カフェの隣の人に、せめて私は

カフェでカウンター席に座っていると、隣に誰かが座り何かをパラパラ見始めた。

雑誌かフリーペーパーかな、と思い気に留めていなかったところ、今度は紙を取り出して、丁寧に机に置いた。

カフェで紙に「書いている」人はあんまりいないので、あれ、とそこで初めて横目で見てみると。エントリーシートらしかった。

姿勢を伸ばすふりをして、目を上げると、その隣の人はリクルートスーツの女の子だった。

そうか、そうだよね。就活の時期だ。

私が、一人でカフェに入り始めたのは多分就活の時だった。何に向いているのか何が出来るのか、何が正解なのか分からなかったけど、とにかくレールに乗らないとと焦っていた時。

隣のリクルートスーツの人を見て、何だか急に身が引き締まる気持ちになった。

だらだらやっていた資格の勉強も、気合を入れ直す。

彼女はその間にもカリカリと一心にエントリーシートを書き込んでいく。


私はせめて、その真っ白な紙にココアを散らさないようにゆっくりカップを置いた。

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