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読書記録・山川方夫『ゲバチの花』

34歳で交通事故により他界した山川方夫氏による、『箱の中のあなた』の一作。
オーディオブックで拝聴。

仕事の休暇の最終日、ぶらりと立ち寄った町で出会った老夫婦。
遠い昔に息子を亡くした老夫婦に息子と間違われて手厚く出迎えられる。
老夫婦はもう何が現実か分からなくなっていたのだ。

帰る場所は自分で探し、築かなければいけない。
あのゲバチの花はもう現実には無いのだから。


私も一緒だ。
と、翌日シャンプーしていてふと思い当たった。
髪を洗うときが頭を整理する大切な時間になりつつある。

かつて私も、ずっと何かを探していた感覚があった。
今思えばそれは帰る場所だったのかもしれない。

夫に出会う前は私もこの青年と一緒だった。
彼が私に帰る場所をくれた。
いつの間にか実家はもう帰る場所ではなくなっていた。


自分に思い当たることがあると一気に世界が近づく。
ショートショートなのに、世界が広がる。
このお話に出会えて良かった。


老夫婦の家は旅人たちの蜃気楼のようだ。


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