役人根性へのささやかなレジスタンス

 私は職場で、パワハラ撲滅宣言書なるものを書かされた。正確には任意なのだが実質は強制である。書かないと言うと何だかんだで、執拗に上司から説得を受けることになる。それが面倒臭くて殆どの人は、真に納得はしてないがこの手の書類には黙ってサインをする。たかがサインかもしれないが、こういうことが続くと盲目的に何も考えなくなるので、私は良くないと思う。ということで、今回は当初は強硬に抵抗した。

 もとより、パワハラはダメなこと!に勿論異論はない。しかし、武士たる者、基本的にやらないと決めたらやらないので紙に書く必要がない。また、「パワハラは絶対にしません。」で無くなれば苦労しないし、そもそも絶対なんてあり得ない。パワハラと言われるのを覚悟、処分覚悟で、最近の非常識な人間、一般に被害者とされる側で自分の非を棚に上げて言った者勝ちの様にワガママに振る舞う輩には、モノを言わねばならぬ時も来るであらう。100歩譲って、宣言書が必要だとすれば、「仕事上適切な指導は謙虚に受け止めます」だとか、「お互いに思いやりを持って行動します」の類いだろうが、こうなると更に書く必要は無くなる。

 しかし、最も私が気に食わない、納得がいかない点が一つ。それは、上層部がパワハラ対策やってます!宣言書書かせました!の対外的アピールでしかないと言うこと。しかも、実質強制の任意で、書かされました!との訴えられるのを避けつつ、何か有った時は自分達はしっかりやらせてましたが、宣言書まで書いたのにそれを破った奴が悪いんです!と言い訳の為にやっているのだ。言い方は悪いが実際はそうである。仮に本当にこの宣言書に意味があると考えるなら、任意ではなく強制すれば良いのだ。それを強制する覚悟も持たずに逃げ道だけを準備すると言う…何とも姑息な…役人根性の典型だ。前回の注射も本質は同じである。

 が、とうとう上司に呼び出され、宣言書を書かない理由を聞かれ、上記のように答えた。延々30分、上司は終始ニコニコ顔。上司としては、部下に私の様な変わり者が居ると、上への立場上困るのだらう。北風と太陽で言う、太陽作戦に出ていると見た。

 しかし、遂に私は折れた。「わかりました、書きます。」勿論、私の考えに全く変化は無く曲げるつもりは毛頭無い。が、この上司は良い人。普段から仏である。上司やこの件に関わる担当者を困らせるのは私の本意ではない。

 今回の件で、私は貫くべき意地と同時に自分の名を捨てても実を取る思いやりを学んだ気がする。他にもたくさん考えさせられることは有る様な気がして、意外にも貴重な経験となった。
 しかし、これからも関係ない人を出来る限り困らせない様に気をつけながら、今回の様な小役人的施策には細やかなレジスタンスを続けていこうと思ふ。

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