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『三島由紀夫未発表書簡』を読む③ 意外にノリノリ

大江健三郎


 二伸 今、大江健三郎にすすめられてJohn Rechy の City of Nightを面白く讀んでゐます。 (昭和四十年一月二日)

(『三島由紀夫未発表書簡 ドナルド・キーン氏宛の97通』中央公論 1998年)

 三島由紀夫と大江健三郎の関係は直接的なものではなく編集者を介したものであると理解していた。しかし「大江健三郎にすすめられて」とは意外にもっと近しい直接のやり取りがあったのか。

 大江健三郎は若い作家にも英語の本を読むように勧める癖があった。しかしこの場合は英語がそう得意でない三島に、きわどい本を勧めてはいないか。

 それにしても出たばかりの本を読んでいる大江はさすがだ。LGBTの走りみたいな話なのでさすがだ。

 drag queensだって相当早い。三島の実感としてはまだぴんと来なかったかもしれない。ピーターのデビューでさえ1969年なのだ。

一人の青年(レッチーはハスラーのことを "ヤングマン "と呼ぶ)が、ハスラーとして働きながら全米を旅する。ニューヨークからロサンゼルス、サンフランシスコ、ニューオーリンズまで、青年が訪れた場所とそこで出会った人物に章を絞っている。小説を通して、無名の語り手は、別のハスラー、年配の男、SM愛好家、寝たきりの老人など、さまざまな奇妙な人物と逢瀬を重ねる。これらの関係はすべて、その感情的、性的性質の程度に幅があるだけでなく、その特異性にも幅がある。
この本には、1959年にロサンゼルスで起こったクーパー・ドーナッツ暴動についての文章も含まれている。クーパー・ドーナッツにたむろし、ロス市警から頻繁に嫌がらせを受けていたレズビアン、ゲイ、トランスジェンダー、ドラッグクイーンたちが、警察がレッチーを含む3人を逮捕した後に反撃したのだ。客たちはドーナツやコーヒーカップを警察に投げつけ始めた。ロス市警は応援を要請し、暴徒を多数逮捕した。レッチーと他の2人は逃げおおせた。

DeepL.com(無料版)で翻訳しました。


日清戦争


 実は本棚を整理してゐましたら、日清戦争についての御研究に最適の住所が見つかりましたので、おしらせします。
  品川区北品川五丁目439
  東京平井眞美館内
 「日清戦争実記刊行会」
  Tel(441)4825
  振替 東京 62278
 で 、ここで面白い写眞入りの「日清戦争実記」の復刻版を次々に発行してゐます。(昭和四十年六月十二日)

(『三島由紀夫未発表書簡 ドナルド・キーン氏宛の97通』中央公論 1998年)

 殆ど戦争というものを書かなかった三島の書斎に「日清戦争実記」の復刻版があったとしたらやはり意外だ。
 しかも「面白い写眞入り」と書いているのは何とも変な感じだ。私も幼いころに「大東亜戦史」とかいう十何冊かの本を読んだ記憶があるが、「面白い写眞」というのは一つとしてなかつた。

  日清戦争には「面白い写眞」があったのか?


内掌典


 長篇の取材で、この間宮中の賢所へ行つて内掌典に会ひ、平安朝の昔にかへつた氣がしました。(昭和四十一年一月丗一日)

(『三島由紀夫未発表書簡 ドナルド・キーン氏宛の97通』中央公論 1998年)

 完全に見落としていた。これは平野啓一郎も気がついて無かろう。やっとわかった。
 つまり三島由紀夫は『春の雪』の取材のために「宮中の賢所へ行つて内掌典に会ひ」、宮中三殿に従事する内掌典の本物の神学の中にこそ天皇の根拠があると確信したわけだ。
 つまり三種の神器が宮中三殿であるとは、単に場所を指示していたわけではなく、内掌典の神学その経験を指していたのだ。

 なるほど。

 で、そこを空爆する???

[附記]

 昭和四十一年五月二十八日 「憂國」が大当たり
              「宴のあと」が和解になりそう
       六月二十七日 「サド侯爵夫人」の東京の再演は大成功

 何だかこの時期ノリノリな感じもある。三十日にはザ・ビートルズを見に行く。

 昭和四十一年十月二十三日

——目下、「春の雪」が最終章にかかり、昂奮して仕事をしてゐます。長篇のラスト・スパートほど元気の出るものはありません。

(『三島由紀夫未発表書簡 ドナルド・キーン氏宛の97通』中央公論 1998年)

 こう言われてみると「あれ? 肺炎? もうちょっとやり方があるやろ」という感覚の方がおかしいのかもしれない。

 確かに肺炎かあ、とは思ったけれど。

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