ゆきだるまとけたら 1
クラスメイトたちが雪合戦に興じるのを眺める。
大学受験をちょうど一年後に控えた冬。珍しく雪がつもった今日の一時間目は体育だった。本当なら持久走のはずだったのが、「せっかくだから雪遊びに変更」という教師の一声でみんな大はしゃぎして外に出た。
きゃあきゃあ声をあげるクラスメイトたちを見て、子どもっぽいなとあきれる。
持久走の方がまし。
そんなこと思うのは私だけかな。雪を投げては笑い合う同級生たちを遠目に、かじかむ指に息を吹きかけた。一人で走る持久走なら誰とも話さない理由ができる。こういう自由な遊びの時間は、苦手だ。
「かぐらちゃん、やらないの?」
ほおを赤くした女子に聞かれる。
「私はいいや」
「へえ」
微妙な表情をした彼女は、またみんなの輪に戻っていく。
わかってる。こういうときに、ノリ良く遊べない私の方が、みんなよりずっとずっと子どもだってこと。だけど私は、どうしても嫌なの。みんなと同じになるのが。
サクサクと雪を踏みながら、グラウンドを出て校舎のはしにある駐車場へ向かう。
あった。黒のゴルフ。彼いわく、頑張って買った外車、らしい。車なんて全然知らなかったのに、今は街で同じ車種を見ると追いかけてしまいそうなほどに覚えてしまった。
駐車場の雪は車輪や足で踏まれてぐちゃぐちゃになっている。辺りを見渡すと、端の方にまだきれいな雪が残っているのを見つけた。しゃがみこんで雪玉を二つ作る。ぎゅっぎゅっと固めながら、彼はこれ見たらどんな顔するかななんて、想像した。
「できた」
ちょっといびつな小さなゆきだるま。ゴルフの屋根にちょこんと乗せる。
「ふふっ」
口元が勝手にゆるんだ。
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