二葉亭四迷短歌三首

高田早苗先生の述べられた卓上演說のなかに、「坪內君は學生時分には甚だ意志の薄弱な人であつた。それが、後には自己修養の結果非常に意志の堅牢な人になつた。それが、後には自己修養の結果非常に意志の堅牢な人になつた。訓練を怠らなかつたら人間の精神はかうも變るものかと、私は大に感心したが、私ほどの老人は今からそんな事に氣がついたつてどうなるものでもない。諸君の後輩の若い者に坪内君を模範とするやうに戒められたい」と云ふ意味の事を、もつと碎けたユーモラスな辯舌で話されてゐた。

空想と現実
正宗白鳥 著大東出版社 1941年

二葉亭の人及び藝術に就いては人各々見る處があらう。が、初めは軍人を、後には外交家を志はし、ドチラにも志を得ないで文學に趨り、文學にも亦安心を得ないで一時腰辨に韜晦し、東家西家暫らく人生の彷徨者となつたが、最後に終に久戀の舞臺を得て花々しく一と芝居を打つつもりで勇んで露西亞の旅の至を瞻めたのが、一端役をだも振られる追が無くして半途で病に仆れて了つたのは恐らく死んでも死切れない遺憾であつたろう。
二葉亭は小說家で終るを喜ばなかつたが、終生志を得ないで、自ら屑しとしない小說家として終に最後の幕を閉ぢたのは生活それ自身が一生の使命の艱みに悶えた小說であつた。


明治文学の潮流
水野葉舟 著紀元社 1944年


春情浮世之夢 : 露妙樹利戯曲


二葉亭書簡


二葉亭書簡


二葉亭書簡


愛犬を失ひてその聲のどこやらにして風寒し
  うるめやく圍爐裏戶の烟もれて

木枯や友すれ小笹薄日和
  さふかる雀切子の影


二葉亭書簡

世のさまを見るはつらしなまるつきり
  目をつぶしたがましぢやろものを


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