使い古された比喩のように
ある日私は道路に落ちていたジグソーパズルの一ピースを見た。それは間違いなく現実なのだが、まるで使い古されて、擦り切れた比喩のようだった。
しかしそんなことがあるものだろうか。つまり、たった一つだけこんなものが落ちているなんて。
あるいはこれは食パン袋をとめる奴、バッグ・クロージャ―に擬態しようとして、パン工場勤務のアルバイト甘露寺明子さん(68歳)に見破られ、打ち捨てられた敗残兵なのではないか。
彼の無念は計り知れない。
私如きにまるで使い古されて、擦り切れた比喩のようだと言われてしまうのだから。
炭火焼肉やざわで焼かれなかった牛たちのように、
佐賀で作られているのにブラックモンブランに入れて貰えない佐賀ほのかのように、
畏れ多くもかしこくものように。