【#12】『シビル・ウォー』レビュー
どうも、コバーニャです。
先日、仕事の空き時間に映画を観ようと思いたち、
観たいと思っていた『シビル・ウォー』の上映時間を検索していたら、
公開されてからかなり時間が立っていたということもあってか
新宿の109シネマズでしかちょうど良い時間に上映しているところがなかったので行ってきました。
ネットで予約したらチケット代が通常の倍以上の値段になっていて、
今日はアレな日なのかなと思いつつも渋々予約して観に行ったのですが、
すげー映画館でした。
後から知ったのですが、
新宿の109シネマズは「109シネマズプレミアム」というところで、
飲み物やポップコーンが食べ放題だったり鑑賞者専用ラウンジがあったり
故・坂本龍一氏監修の音響設備完備だったりと、
かなりアレな映画館なんですね。
下は混沌とした歌舞伎町(しかもトー横の真上)、
上の映画館は高所得者向けの洗練された空間、
なんだか格差社会の縮図のような場所でした。
でもとんでもなく快適に観させていただきました。
仕事がんばったご褒美とかでまた利用したいです。
なんならお金があるならずっと利用したいです。
そんな映画館でみた『シビル・ウォー』、
ビシビシと“アメリカ”を、そして世界の“現状”を感じられる作品でした。
レビュー
インターネットやSNSで繋がったはずの世界が、
嫉妬や悪意、正義感の暴走によって再び分断されていく昨今、
我々はもう一度繋がることはできるのでしょうか。
分断されてしまった人々や国を、
暴力によって再びつなげようとすればどうなるか、
皮肉たっぷりに描いた作品が『シビル・ウォー』です。
あ、シビル・ウォーといってもキャップとスタークのアレではないです。
ダニー・ボイル監督(大好き!)作品の脚本でおなじみ、
アレックス・ガーランドの監督・脚本作品で、
一筋縄ではいかないです。覚悟せよ。
ストーリー
連邦政府から19もの州が離脱したアメリカ。
テキサスとカリフォルニアの同盟からなる
“西部勢力”と政府軍の間で内戦が勃発し、
各地で激しい武力衝突が繰り広げられていた。
権威主義的な大統領はテレビ演説で力強く訴えるが、
ワシントンD.C.の陥落は目前に迫っていた。
ニューヨークに滞在していた4人のジャーナリストは、
14ヶ月一度も取材を受けていないという
大統領に単独インタビューを行うため、
ホワイトハウスのあるワシントンD.C.へと向かう──
※作品ホームページより一部抜粋
映像
監督のアレックス・ガーランドは
ダニー・ボイルと何度も仕事をしているせいか、
映像もかなりダニー・ボイルっぽさを感じます(個人的感想)。
スタイリッシュで、生々しさを感じる映像に、
戦争の恐怖と狂気をじわじわと植え付けられます。
アメリカの「内戦」をテーマにした作品ですが、
この映画の主人公は「戦場カメラマン」。
撮影した写真がところどころにカットインする手法や、
鏡越し、レンズ越しに映る風景や主人公たちの表情が意味深です。
音楽
内容が内容だけに結構エグいシーンがたびたびあるのですが、
そんなシーンを茶化すように突如として流れる70年代、80年代の音楽に
なぜか地獄の黙示録を思い出しました。
あと音響がすごかったです。
ピリついた空気感を切り裂く突然の発砲音。
一度味わうと、映画が終わるまでいつ撃たれるかという緊張感が続きます。
ヒリヒリする〜。
戦車や装甲車での生々しい突撃シーンなど、
ぜひ映画館で味わってほしい作品です。
キャスト
ベテラン戦場カメラマン、リー役は「キルティン・ダンスト」。
女優さんとしてだいぶ貫禄が出てきましたね。
ってか、もしかして同い年かもしれない!
ってことはサム・ライミ版スパイダーマンを観てベッドの上で飛び回ったり手から糸出そうとしてた僕の大学生時代に彼女はハリウッドスターだったってわけか。ふーん。
新人戦場カメラマンのジェシー役は「ケイリー・スピーニー」。
パシフィック・リムの続編で出てた女優さんですね!
野心と初々しさを感じる目つきがハマっててよかったです。
総評
アメリカの、ありえるかもしれない「内戦」を描いた今作品ですが、
戦争映画というよりは、
戦争に一番近い「一般人」である「戦場カメラマン」の
恐怖と狂気とロードムービーです。
他国の戦争を撮り続けてきたジャーナリストたちですが、
今回の舞台は祖国であるアメリカ。
「内戦」は戦場カメラマン達の心の中でも葛藤となって巻き起こり、
あるものはシャッターを切ることをやめ、
あるものは感情を無くしていく。
分断と暴力によって狂っていく日常の中で、
バリケード(分断)をブチ破る戦車(暴力)のシーンを皮切りに、
どんどん壊れていく戦場カメラマンたちを見るのは正直辛かったです。
そしてジェシー。おいジェシー。
エンドクレジットが流れていく中、
背景にはジェシーが撮ったであろう1枚の写真が現像されていくのですが、
この1枚がまさにアメリカの歴史を象徴する、
ブラックユーモアたっぷりの1枚に思えました。
個人的には、逃げ惑う人々に銃を構える兵士たちよりも、
そこにカメラを構える、少し前までは一般人だったはずの
ジャーナリスト達の方がホラーでした。
奇しくも来週はアメリカ大統領選。
世界はどこに向かうのでしょうか。
というわけで、
映画って、本当に素晴らしいものですね。
それではみなさん、また会う日まで。
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