怪鳥来て雑炊食うや宵の春 芥川龍之介の俳句をどう読むか118
初袷なくて寂しき帰省かな
島谷洋服店宛の手紙に添えられた句である。
検索するとなぜかこう表示される。
松風をうつつに聞くよ古袷
大正六年に作られた袷が大正十二年に古袷となったのかという程度の句である。
詰まらないのでもう一ついこう。
爪とらむその鋏かせ宵の春
大正七年一月一日、菅忠雄宛のはがきにある句だ。この句はちょいと面白いと思うのだが、地球人全体から「ふーん」されている。なぜそうするかね。
ちなみに芥川龍之介の小説で何を読んだ?
え? 『羅生門』?
疑問を持って読まないと意味が解らないタイプの作家っているよね。この句にしても、何故
爪切らむその鋏かせ宵の春
ではないのか?
と考えると、
これは違う。
水仙を活て爪とる翁哉
これだ。
爪をとる、爪とるというんですね。しかしただそれだけではなくて、芥川は七草爪を意識して「爪とらむ」と詠んでいる。
別に七草爪なんか知らなくても困りゃしないよという人には運座の趣というのは一生理解できないだろう。ここでなるほどと思わない人は、
二枚爪のはえた如く不安
の中で生涯過ごせばいい。
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