12月に読んだ本(下)
画像は、みんなのフォトギャラリーからお借りしました。
12月ということで、2024年に読んだ本でベストを選ぼうかなと思って読書ノートを見返したものの、ベストに入れたいものが多すぎて困っています。
真珠とダイヤモンド(下)
懐かしい、あの狂騒が。
当時を知る人は、あの、バブルの浮かれぶり、熱狂ぶり、時代の空気感がこんなに見事に描かれていることに驚くのではないだろうか。
そのくらい、バブルという時代の描き方が、素晴らしい。
最後は悲しい結末だったが、あの時代、皆が走り続けることに疲れて、もういい加減に止めたいと思っていたのではないだろうか、いや、そろそろこれはまずいぞとうすうす感づいていたのではないか。
そんな社会の空気も見事に描かれていて、本当にすごい小説だと思った。
ようこそ、ヒュナム洞書店へ
ハン・ガンがノーベル賞を受賞したからなのか、それとも韓国文化の魅力が世界に発信され始めたからなのか、とにかく韓流文学もちょっとしたブームのようだ。
「真夜中の読書会~おしゃべりな図書室~」バタやんさんおススメの本だったので、読んでみたところ、とても良かった。
傷付いた人が立ち直る物語とも、お仕事小説としても読めて、そして、ほっと心が休まる感じ。でも、それはずっと立ち止まったままということではなく、より自分らしく道を進んでいくための準備だという感じが素敵。
主人公の周りに小さな輪ができて、少しずつ広がっていく感じがとてもよかった。
われは熊楠
評伝ではなく歴史小説。南方熊楠の人物伝であるが、史実に基づいているものの、フィクションである。
思うに、熊楠の業績は偉大だといわれているが、それほど世間で評価されていないのは、その業績の大半が収集ということに偏っていたからではないだろうか。
そして、言い伝えられている人物像・・・奇行が目立ち癇癪持ち、しかし天才という人物像は、なんらかの脳の問題をかかえていたのかもしれない。それは、物語の中では鬨の声として描かれているのが興味深かった。
学問への欲求を満たすために、常に貪欲で自己中心的であった熊楠。そんな熊楠に感情移入はしにくいのだが、鬨の声や、繰り返し夢(幻視?)に現れる羽山兄弟のおかげで熊楠が目指す方向に読者も一緒に進んでいくことができる。
熊楠が実際はどんな気持ちで学問に打ち込んでいたのかはわからないが、宇宙を感じさせる描写は、とても壮大でよかった。
以上です。
真珠とダイヤモンド、ほんとにすごかった。桐野夏生先生、かっこいい!!!って思った12月でした。