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宮本から君へ


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いつだったか出会った頃を、忘れるぐらい前に読んだ「宮本から君へ」。
(多分16か17歳ぐらい)
当時、伝説といわれた12巻を持ってたぐらい好きな漫画だった(後日愛蔵版が出てそのことは価値はなくなったけど)

新井英樹は僕にとって大友克洋と双璧で、思春期にもろに影響を受けた個人的マンガカルチャーの代表。
マールド・イズ・マインで出会って過去の作品も本屋を何軒もハシゴして一冊ずつ集めて行った。
その中に「宮本から君へ」もあって、部数が少なかったのか伝説の12巻といわれるぐらい最後の一冊だけが本屋も古本屋も何軒まわっても見つからなかった。
そういう意味で、僕の中では中々完結しなかった作品。
ある時、ふらっと寄った古本屋で一冊だけあった12巻を手にした時から時が経ち、
ドラマに映画になって「宮本から君へ」が実写化された。

日本の役者でこれ以上ないってほど良いキャスト、練られた構成、ストレートに宮本の熱さ、愚かさを描ききった監督。そして素晴らしい音楽。

ドラマも素晴らしかったが、
化け物のような映画だった。

人の走馬灯を覗くような、見てはいけない人の人生の秘密を覗いてしまったような。
鳥肌なんてもんじゃない、体が文字通り震えた。
固まることを嫌い、赤く溶け合って周りを燃やしながら流れでるマグマのような物語。

宮本と靖子が交差点で唇を重ねるシーンがとても美しい。
あのシーン原作でも大好きなシーンで、真利子監督が、二人のキャストと一緒に美しく撮ってくれて嬉しかった。

宮本が拓馬にしたことは暴力といっていいのかな。
何を見ているのか自問していた。
あれは、なんと呼べばいいのだろう。未だに言葉にできない。
ただ「負けてたまるか」その気持ちだけは真っ直ぐに伝わってくる。

針の穴を通すような演出、演技は名作にはつきものだけど、池松壮亮は、その穴をこじ開けて体ごと通ってくような演技で宮本を演じ切った。
熱演とはまさにこのことだろう。

フィクションを越えてキャラクターが人間として屹立する。そんなの僕は三船敏郎以外に見たことない。

蒼井優は別格で、邦画界の至宝だと改めて思った。尊い。

原作は、池松壮亮も言っていたが弱ってる時は読みたくない漫画で、僕は靖子と拓馬のことが書いてある巻だけ飛ばして読んでた。それ以外はなんども何度も読んだ。
気持ちが強いときだって、あの巻だけはそうそう読めない。

この映画は同じ強さを持ってて二度と見ないかもしれないけど、一生忘れることはないと思う。

個人的にいつも頭の片隅にある原作をすごい映画にしてくれた関係者の皆さんに感謝したい気持ち。おまえ誰だよって感じだけど。嬉しかった。


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