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ドンデコルテ結成の話 M-1 2019から2020に向けて
このnoteでは、10年前に働いていたストリップクラブの話を書いているが、今回は全く違う話をしようと思います。
それは我々「ドンデコルテ」が結成するに至った経緯。
この話は、実は1回ケータイよしもとのコラムに書いた話。ケータイよしもとの僕のコラムなんて誰も見ないと思ったからこういう話を書いた。
なぜ今回noteでも書こうと思ったかというと、コロナウイルスの影響。コロナ拡散防止の為に我々芸人は一切ライブがないという状況が2カ月近く続いている。このままではいつライブを再開できるのかも一切わからない。
我々ドンデコルテの目標は『M-1グランプリファイナリスト』だ。あわよくば優勝。いや、優勝したい。是非。できれば。させてもらえるなら。頑張るし。
でも実際のところ、このままの状況では今年はM-1があるのかどうかさえも怪しくなってくる。大先輩であるタモンズさんに誘っていただき、M-1を夢見る4組でM-1に出るための『Mライブ』も今年の1月から始まった。
タモンズさん、田畑藤本さん、ゆにばーすさん、僕ら。素晴らしいメンバーに混ぜていただいている。
これがかなり良いライブで、4組がネタを2本ずつ披露し、後日4組全員で全ネタにダメ出しをしあうというものだ。しかもダメ出しをするのは芸人だけじゃない。見に来てくれたお客さんもダメ出しを出来るシステムになっている。お客さんの正直な意見を直接聞ける機会なんて滅多にない。すごくありがたい。
しかし、そのMライブ自体も2カ月行われていない。このままでは、M-1があったとしたらコンビを組み立てでネタの数が少ない僕たちはかなり分が悪い。
だから、ライブが再開した時には是非たくさんのお客さんにライブを見に来てほしい。特にMライブには絶対に来てほしい。
そのためにも、僕が昨年のM-1グランプリにどういう気持ちで『仮コンビ ドンデコルテ』として挑んでいたのか知っていただきたい。
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年末になるとお笑い界では王者が1組誕生する。「M-1グランプリ」という漫才の大会があるからだ。去年はミルクボーイさんが爆笑をかっさらって優勝した。
まだ売れていない若手の漫才師はほぼ全員参加する大会。そして、参加している芸人のほとんどはもちろん優勝を目指しているだろう。
そんな中で、僕は優勝を目指していなかった。僕が目指していたのは「コンビ結成」だ。
僕は2年前に、デビューした時から組んでいたコンビを解散している。解散した時は、次の相方もすぐ見つかると思っていた。ちょっとは周りにも評価されているんじゃないか、と思っていたから。しかし、解散した僕に声をかけてくれる人は誰1人いなかった。
今考えると当然だ。前のコンビを組んでいた時の僕は、ビジネススーツを着て、ネクタイをちゃんと締め、キャラの強い相方の横で正しい事を言う人。評価されるとしたら「間違いをちゃんと指摘出来るサラリーマン」としてだ。素晴らしい社会人だが、お笑い芸人じゃない。
そんな人間に声をかけてくれる人なんているはずもなく、僕から声をかけてお試しでやった何人かとも上手くいかず、僕はやった事のないピン芸人に挑戦した。今まで出た事のないピン芸人の大会「R-1グランプリ」にネタもないのにエントリーをした。とりあえずネタを作らないと。
「出来ない事はやらないでおこう」
僕はまずこう思った。出来ない事を無理してやってもあんまり面白くないだろう。消去法だ。
僕はあまり演技が上手くないから1人コントは無理だろう。
1発ギャグは1個もないからギャグ芸も無理だろう。
大喜利も苦手だしなぁ、モノボケはウケた事ないし。
どうしよう・・・そうだ!ピン芸人といえばフリップ芸だ!あ、あんまり絵が上手くないからフリップ芸は無理だ。
終わった。出来ない事だらけ過ぎた。残ったのはスーパーストロングスタイルの「漫談」のみ。
そんな状態で挑んだR-1グランプリ。
結果は2回戦敗退。
2回戦、人生で1番緊張した。最後の「どうもありがとうごさいました」を5回噛んだ。
それ以外は記憶がない。まず、どうやって1回戦を通過したのかわからない。
「ピン芸人」は出来ない。
出来ない事がまた1つ増えた。僕には何も残っていなかった。
一からお笑いの筋肉を鍛えないといけないと思った。
そして次の日、僕はスポーツジムに入会した。そしてハムスターを飼った。
今だからわかる。絶対そうじゃない。お笑いの筋肉の鍛え方はそうじゃない。ハムスターはマジで意味わからん。
もうこんな奴はただの「間違いをちゃんと指摘出来て、服脱いだら意外と筋肉があってハムスターを愛でてるサラリーマン」だ。社会人だったらモテそうだな。だけどモテもしない。肩書きだけ芸人だから。
もう辞めよう。
そう思い始めるまで時間はそんなにかからなかった。1人じゃ何も出来ない。でも辞めたくはない。でもこのままじゃダメだ。どうしよう。辞めるとしても最後にもう一回あがきたい。
よし、自分が1番面白いと思ってる人を口説こう。そう思った時に最初に思い浮かんだのが5年先輩の渡辺さんだった。
渡辺さんとは遊び感覚で何度か漫才をやった事があった。でもハッキリとコンビを組みたいと伝えた事はない。理由は、上過ぎるから。芸歴とかじゃない。
「格」が。
ライブではいつもウケてるし、MCも上手い、頭も抜群に良い。こんな僕となんか組んでくれる訳ない。それまではそう思っていた。
だが、もう辞める事を覚悟した人間にそんな事は関係ない。ダメだったら辞めればいいだけなんだから。
気付いたら渡辺さんに連絡していた。
「渡辺さんとコンビ組みたいです。今年のM-1、出ませんか?」
「ええよ」
え?いいの?せっかく口説き文句とかも考えてたのに。あっさりし過ぎじゃない?この人頭良いように見えて、実は何も考えてないんじゃない?変な人誘っちゃった?あ、もしかしたらまだ本気度が伝わってないのかな?そうだ、コンビを組む条件を決めよう。
「M-1でどこまで行けたら組みます?」
「準々決勝」
変な人だった!M-1って実は3回戦進出でも結構凄いんだよ!?僕も渡辺さんも前のコンビでは2回戦敗退だったじゃない!コンビとしてちゃんと活動してなくて3回戦を勝ち抜くなんて何言ってんの!?この人ホントは組みたくないんだ!クソっ!絶対準々決勝行ってやる!
もしかしたら、渡辺さんは僕を変なやり方で奮い立たせたのかもしれない。
それから2人でネタを作り、叩くという作業を繰り返した。ウケた日は帰ってハムスターにチーズをあげながら晩酌をする。ウケなかった日は罰として筋トレで自分を追い込む。それが日課になった。舞台の数が増えていくと、徐々にハムスターと晩酌をする回数の方が増えてきていた。
そして遂にM-1の予選の時期が来た。
8/2、1回戦だ。1回戦は前のコンビでも落ちた事はない。大丈夫だ。そう言い聞かせた。お客さんもパンパンに入っている。この日の為に準備してきたんだ。大丈夫だ。
僕らの出番の前のコンビのネタが終わり、出囃子がなる。そして舞台に向かって歩き出した。
ウケた。前半はちょっと微妙なところもあったが、後半に向かってしり上がりにウケていって、オチ手前なんかはかなりウケた。1回戦は大丈夫だろう。
その日の夜、僕はハムスターにチーズを2つ与え、上機嫌で飲んでいた。
おっ、合格発表がもう出ているぞ。まぁ一応見てみるか。他にも誰が受かったのか見たいし。
・・・・・・・名前がない。
まさかの不合格。信じられなかった。罰だ。僕はベロベロの状態でめちゃくちゃ筋トレして、気絶しかけた。
次の日、渡辺さんに連絡をした。再エントリーするかどうかだ。M-1は最初の方に1回戦を受けると、もう一度エントリー出来るのだ。復活チャンス。僕はもちろん再エントリーしたい。ていうか、こんな終わり方あってたまるか!渡辺さんもそう思ってるはずだ。
「再エントリーしましょう!」
「どっちでもええよ」
なんだこいつ!!どっちでもいい!?!?そんなことある!?!?!?!?もしかして乗り気じゃないの!?絶対再エントリーして準々決勝行ってやる!!
もしかしたら、渡辺さんは僕を変なやり方で奮い立たせたのかもしれない。
9/20、再エントリーの1回戦。大丈夫だ。ネタも変えた。後はウケるだけ。そして舞台に立った。びっくりした。お客さんがめちゃくちゃ少ない。ウケてるかどうかもわからない。今日の俺はお酒を飲めばいいのか、筋トレしなきゃいけないのかわからない。
そして夕方、結果が発表された。
結果は、晩酌をする事が出来た。マジで良かった。もう夏も去りかけていて涼しい時期だったが、この日飲んだビールは真夏の太陽の下のビールよりも格別に旨かった。ハムスターもついでにチーズ貰えて良かったね。
10/21、2回戦。ここを超えた事はない。ウケても落ちる。それが2回戦のイメージだった。ここを超えれないと僕はコンビを組めない。でもなんか緊張しなかったなぁ。何故かはわかんないけど、絶対ウケる自信があったのかもしれない。
出番はトム・ブラウンさんの次。しかも僕らの3つ後ろにはその日のトリである和牛さんが控えている。お客さんはパンパン。
前の出番のトム・ブラウンさんが舞台にたつと、やっぱり信じられないくらいウケていた。そりゃそうだ。面白いもん。トム・ブラウンさんが終わったら後は和牛さん待ちの状態だろう。お客さんは恐らく僕らには全く興味はない。
いいじゃないの。もしウケなくても審査員の心に届けばいいんだから。
そしてトム・ブラウンさんが終わり、僕らの出番がやってきた。そして僕らは
死ぬほどウケた。あんまり自分で「死ぬほどウケた」とか言いたくない。なんかダサいから。でも、この日は死ぬほどウケた。超気持ちよかった。北島康介状態だった。超気持ちいいしなんも言えねえ。
その日は気持ちよく呑んで、ハムスターにチーズを3つやった。
もちろん合格。あれで落ちてたらSNSで暴れるところだった。危ない。
11/11、遂に3回戦だ。初めて3回戦まで来た。周りを見ると売れている人もちらほらいらっしゃる。
「この中で勝たないとコンビを組めないのか」
そう考えてもなんか緊張しなかった。
3回戦ともなるとお客さんも満員御礼。そして3回戦からは、結果が後日に発表されるのだ。
僕らの出番は中盤。楽屋で準備をしていると、出番が終わった芸人が舞台からはけてくる。人それぞれの顔をしている。
すっきりした顔の人。
今にも人を殺しそうな顔の人。
僕は出番終わりどういう表情を浮かべることになるのだろう。
そして出番がやってきて、あっさり終わった。3分というのは、準備してきた時間に比べてあまりにも短い。
舞台からはけてきた僕の表情は、まったく無だった。
その日の夜はちょっと筋トレしてちょっと晩酌して、ハムスターにチーズはあげなかった。マジで合格か不合格か全然わからなかったから。
次の日、結果が発表された。
合格。
死ぬほど嬉しかった。だって僕は、ここで落ちたら芸人を辞めると決めていたんだから。ハムスターにもちゃんとチーズをあげながら晩酌した。酔わない程度に。
どうせここまできたらもっとやってやるんだ。そう思ったから。
ハムスターにチーズをあげている僕の表情は、決戦前の侍のようだったろう。そんな顔でハムスターにチーズをあげているところを誰にも見られなくてよかった。
11/19、準々決勝。もう正直今年の目標は達成している。即席コンビでネタもそんなに持っていない僕達がここを勝ち抜けるとは到底思えなかった。一応何個かネタはある。だけど僕達は新ネタを持ってきた。どうせ勝てないなら新ネタをやって一か八かに賭けよう。そう考えたんだ。
そして、渾身の新ネタが出来上がった。
ここでウケれば準決勝進出も全然ありえる。まだ正式には結成していないコンビで準決勝進出、万が一、決勝まで行ったらカッコ良すぎる。コンビを結成した時に爆裂なスタートダッシュを決める為に、絶対ウケてやる。
緊張はあまりしていなかった。思えば2回戦からずっとあんまり緊張してないなぁ。なんでだろう。あ、そうか。R-1の2回戦で一生分の緊張を使ってしまったのかもしれないなぁ。
ネタ合わせをしようと渡辺さんを探しに行った。準々決勝の楽屋は驚く程、広い。やっと渡辺さんを見つけた。
けん玉をしていた。
最高だ。この人もおそらく緊張してない。良い状態だ。新ネタも自信がある。思えば、最近はあまり筋トレしていないな。そうか。最近はウケているからか。
じゃあ今日も大丈夫だ。もう今後、俺は筋トレをしないで済むかもしれないな。
次は僕達の出番だ。めちゃくちゃウケてる姿が簡単にイメージ出来る。
出囃子がなる
僕達は舞台に向かっていった。
その日の夜
僕は死ぬ程筋トレをしていた。
次の日、渡辺さんとカフェで打ち合わせをしていた。筋肉痛で体はバキバキだ。そうだ、コンビを組む話をしないと。
「あ、そういえば今日事務所にコンビ結成のプロフィール登録しに行きましょうか。」
「・・・・・・はぁ。・・・そうだな。」
めちゃくちゃ嫌がってんじゃん!!なんなんだこいつは!!あんたが準々決勝まで行けたらって言ったんだろうが!!絶対僕と組んで良かったと思わせてやる!!
もしかしたら、渡辺さんは僕を変なやり方で奮い立たせたのかもしれない。
本人曰く、この時はマリッジブルーになっていたらしい。全然納得出来ない。
こうして、僕のM-1グランプリ2019は「準々決勝敗退」という結果と、「コンビ結成」という結果で終わった。マジで去年は人生でもトップ3ぐらいで頑張った年だと思う。
1番頑張ったのは、中学生の時に好きな子に振り向いて貰う為にやったダイエット。あれはマジで辛かった。めっちゃ痩せたのに振り向いて貰えなかったし。
「似合わない」
とか言われたし。似合わないって何?
このようにして、僕は『ドンデコルテ』を結成することが出来た。辞める手前までいった。でも辞めたくなかった。だから頑張った。
だけど、このままお笑いだけではご飯が食べられない状況が続くと、お笑いを続けていくのも難しくなる。年齢を重ねると何故か出費も増えるようになる。
だからどうしてもM-1グランプリのファイナリスト、いや優勝したい。一生お笑いでご飯が食べていけるようになるきっかけにしたい。
そのために、誠にに勝手ではあるが皆さんにも手を貸していただきたい。ライブが再開したら、是非ライブに、Mライブに足を運んでいただきたい。そして僕らやMライブのメンバーがファイナリストやチャンピオンになる手助けをお願いします。
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