芥川龍之介 大正六年七月二十五日 俳句一句 砂文字
少し久保田万太郎情調に浮かれてゐる形があります一つ浅草の句を書きます
天に日傘地に砂文字の異艸奇花
[大正六年七月二十五日 江口渙宛]
この句はどう解釈されたものかインターネットでは明らかではない。浅草の店だなに異国の珍しい花が高くかざられており、それが天に向けては日傘のように花弁を翳し、その花びらの模様が例えばあやめや蘭のようにあでやかで地面に砂文字のようなまだらを描いているという様子であろうか。
季語は日傘。しかし日傘はそのものではなく比喩。異艸奇花の正体の解らなさが浅草の奥山あたりのいかがわしさを匂わせるか。花だけに。
おもようの地にかたなせる異艸奇花
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?