマンに一度も会ったことないのに、アンパンマンを倒すっていう世界の意志によって誕生してるんだな」と理解できる存在の理不尽さが好きだ。

そう、ばいきんまんは「アンパンマンを倒すために存在している」。
「世界征服をしたいのにアンパンマンが邪魔してくる」とかじゃない。
「アンパンマンを倒すために産まれた」。
それがばいきんまん。なんてエモいんだ。エモすぎる。アンパンマンたおしたらどうなっちゃうのばいきんまん。私は不安だよ。

ちなみにこのエピソードは古いDVDの『それいけ!アンパンマン ぴかぴかコレクション アンパンマン誕生・アンパンマンとばいきんまん』とかに収録されているようだけど、今の子供たち的には「アンパンマンのうまれた日」っていうアニメ映画? の方が? もしかしたらメジャーなのかもしれない。
私はこっちは見てないので割愛。
こっち見ると何か+アルファの要素が足されているかもしれない。今度見ようと思う。
詳しくは公式HPでばいきんまん特集をしてるから見てくれよな

映画『それいけ!アンパンマン ばいきんまんとえほんのルルン』公式サイトより引用

ばいきんまん特集|映画『それいけ!アンパンマン ばいきんまんとえほんのルルン』公式サイト|6月28日(金)全国ロードショー! (anpan-movie.com)

アンパンマンの初放送は1988年10月3日

インターネット情報によると、アンパンマンの初放送は1988年。
37歳である筆者が1986年産まれなので、私が二歳の時にこのアニメは放送が始まった。
つまるところ、私はアンパンマンリアルタイム世代というわけだ。

そんなアンパンマンが映画になった。
1989年3月11日『きらきら星の涙』という作品だ。つまり筆者は三歳くらい。
当時我が家は貧乏だったわけなので、これをレンタルビデオで見ていた。
あらすじは「どろんこ魔王に奪われた宝石、キラキラの涙を探してアンパンマンたちの星にやってきたボーイッシュなお姫様ナンダ姫とともに、星のどこかにあるキラキラの涙を探して取り戻す」というもの。
この「キラキラの涙」というのはとてもすごいパワーを秘めた宝石で、この話をきいたばいきんまんは「俺様のもんだー!」というわけでキラキラの涙を手に入れるべく画策する。

心して聞いてほしい。
そのために、ばいきんまんはナンダ姫を監禁する。
その時、幼児虎走の性癖に明確にヒビが入る音がした。
今にして思えばだけれども、私はばいきんまんに騙されてバイキン城に監禁され、うなだれるナンダ姫をみて間違いなく言いようのないトキメキを感じていた。
その直後にドキンちゃんが「助けてあげる♡」するのも最高によかった。
というかこの『きらきら星の涙』って映画、今見返すと「とんでもねぇな」と思うシーンの連続となっている。

住民を氷漬けにしてコレクションする氷の女王とかいるし、前触れもなくバタコさんとナンダ姫を拉致する砂男とかいるし、アンパンマンの仲間であるしょくぱんまんは氷漬けにされるし、助けてくれた雪だるまたちは溶けて消えるし。
アンパンマンの世界、意外とハードだ。アンパンマンのパトロール区域外は命の危険にあふれている。

そんな『きらきら星の涙』で登場する曲『いくぞ!ばいきんまん』。
ナンダ姫に自分がいかにすごい存在かを説明するためにばいきんまんが歌ってくれるのだけど、これがマジで本当に大好きな曲だった。
あとドキンちゃんが「ドキンちゃんがどれだけ恐ろしい悪役か」を歌ってくれる曲もある。
『ドキンドキンドキンちゃん ~ドキンのうた~』これも映像付きで見てほしいからみんなアマゾンプライムとかで『きらきら星の涙』を見ようね。

閑話休題。

そんな映画などの影響によって「ばいきんまんめっちゃ好きだな」という気持ちを漠然と抱えたまま成長したアラフォーの筆者だが、この度ばいきんまんが「アンパンマンを呼んで来い!」と叫ぶ映画が公開されると聞いて「正気か???見るが???」となってのは言うまでもない。
そういうわけでさっそく見てきた。
正直タイムラインで「アンパンマン見てきた」というつぶやき見るまですっかり忘れていたけど、ダッシュで見てきた。
最初にいっておくけどこのブログにはネタバレが含まれます。

ばいきんまんがちゃんと主役です!

そりゃタイトルに「ばいきんまん」って入ってるくらいだし、映画公式もばいきんまんを押しに押しているので当然と言えば当然だけど、ちゃんとばいきんまんが主人公でした。
でももちろんアンパンマンも出てくるし、アンパンマンの仲間たちも出てくる。ジャムバタチーズもらんららん。

成長するにつれてアンパンマンから離れてしまった37歳の私が、久々に触れる「令和のばいきんまん」なわけですが、恐れていたより違和感はなかった
私の知ってるばいきんまんは、もう少し卑劣で自己中心的で露悪的だったかなと思うけど、時代の変化と「主役」ということを考えればこんなものでしょう。

大まかなあらすじはこうだ。
ある日いつものようにアンパンマンにやっつけられたばいきんまんは、不思議な絵本に吸い込まれて絵本の世界に入ってしまう。
絵本の世界は「すいとるゾウ」というゾウの怪物に襲われて大ピンチ!
そこではばいきんまんが「愛と勇気の戦士」ということになっており、全身にサブイボを立たせながら、「まてよ、アンパンマンがいないこの世界であいつを倒したら、この世界はオレサマの物!?」と思い立ち、すいとるぞうの討伐を決める。
その絵本の世界の住人であるルルンが「できないよ」「無理だよ」「怖いよ」と言って、自分では何もやらないタイプの臆病者。
ばいきんまんはそんなルルンの姿勢にイライラしつつも、「おまえなんかあっち行ってろ」と吐き捨て、全部自分一人であれこれ決めてバチバチに段取りよくすべてを進めていく。そんなばいきんまんの姿を見て、ルルンも成長していくのであった。

シンプル&オーソドックス。
上映時間は64分間と、子供の集中力がギリギリ持つレベルの長さ。そのうち半分以上はばいきんまんの独壇場(あえての誤字)だったんじゃないかな。
ばいきんまんが「アンパンマンを呼んで来い!」と叫んで、アンパンマンが来てからもちゃんと見せ場があってよかった。
アンパンマンがきたらばいきんまんが空気化するなんてことはなかったよ!
まあこの辺のあらすじも公式ページに全部乗ってるのでそちらをご確認いただきたい。

映画『それいけ!アンパンマン ばいきんまんとえほんのルルン』公式サイト|大ヒット上映中! (anpan-movie.com)

メンタル&フィジカルモンスターのばいきんまん

そもそもからして、ばいきんまんは「誰にも頼らず、全部一人でやる」タイプの悪役だ。
人を利用したり操ったりするけれど、人にお願いしたり頼ったりすることは基本的にないと理解している。
で、そんなばいきんまん。
固体としての戦闘力は基本的にめちゃくちゃ弱い
アンパンチ一発でぶっ飛ばされるし、あらゆる攻撃はUFOとか巨大メカから繰り出される。
初登場の時からメカを操っているので、ばいきんまんの戦闘力は=科学力と言っても過言ではない。

しかし絵本の世界ではバイキン城がない。
つまりあらゆるメカが一つもない。
そんななかでスイトルゾウにどうやって立ち向かう?

作るんだよ!いちから!メカを!

実のところ、絵本に吸い込まれた時点で「ばいきんまんがメカを作るターンは来るだろうな」と思ってた。
で、案の定「作るぞ!」となってニコニコ見てたんだけど、ここからがちょっと想像と違っていた。
私の知ってる幼児向けアニメと言うのは基本的に「作る過程をすっ飛ばす」ものだった。
天才科学者「作るぞ!」と言ったら、引きの画面で「カンカンコンコンコンギュオオオオキーーン!」って効果音が流れて次の場面で「完成!(ぱんぱかぱーん)」というのがお決まりだ。

しかし本作、そんなにぬるいことはしない

「何かメカを作れる材料はないのか!?」というばいきんまんが廃屋へ行く→シャンデリアやドアノブから鉄を採取→炉を作成して鉄を溶かす→溶かした鉄で斧やノコギリなのど工具を制作→木材によってメカを作成。

この一連をおよそ十分くらいかけてめちゃくちゃ丁寧にやる。
木材にかんながけもするし、壺すみで線も引く。
大工じゃねぇか。
ていうかマインクラフトじゃねぇか!!!
ビックリした。
しかもその「メカを作る」場面も、めちゃくちゃ「カラクリ制作」の趣があって、幼児向け時空の「それどうやって作った?」感がない。
しれっと火力エンジン搭載してたし。
木製のメカに火力エンジン?
言いっこなしだろうがそういうのは。大事なのは「ばいきんまんならやれそう」のリアリティであってリアルの話じゃないんだわ。

たぶん子供にマイクラが流行って、「素材を集めて道具を作り、それを大物を作る」って過程に共感とカタルシスを持ってもらいやすい土壌ができてるって事だと思う。感心してしみじみ見ちゃったし、私はずっとこういうばいきんまんのシーンが見たかったような気もする。

ばいきんまんはいつも「オレサマ大天才!」って言ってるけど、マジで大天才なんだよな。アンパンマン号をはじめ様々なマシンを創造するジャムおじさんもなかなかのものだけど、私はばいきんまんの科学力の方がワンランク上だと思う。

とにかくメゲないばいきんまん

ばいきんまんはとにかくしぶとい。
負けても負けてもアンパンマンに挑み続ける鋼のメンタルを持っている。
そんな鋼メンタルが、本作ではポジティブ方向に描かれていて見ていて気持ちが良かった。

ルルンが序盤本当に役に立たないどころかばいきんまんの邪魔になることばかりをするわけだけど、ばいきんまんは「自分も何度も失敗してるんだぞ」と言って何度も何度もやり直す。
調べてみる限り、ばいきんまんは歴代の映画でもこのようなムーブで登場キャラを慰める役回りに立つことがそこそこあるらしい。

正直のこのあたりはアンパンマン懐古厨的には「ばいきんまんちょっといい奴過ぎるな」と感じるきらいもあったけれども、そこは脳のアップデートがすんでいない昭和生まれの平成育ちが恥じるべき部分なので気にしない。

そんなことより「メカが壊れても壊れても変形して別のものに生まれ変わって戦線に立ち続ける鬼メンタル」の方が重要で、私はばいきんまんが「まだまだぁ!」つって立ち上がるたびに「世界はやがておまえのもんだ!!!」って興奮した。

シナリオ子供向けなんでしょぉ?

子供向け……とは?
「人が死なない」とか「エロシーンがない」とか「ご都合主義で助けが来る」とかを子供向けにカテゴライズするなら、マーベル作品も子供向けかもな……?
少なくとも私は「それをやられたら萎えるわ」という瞬間は一度もなかった。
「おそらく大人向けだったら、この設定を使ってああいうシーンをぶち込んだだろうな」ということはちょくちょく思ったけど、上映時間65分で「子供に理解できるように、丁寧に、しかし飽きないように」とシナリオを組んでいったらあれが最適解だったのでは?
一回「そこ以外殴ればよくない?」って思うシーンはあったけど、まあそれも別に……そんなのアンパンマン以外のあまたの映画で「おいおいおいおいなんでだよ!?」って思う瞬間なんて無限にあるし……
撃たれないチェーホフの銃があったのは確かだけど、それが撃たれてたらばいきんまんかっこよすぎて夢女が量産されちゃうしね。
虎走が言ってるのはどのシーンかな!? みんな劇場で確認しよう!

っていうか、音がいいね

私がこの映画で一番びっくりしたのは「音」かもしれない。
アンパンマンたいそうが冒頭で流れるんだけども、この曲の入りがギュンギュンにとがっている。使われてる楽器の種類が豊富で音の幅が広くて深い。私みたいな素人の耳でも「ん? 今聞いてるのアンパンマンたいそうで合ってるよね?」ってビックリする。
子育て中の友人が「アンパンマンは子供が怖がらないようにあまり大きい音を出さないように作られてる」と言っていた通り、音量は小さめなので体にどかどか来るような音響ではないんだけれど、「もっかいあのアンパンマン体操聞きに行きたいな」と思った。

幼児向けならではの気づかい


実は明確に「子供向け」という映画を映画館に見に来たのは大人になって初めてのアンパンマン。
ジブリとかディズニーはなんだかんだで「大人もみにくる」ことが前提だけど、アンパンマンだとそういうわけにはいかない。

まず予告編のチョイスが違うよね。これはどの映画見てもそうだけど、実写映画の広告すらなかったんじゃないかな。全部アニメだったと思う(熊本のTOHOシネマズ調べを見た一般人)。
前項で話した「爆音を出さない」もそうだけど、一番びっくりしたのは「証明が暗くならなかった」ことかもしれない。
予告が始まっても「あれ?暗くならないな」と思ったんだけど、まさか本編始まっても明るいままとは。
まあ子供がどっかいっちゃったりするかもだし、いろんな物落とすかもだし、明るい方が絶対いいよね。いい考えだと思う。

総括

いい映画でした!!
せっかく何で、配信で過去の映画さらってみようかな。

っていうか値段に一番びっくりした
一般料金2000円。
2000円!??前は1700円とかじゃなかった!?
auマンデーならそりゃ1100円だけど!
レイトショーなら安いけど!
コロナで劇場に足運ぶ人も減ったしなあ。
アンパンマンなんて特に「配信でいいのでは?」という声が上がりそうだけど、音が良かったから、やっぱり「劇場で見たほうがいい映画だな」と思いました。
子供で満席だったら応援上映みたいになるのかな? それもまた楽しいような気がする。




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