芥川龍之介の『僻見』が読めない
浅香三四郎
浅香三四郎とは芥川のペンネームの一つである。淺香三四郞龍雄は一刀流の達人で加賀藩に仕えた小姓である。
講談本の登場人物のような名前だなと思ったら、本当に講談本の主人公だった。
芥川は帝大時代「三四郎とは話さない」と田舎者を嫌っていた。そこからすると妙なペンネームである。そもそも小川三四郎という名前は石川三四郎由来ではないかと私は思っているが、小川三四郎は小宮豊隆がモデルとされているのでややこしい。まったくらしくないペンネームだ。
一つ気になるのは加賀藩というところ。どういうわけか芥川は加賀に因縁づいた話をいくつも書いている。『煙管』『水の三日』『糸女覚書き』『るしへる』『三右衛門の罪』『一人の無名作家』……。
ただそれだけ。
魯の霊光
魯の霊光の註解に未詳とある。
高等科で教わるらしい。
試験に出されそうな書き方がされている。
漢文をやっていると出くわしそうである。
もだしがたき
昭和四十六年版筑摩書房の「芥川龍之介全集」で「もだしがたき」に註が付いていて、
とある。
方向性は同じだが、これは普通に「黙っていられない」でいいのではないかと簡単に書こうとしたらおかしなことになった。昭和四十六年版筑摩書房の「芥川龍之介全集」では「僻見」の三章目に入っている「大久保湖州」が
「芥川龍之介全集 第十一巻」岩波書店、1996年版では「僻見」に入れられていないのだ。
吉田精一は大久保湖州について「東京専門校出」としている。「学」を抜くな。
ちなみに青空文庫版の「大久保湖州」では「もだし難き」と閉じている。どちらが正解なのか?
もれもだしがたいわ。
点介
吉田精一は「点介」に註をつけて、
としている。いや「介」は貝殻、または貝のことで、虫の意味はない。
これな、古い絵に「草木金石珠玉蟲魚介鳥獣」という題のものがあって、それを芥川が「草木金石珠玉点介鳥獣」と写し間違えたんとちゃう?
つまり「介」はあくまで「魚介」やねん。「介」は貝やねん。
自分の解らないところを想像で補おうとするのは仕方のないこと。しかしまず調べることが必要だ。そうでないと本来ない意味を捏造してしまい、あほな子がそれを真似する。それ、一番恥ずかしいことやで。「点介は小さい虫のこと。これ豆な」といきり倒してしまわないように。
よい子のみんなは吉田精一みたいにならないように、私の本を買おう。
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