season2-1 試験
【前回までのあらすじ】
英語が喋れるようになりたくて米兵ご用達のストリップクラブでバーテンのバイトを始めた小橋。
ボディランゲージを使えばある程度アメリカ人とコミュニケーションが取れるようになってきていた。
そんな小橋はさらなる英語力の上昇を目指し、米軍基地の中にある大学に編入することを決心しバイトを辞めた。
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ストリップの話を書き始めた時に、なんとなく海外ドラマみたいなタイトルとあらすじから書き始めるみたいな事をしてしまったせいで、シーズン2になってしまいました。
小橋のシーズン2は大学編です。ですが、この大学編は多分かなり短いです。つまりシーズン3はありません。おそらくシーズン2で打ち切りです。
専門学校の先生の勧めで米軍基地の中の大学、メリーランド大学に通うことを決心した僕は、すぐに編入の手続きを進めた。どうやって日本人の僕がメリーランド大学に編入するのかというと、メリーランド大学と日本人の仲介機関みたいなのがあって、その仲介機関の試験を受けるのだ。
僕が編入を決心したタイミングなどがちょうどよく、1か月後には試験を受ける事が出来た。タイミングが悪ければおそらく1年後だったし、無駄にストリップを辞める事になっていただけだ。
試験の内容はあまり覚えていない。多分、筆記試験と面接試験があったが、筆記試験は簡単だったんだと思う。覚えてないけど。難しかった記憶があれば覚えているはずだ。だから簡単だったんだと思う。
こう見えて僕は英検2級を持っている。高3の時にとった。だから筆記は余裕でパス出来た。問題は面接だ。面接は全て英語で行われる。
だが、当時の僕はマジで余裕をぶっこいていた。英検2級を取った時も英語の面接があったし、なんなら今の俺の英語力はネイティブだ。ストリップで本場のアメリカ人達と談笑できるレベル。英語面接なんて日本語の面接と一緒だ。マジでこんな感じで考えていた。アメリカ人と喋る時もほぼボディランゲージで伝えていたのに。
そして英語面接が始まった。ドアを開けると、そこにいたのは日本人の面接官が3人。
なんだ、ジャパニーズかよ。ジャパニーズが喋る英語なんてたかが知れている。めちゃくちゃ簡単じゃん。ストリップで培った英語力を見せてやる。
面「Hello Mr Kobashi.How are you doing?」
僕「Good.What`s up?」
僕はストリップで培った挨拶、「What`s up」を使った。痛すぎる。完全に調子に乗っている。この会話を日本語にするとおそらくこんな感じだ。
面「小橋さんこんにちは。お元気ですか?」
僕「ああ、調子はどうだ?」
これがバイトの面接なら即落ちるだろう。しかも、当時の僕のヤバイところは、この「What`s up」がそういう意味で伝わってしまうのを理解して使ったところだ。おそらく僕は「俺はネイティブなんだ。」と伝えたくてわざと使った。俺はイケてるんだぞと伝えたかったのかもしれない。腹立たしいことこの上ない。もし僕が面接官ならFワードを使って罵倒し、速攻で帰しただろう。
だが面接官たちは優しかった。何も言わずに次の質問に移っていった。なんか笑いをこらえてる感じはあった気がしないでもないけど。
面接が進んでいくにつれて思った。
「あ、あれ??なんかおかしいぞ?俺、この人達が言ってる事あんまりわかんなくない?」
だった。面接官は綺麗な英語を喋っている。よく考えると理解できないのは当たり前なのだ。
ストリップで喋っていたアメリカ人達は僕が日本人だという大前提のもと喋ってくれる。だから、めちゃくちゃわかりやすく喋ってくれていたのだ。だから僕も理解できた。僕はそれを勘違いして、「俺は英語を喋っている。」と思っていたのだ。
だけど面接は英語力を確かめるためのもの。わざわざ僕にわかりやすく喋ってくれなどしない。理解できない奴はそのレベルだと判断されて終わりだ。僕は面接中なのに泣きだしそうになっていた。
くそっ、なにがWhat`s upだ。What`s upなんて調子に乗っていったくせにその後はずっとしどろもどろじゃねーか。ほぼイエスかノーしか言ってないぞ。What`s upじゃねーよ。面接官に向かって。
そう思いながらもどうにかこうにか面接官の質問に片言で返していく。あんまり理解できないけど、まだギリギリついていける。泣き出しそうになりながらも、なんとか合格できそうだと安心し始めていた。そして、ついに僕はやらかした。多分、覚えてる感じで言うと面接官は僕にこう言ったと思う。間違えてるかもしれないけど。
面「Have you been to public place?」
意味が全くわからなかった。聞き間違えたのかな。パブリックプレイスって言ったように聞こえたけど・・・パブリック??どういう意味だ??ど忘れしたのか??確か「公的な」とか「公衆」とかの意味だったと思うぞ。だけどそんな言葉アメリカ人達から聞いたことはない。パブリックプレイス??どういう意味だ??公的な場所??図書館とかの事??裁判所とか??でもだとしたら図書館とか裁判所って言えばいい。パブリックプレイス??まじで意味がわからん。やっぱり聞き間違えたんだ。多分面接官はあれを言っていたんだろう。
そう思った僕は面接官にこう返した。
僕「No,because I`m not Catholic.」訳:いいえ、私はカトリックではないので。
カトリックをパブリックと聞き間違えたと思った。カトリックなら意味がわかると思ってしまったのだ。面接官は「あなたはカトリックな場所に行った事がありますか?」と聞いたと思ったのだ。今思うと、どんな賭けだよ。
そして面接官の顔を見た。面接官は3人とも
「・・・・???」
の顔だった。そしてもう一回言った。
面「Have you been to public place?」
僕が勘違いしたと思って、優しくもう一回言ってくれた。
だから僕も今度はもっとはっきり伝えた。
僕「No,because I`m not Catholic.」訳:いいえ、私はカトリックではないので。
面「・・・Ok,That`s it.」
やっぱりパブリックって言ってた。でも僕は全く同じ返しをした。意味が分からな過ぎたから、もうそう返すしかなかった。こうして面接は終わった。絶対に落ちたと思った。What`s upから始まって、最後は謎のカトリックではない発言で締めた面接だ。
だが1週間後、僕には合格の通知が来た。なぜ受かったのかは今でもわからない。
そしてもう一つ今でもわからないことがある。
パブリックプレイスってどういう意味??