芥川龍之介 漢詩「波根村路」
波根(はね)村路
倦馬貧村路
冷煙七八家
伶俜狐客意
愁見木綿花
けんばひんそんのみち
れいえんしちはちか
れいべんこかくのおもひ
うれひみるもめんのはな
[大正四年八月二十二日 恒藤恭宛書簡]
※吉田精一は「怜俜」に注を付けて「おちぶれるさま、さまようさま」としている。
「怜」の読みは「レイ」または「リョウ」、「俜」の読みは「ヘイ」「ヒョウ」「ベイ」であり「べん」はない。芥川はこの語を杜甫の、
肥男有母送、瘦男獨伶俜。
白水暮東流、青山猶哭聲。
莫自使眼枯、收汝淚縱橫。
眼枯即見骨、天地終無情。
から採ったものかと思われる。ならば、
瘦男獨伶俜 そうだんひとり「れいへい」たり
……なのではなかろうか。「れいべん」の読みが吉田精一のものかどうかは別にして、ここは漢詩に詳しい人の注解が待たれるところだ。
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