冬の王女 part2
*前回までのお話*
冬の妖精の王女は、人間界に冬を運びおわり、冬の国へ戻って来た。
4年に一度、4つの季節それぞれの国から妖精が集まるシーズンフェスティバル。もうすぐ開催される、その準備で大忙し。
そんな中、城を訪ねてきたのは、なんと春の妖精の少女だった。
*****
翌朝、王女が部屋でたまった書き物をしていると、シマリス大臣がやってきた。
「王女、シーズンフェスティバル催しの相談に参りました」
「あらあらシマリス大臣、もうシーズンフェスティバルのお話ですか」
世話役のシロウサギがカチャカチャとお茶の用意をしながら口をはさんだ。
「そうです。妖精界で4年に一度開かれる、シーズンフェスティバル。冬の国として、そこでの出し物を決めなければなりません」
「各国がそれぞれ季節の美しさを競い合う、出し物ですね。えっと、前回、冬の国は何をしたかしら…」
シロウサギが考え込んだのを、王女が継いだ。
「前回は、氷の合奏、だったわ。前王が指揮してね」
ほう。とシロウサギは息をついた。
「そうそう!あれは…素敵でしたわねぇ。うっとりするような音色で、評判も上々で。王女が主催するのは今回がはじめてですわね。
何をされるんでしょう?」
「それをこれから決めるのです」
シマリス大臣は厳かにいった。
「そうねぇ。今年は冬運びも時期が長かったから、もうあまり時間もないし…どうしましょうね」
王女も昨日の帰り道に考えてはいたが、何も思い浮かばなかった。
「その前はオーロラ上映でしたわねぇ。あれも素晴らしく…。
あ!そういえば」
シロウサギがお茶をつぎながら叫んだので、いくらか水滴がとびちった。
「王女、あの春の妖精とやらどうするおつもりですか?空いている仕事場はありませんよ。だいたい私たちには面倒見切れません、まだ子どもですし」
あぁ忘れていた.
シーズンフェスティバルだけでも重荷なのに、昨日、小さな春の妖精がやってくるという新たな問題も発生したのだった。
王女はこめかみを押さえながら言った。
「えーと。シロウサギ、春の妖精をここへ連れてきて。彼女にはシーズンフェスティバルについて一緒に考えてもらいます」
シロウサギは「まぁ」とか「春の国の、あの子にできるのかしら」などぶつぶつ言いながら、春の妖精を呼びに部屋を出て行った。
「シマリス大臣は、そりの準備をしてくれる?サンタクロースさんに会いにいきます。フェスティバルの良いアイデアがないか相談してみるわ」
シマリス大臣はくりくりした目を、いっそう見開いていた。
「わぁ!あちこち真っ白!きれい!!」
雪をきって走るそりの上で、春の妖精、リーチェははしゃいでいた。
「ちょっと!リーチェとやら…そりから落ちるわよ!」
王女はひやひやしながらリーチェをつかんだ。一人冬の国にやってくるという度胸はあるが、まだそのはしゃいでいる様子はまるで子どもだった。
「だって、こんなに綺麗なんですもの…。すごいわ!あ!あそこ、雪を降らせている」
遠くの方で、冬運び部隊たちが雪をふらせる練習をしている。
「いいなぁ。私も早く雪を降らせたい。雪って大好きです」
うっとりつぶやくリーチェを見て、王女は不思議な気持ちになった。
雪って、私たちにとっては当たり前のものだけど、そんなに綺麗かしら…。
王女はそりからそっと手をだし、地上にたまった雪をするするとなぞっていった。
*つづく*