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寝煙草の危険

Xのフォロワーさんにオススメされたので読んでみた。
ここ最近はずっとJホラーばかりだったので新鮮だった。スパニッシュ・ホラーもなかなか湿度高めだな〜、と思ったらアルゼンチンの気候も日本と同じくらい温暖湿潤らしい。

表紙の大きな蛾は『羊たちの沈黙』に出てくるドクロ蛾ことメンガタスズメですね。日本にも九州や沖縄に分布してるみたい。
くすみピンクの帯もかわいいんだけど“このホラーがすごい!”に選ばれて帯の色が変わったみたい。装丁デザインがとても良くて何年ぶりだか思い出せないぶりに単行本を買った。電子書籍は便利だし嵩張らないけど、紙の本の読書体験てやっぱりいいよね。特別な時間になる気がする。

アルゼンチンの歴史も政治も全然詳しくないので、訳者のあとがきで「あ、あれはそういうことなのね」と気づいたり。
独裁政権解体後の貧困・治安の悪さ・地域格差・ドラッグの蔓延なんかは日本人にはそれだけでちょっと怖いんだよね。でもそれは彼らには日常なので。行方不明者や犯罪組織による人身売買も頻繁に行われていてそこに呪術とか、オカルトじみた話が入り込んでくるっていうのはJホラーではなかなか味わえないよね。

マリアーナ・エンリケスはそういう社会背景でとくに女性、ティーンにフォーカスする話がほとんどなんだけど、これがね〜!!全然歴史も人種も生活も全く違うのにね〜!!思春期の不安定さとか歪な自己愛とか、なんかめちゃくちゃ共感しちゃうのね。
『寝煙草の危険』読んだよ、て友達も「あれは女性にしか書けない」て言ってたけど大納得。地球の裏側でも同じなんだってものすごく感情移入しちゃいましたね。

そんな中で私一番好きなのは『肉』かな。
バンギャだったときのことも思い出したし、フリエタとマリエラがその後どうなったのか気になる。エル・エスピナを通してお互いが唯一無二の存在になっただろうし、彼女らを崇拝の対象とする現象がどうなっていくのかっていう。あの、単純にフリエタとマリエラが好きです。


あと作者の共感ポイントとしてはメタル好きなところかな。洋楽バンドキッズだった人はお!となるところもあり。
たぶんね、マリアーナさんと話したら仲良くなれると思う。スペイン語話せないけど。笑

『わたしたちが火の中で失くしたもの』や他のスパニッシュ・ホラーも読んでみたい。
煙草と安い香水と腐敗臭がする本でした。

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