メンタルがブレイクしたけど、メキシコのおんぼろバスに乗ったら元気になった話。
久しぶりの三連休。
メキシコでは珍しすぎる祝日だった。
そんな大事な三連休を迎える金曜日の夜、私は発熱した。
昔から真面目な性格が祟って、体調を崩すのは決まって週末。
いい加減にして。
それに加えて、今週は仕事で嫌なことが溜まって、もう知らない!と全部の仕事を投げ出して金曜を終わっていた。
そんな矢先の発熱、メンタルとフィジカルは繋がっているのか、体って正直ね、、、。
そんな状態で迎える連休明けの火曜日。
月曜日の夜、寝る前に、もし明日起きれなかったら、もし明日仕事に行けなかったから、もう二度と仕事なんていけないかも(大袈裟)
そう心配していたけど、火曜日の朝、奇跡的にわたしはいつもより早く起きた。
真面目の底力か。
顔を洗って、歯をみがいて、服を着替えて。
行ける、家さえ出れば、地下鉄に乗ってさえしまえば、きっと仕事にいける。
でもあの満員の地下鉄を、二回も乗り換えしないといけない地下鉄を、女性専用車両でも女の闘いが激しすぎておったまげちゃう地下鉄を使っていつものように通勤できるほど今日のわたしの心は元気でない。
くぅ、どうする、ここまでできたのに。
どうしようもない時、でもなんとかしないといけない時、人は自分でもよく分からない行動をするのだと思う。火事場の馬鹿力っていうやつね。(たぶん違う)
私は、地下鉄に乗るのでもなく、もう一度ベッドに戻るのでもなく、
メキシコの道を縦横無尽に走る、おんぼろローカル路線バスに乗ることにした。はじめて。
通称、カミオン。
どうしてこんな、仕事に行きたくない日に限って、会社にこれで行こうと思ったのか分からない。カミオンの神様が乗りなさい、乗ってみなはれ、と導いてくれたのか。
我が家の近くから、オフィスまでこのバス一本で行けることは知っていた。きっと乗りこなせたら便利なんだろうなと。
ただ、カミオンに挑戦するのには、ちょっと勇気がいったから未経験であった。
なぜなら
まず、ぼろい。
ドアが開いたまま走っている。
バス停がなくて、どこからでも乗れるけど、逆にどうやって乗ったらいいか分からない。
行先がフロントの窓ガラスに書いてあるけど、暗号みたいで理解できない。
こんな感じで、ちょっとメキシコ二年目の私にはまだハードルが高いから、失敗した時のリスクが大きい朝の通勤には使いとうない。そう思って避けていた。
仕事なんて1ミリも行きたくないのに、メキシコ公共交通機関のラスボス、カミオン通勤に挑戦するわたし、頭おかしいなと自分でも思いながら。
ほんとに辿り着けるのか、まぁたどり着けなかったらそれでいい、今日はサボろうそんな気持ちかも。
とりあえず、まず乗ってみよう、ここでいいのかしら、と思いながらバスが通るであろう家の近くの交差点で、待っていた。
きた!カミオン!
勇気を出して手を上げてみる。こうやってバスを止めている人を見たことあったから見様見真似。
止まった、、、!
急いで乗り込むと、私が安定するポジションを陣取る前にバスは走り出す。
入口の扉は開いたまま。閉まる気配がない。
基本的に前から乗って、後ろから降りる。
運賃先払い、乗った時に、運転手に8ペソ手渡し。
無愛想な運転手にお金を払って、満員のバスの中で必死に手すりにしがみつく。
年寄りも若者も、女も男も、スーツを着たサラリーマンも、ジャージを来たお姉ちゃんもいろんな人が乗ってるカミオン。
バス停はないから、手を挙げて待っている人がいれば、どこでも止まって、人が乗り込んだ瞬間動き出す。
バスを止めるのに、道路沿いで待ってる女の人がいる。
指一本だけ立てて待ってる姿が、堂々としすぎて、なんかの革命家かと思った。
人が乗り込みすぎて、前から人が乗れなくなると、みんな後ろの扉からも乗車してくる。もうバスはパンパン。ちなみに後ろから乗った人は、人づてに、後方から前方へ運転席まで運賃をバケツリレーみたいに回していくシステム。そのシステム機能しとるんか?
バスの真ん中あたりに立っている私にも次々とまわってくる運賃。
これは一人分だよ、と伝えたいのか
みんな運賃を前の人に渡す時、ウノ(いち)と唱え隣の人に渡している。
後ろから前へ
ウノ、ウノ、ウノ、ウノ
お次の人は親子なのかな、二人分。ドス(に)。
ドス、ドス、ドス、ドス
次は何人分かしらと、後ろからお金が回ってるくるのを待っていたら、今度は前からさっきの「ドス」の人のお釣りが帰ってきた。
そんなんで大丈夫かい。
そんなこんなしながら、満員のバスにゆられて、ひどく渋滞する道路をずんずん進んで行くバスの中で必死に手すりにつかまって、バスと一緒に私もバウンドしてたら、なんだかこのカオスな状況に笑えてきて
私はこの異国の地でもう充分力強く生きてる!
そう思えて、その瞬間、なんだかすごく気持ちが楽になった。
オフィスの最寄り(であろう)場所に停車し、私は誰よりも清々しい顔でおんぼろバスを降りた。
できた。
初めてのバスに乗って、ここまで来れた。
降りてからオフィスまで歩く間の
屋台で売っている朝ごはんのパクチーの匂い。
飲み物を買うのによったコンビニのやる気のない店員さん。
交通量がカオスすぎて、命懸けで渡らないといけない横断歩道。
いつものメキシコの日常なのに、全部いつもと、さっきまでと違って見えて、なんか分からんけど、すごい嬉しかった。
初めてのおんぼろバスに乗って通勤して、謎の達成感を得ても、結局はなにも解決してないのだけど、それでも今日は会社に来ただけでも自分のこと褒めてあげることにする。
この先もしんどいことがあった時は、どんなささやかなことでもいいから、なにか新しいことに挑戦してみるのがよいのかもしれない。
メキシコのカオスの中にいると、どうしようもないことも、どうしようもなさすぎて、思わず笑ってしまって、気づいたら私は勝手に元気になっている。
勿論そんなカオスさが嫌になることもよくあるけど、そのカオス具合に笑わずにいられない、そんなメキシコがわたしは好きで、今日もここで生きています。