![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/7045391/rectangle_large_type_2_66491efa3f75dfaed0f9eadaeb59cdac.jpg?width=1200)
アソウがやってるシゴトのこと。
――読者の皆さま、こんにちは!
私はインタビュアーの印田枇杷と申します。
ついに、アソウさんのnoteが始まりましたね!
これからどんなコンテンツがアップされていくのか楽しみです。
ご本人もかなり楽しみにされているとお聞きしています。
そこで、本格的な創作活動を始められる前のプロローグとして、
オーガナイザーのアソウさんにお越しいただき、
ご自身の紹介や今後の展開など、いろいろお聞きしたいと思います。
それでは、アソウさん、よろしくお願いします。
アソウ〉
どうもです。よろしくお願いしまーす。
――早速ですが、まずはアソウさんが何をされているか?というところから、切り込んでいきたいと思います。
アソウさんと言えば、テクニカルライターという職を生業にされています。しかし、その名は一般的には、あまり知られていない職業と思います。どんなことをされているのでしょうか?
そうっすね。例えば、メーカーさんがつくる製品がありますよね。
その製品に付属する取扱説明書や、製品の保守を行うサービスマン向けのサービスマニュアルなど、これらの企画・編集・ライティングをやってます。
最近はこれに加えて、制作や印刷・Webまで、すなわち企画からアウトプットまでのトータルなディレクションもやってます。
――へー。そんな職業があったのですね。確かにトリセツって、製品には必ずついていますが、誰が作っているかなんて、考えたこともなかったです。
おまけに、アソウさんには申し訳ないですが、説明書ってあまり読まないんですよねー。
それ、よーく言われます(笑)
ワタシも仕事じゃなかったら、ほとんど読まないタイプでした。
だから、たまに、最初から最後までしっかり読む人の話を聞くと、素直に嬉しくなります。萌えーですよ(笑)
でも、大概の人は、使い始めと困った時ぐらいしか読まないんじゃないかなー。
――これまでに、どんな製品の説明書を作ってこられたのですか?
えーとですね。ざっと思い浮かんだところをあげると、
オフィス家具、文具、白物家電、デジタル家電、理美容家電、警報機、住設機器、パソコン、ゲーム機、介護用ベッド、農業機械、自販機とかですかね。
仕事柄、具体的なクライアント名や製品名を明かせませんが、最近では、IoT機器とかもやってます。
あとは、製品ではなくて、人を教育して動かすための業務マニュアルとかも作りました。
――へー。いろいろやってこられたのですねー。そんな説明書やマニュアルを、これまでにどれくらいの数、作ってこられたのですか?
うーん、どのくらいかな…。
年間で50~70件はつくっていて、かれこれ15年以上やってきましたから、
えーと、ざっと1000件はつくってきましたかね。
――えっ、1000件もですかー。年間50~70件ということは、ほぼ毎週1件はつくっておられる計算ですね。
まあ、1案件のページ数はいろいろありますからね。
1ページぐらいの少ないものから、数十ページ、数百ページのものまで、
いろんなパターンの案件があります。
だいたい、毎週数件のプロジェクトは動いてますね。
繁忙期になると、毎週数十件になります。
でも、こんなふうにコツコツやってること、
世間的には認知されていないでしょうけどね(笑)
――そんな世間的には、あまり大きなトピックに取り上げられないトリセツですが(笑)、実際、どうやって作られているのでしょうか?
ざっと流れを教えていただけませんか。
そうっすね。世の中にはいろんなタイプの取扱説明書やマニュアルがありますが、身近でわかりやすい家電製品の取扱説明書の場合を例にしてみますか。
まずは、メーカーさんが製品を開発しないと始まりません。
その製品開発がある程度進み、仕様ができてくる頃に、取材の依頼が入ります。
そこでメーカーさんに出向いて取材を行うわけですが、最近はセキュリティが厳しくなっていて、
事前のNDA契約(秘密保持契約)が必須なのはもちろんのこと、その他のいろんな手続きを踏まえて、ようやく取材ができます。
そして、開発担当者から製品の概要と機能説明を受けて、製品の理解に努めることになります。
――説明を受ける時、実際の製品を見ることができるのですか?
製品を見ることができる時も、できない時もあります。
製品といっても、大概は開発中の試作品や模型が多いですね。
完成品じゃなくても、モノを見れるだけでありがたいです。
実際に手に取って使用シーンをイメージできますから。
モノを見れない時は、仕様書や図面だけで説明を受けます。
最近は開発期間の短縮やコスト面もあり、書類から作ることが多いですね。
――実際に製品を使うための取扱説明書なのに、書類からの情報だけで作れるものなのですか?
いい質問ですね(笑)
そこがテクニカルライターの腕の見せ所です。
初心者の人がいきなり書類からは難しいですねー。
書類から想像して説明書を作るために、仕様書や図面の読解力も必要ですし、これらの経験と実績からの裏付けも必要です。
あと、独りよがりな固定観念にならず、一般的なユーザー側の視点で物事を考えなければなりません。
――ユーザー側の視点?
ただ製品を知るだけでなく、ワタシはその製品を世界で初めて知るエンドユーザーでもあります。
そこで、ユーザー視点で気づいたことや疑問、懸念を、その場で開発担当者に問いかけます。
人って慣れてくると、疑問や気づきを感じにくくなりがちなのです。
そのため、ファーストインプレッションは大切です。
製品の開発担当者は、製品のことを世界で一番理解している人です。
それだけに、その製品を初めて見た人の考えや気持ちを理解することが難しいのです。
――製品を知り尽くして、慣れちゃってるからですね。
そうなんす。だから、ワタシみたいな立場の者が、そのサポートをします。
要は、メーカーの開発担当者からユーザーに、製品情報の橋渡しをする役割です。
――開発さんはエンドユーザーに製品のことを色々知って欲しいけど、
製品を知り過ぎてて、ユーザーの気持ちがわからない。
それをアソウさんのような方が、開発さんの考えを理解しながら、
製品情報をユーザーさんに伝えるのですね。
そうっすね。とにかく製品の初見が一番のポイントです。
製品を理解し始めると、どんどん慣れてくるので、気をつけないといけない。
気を抜けば、ユーザー側から開発者側の視点に陥ってしまいます。
――製品情報とは、どんなことをどんなふうに伝えるのですか?
製品情報は、たくさんあります。その中でも安全上の注意、使い方、仕様、お手入れなどのメンテナンス、困った時の対処方法などが主だったものですね。
これらの情報を集約し、説明文とイラストや写真を使った図解に展開していきます。
文章ならば平易な文体を心がけますし、図解では、イラストや写真のアングル・表現にもこだわり、ノウハウを駆使します。
――ノウハウとは?
それは企業秘密です(笑)
まあ、一言では言えないですけど、大切にしているポイントは、いろいろありますよー。
文章は、読むだけで製品の構造や使用方法をイメージできること。イラストは、直感的に理解できること。
それら文章とイラストを組み合わせたレイアウトのわかりやすさも大切ですね。
テクニカルライターは、これらを企画の段階で具体的に考えていなければなりません。
どんな文章にすればわかりやすいのか。どんなイラストを描けばわかりやすいのか。
文章とイラストをどのようにレイアウトすれば、読みやすくてわかりやすいものになるのか。
人がモノを見るときの導線にも配慮し、認知心理学的な見地も必要になってきます。
――文章、イラストや写真、レイアウトについて、アソウさんがすべてに関わるのですか?
そうですね。ただし、実際に手を動かすのは専門スタッフの方々です。
文章はライターさん、イラストはイラストレーターさん、写真はカメラマン・レタッチャーさん、レイアウトデザインはアートディレクターさん、組版はDTPディレクターさんに、それぞれお願いします。
ワタシはプロジェクト全体と各セクションの方向性を決め、制作の進行と予算を管理します。
各スタッフさんの人選も、ワタシがプロジェクトの特徴にあわせて行います。
ワタシが考えて決めたことに基づき、各スタッフさんに進めてもらいますが、各作業の詳細については、随時、スタッフさんと相談しながら進めていきます。
ですから現在の私の役割は、ひとりのテクニカルライターというよりは、ディレクターと言えますね。
ただし、ライティングについては、ワタシがやる方が適切と判断した場合、自ら行うこともあります。
――ライターって言いますから、単に説明文を考えるだけかなと思ってました。違うんですね。イラストやレイアウトのことまで考えるのですね。
そうっすねー。ワタシの理解でのテクニカルライターとは、
ライターと編集者の力に加えて、心理学的知見を要する職業かなって思います。
文章力、企画構成力、行動分析力に加えて、製品の知識と理解力が必要ですね。
この中でもユーザー視点に基づいた行動分析力は、重要なファクターです。
――行動分析力?ユーザーの行動を予測するということですか?
その通りっす。
極論で言うと、どんなユーザーにもなりきれた方がよいです。
なりきる、まあ平たく言うと、気持ちや考えを理解できると言った方が近いですかね。
それができると、製品を使うときの行動が予測できる。
予測ができたら、それを先回りした内容を説明書に落とし込むことができる。
これは特に、安全面での注意喚起、危険の予見では大切な要素です。
――ユーザーの気持ちや考えがわかる?…ということは、この世の中には、いろんな製品があり、そのターゲットであるユーザーもいろんな人がいますよね。
その人たちの特徴を理解して行動を予測することなんて、可能なのですか?
それは可能です!
…と言い切りたいところですが、完璧ではないにしろ、
ユーザーの考えや行動に、ある程度近づけることはできると思います。
――そのためには、どんなことが必要なのですか?
そのためにワタシがやっていることは、人間観察ですね。
これは大切です。
――人間観察?
例えば、自分が乗っていた電車が駅に停車し、扉が開いてホームから人が乗ってくる。
その人の視線や動きから、シートに座ろうとしているのか、乗降口近くに立つつもりなのか、奥に移動するつもりなのかとか、予測できるじゃないですか。
そういうことを意識的にやってます。
年齢層や性別、職業でも行動が違ったりするので、結構やってておもしろいですね。
その観察する人の立場やクセを自分事として落とし込み想像してみる。
こういうことをいろんな時、場所でやってます。
訓練というほど大げさなことではないですが、地道にやってるとだんだんその人の心理が、何となくでも予測できるようになってくるものですよ。
――なるほど。そういうことなら、何だかできそうな気がしてきました(笑)他にも気をつけていることとかありますか?
あとは、まあ、認知心理学系の書籍を読んでみたりとかですかね。
あと、いろんな業種の人、いろんな世代の人と、なるべく話す時間を増やすようにしたりもしますね。
いろんな人と話すことで、いろんな見方、考え方を知ることができます。それが骨となり肉にもなります。
なるべく固定觀念をもたないように、柔軟にものごとを考えられるようにしたいとは思っています。
なかなか難しいことではありますが…。
――ほぉー。テクニカルライターとは、特殊な職業のように思っていましたが、お聞きすればするほど、結構、身近なところで地道にコツコツとやって努力を重ねる職業なのですね。
ライターといっても一般的なライターとはだいぶ違いますね。
私たちが考えるライターって、やはり雑誌やWebの記事を書くイメージが強いですから。
まあ、そうっすよね。一般的なライター人口に比べて、
テクニカルライターの方が明らかに少ないでしょうからねー。
もうちょっと社会的に認知されたら嬉しいなー。
――そんなテクニカルライターとしてやってこられたアソウさん。
今後、やってみたいことはありますか?
先ほどもお話に出ましたが、いわゆる一般的なライティングをやってみたいですね。
これまでは、製品に関わるファクトを誤りなく伝えることに重点をおいてきました。
しかし、いろんな経験を積んでいくうちに、もう少し情緒的というか、感情を入れた文章も書いてみたいようになってきました。ただ、この点については、実践的な経験が少ないので、もう少し学びが必要ですね。
あと、テクニカルライターとして培ってきた、難しいことをわかりやすく伝える技術もさらに磨いていきたいですね。
まだ妄想に近いですが、このテクニカルライターの技術と、感情が入ったライティングを組み合わせることができれば、かなり面白いことができそうな予感がしています。どなたか、もし、そんなお仕事があったら、お声がけくださいな(笑)
実は、このnoteを始めた理由もこのへんにあります。ライティングのトレーニングでもありますが、自分なりの表現方法を探る場にもしたいなと。
――自分なりの表現方法?具体的に何か考えられているのですか?
アイデアレベルのことは、いくつか考えてることがあります。
まあ、ぼちぼちとですが、ここで表現していけたらなって思います。
――意味深なお答えですねー(笑)そのようなことも、今後、このnoteで展開されていくということですね。今から楽しみになってきました。
それでは、本日は、これにてお開きとしたいと思います。
今回はテクニカルライターにまつわるお話で終わってしまいましたので、
もし機会があるなら、アソウさんの過去を振り返りたい気もしてきました。
いろいろなご経験もなされてるみたいなので(笑)
まあ、ニーズがあればですよね(笑)
ありがとうございました!
いいなと思ったら応援しよう!
![Shumei|軌跡を残し、次につなげる](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/158000642/profile_6ed2f47d378723cd4b6546a72a3b528b.png?width=600&crop=1:1,smart)