呼び覚ませ!侍魂!!
雨が降る日のことだった。スーパーの駐車場に車を停めた僕は車から降りようとしていた。すると何かが車にぶつかった。
おばさんだった。
僕はすぐに車を降りた。どうやら車に乗ろうとしていたところを雨に濡れた地面に足を滑らせたようだ。おばさんは「大丈夫」だと言った。反対側からおじさんが来てやはり「大丈夫」だと言った。
何やらカタコトのおじさんとおばさんは口を揃えて"車には当たっていない"と主張したいらしい。そんなわけはない。少なくともおじさん、お前の位置からはそれが見えていないだろう。
多分謝ったら負けのお国柄なのだろう。逆に言えばこちらが少しでも許すようなそぶりを見せてしまうと泣き寝入りする可能性が高くなるのだ。冗談じゃない。
見ると車には横に線が入っている。当たっていない?当たっていないのに車に衝撃を与える事ができるとしたらおばさんスタンド使いか、おばさん呪術師だ。
どんだけ喚こうがしっかり修理代は払ってもらう。でないとこちらがお前たちを祓おう。そう思いながら愛車に入った線をなぞった。お前も突然のことでびっくりしたよなぁ....痛かったよなぁこんな傷をつけられて。
線は消えた。傷だと思っていた線は跳ねた泥だった。おばさんが車に当たったのは確かなのだが多分タイヤのホイールに当たったのだ。
向こうのお国柄を考えるとこちらも安易に謝るわけにはいかない。
get away!!
一か八か僕は叫んだ。傷ではない事を認識してから叫ぶまで僅か0.2秒程の出来事だった。
2人を急いで車に乗り込んでその場を去った。車に乗り込む時おばさんが笑みを浮かべたのを僕は見逃さなかった。まぁいい。今回はおあいこだ。
僕はその足でチャーハンを食べに行った。何故だかそういう口だったのだ。