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#2 気づき:内発的動機づけ〜「好きだから壁を乗り越えられる」

2020年11月15日 
第100回全国高校ラグビー大会長崎県予選決勝が行われ、3年連続19度目の全国大会出場を決めた長崎北陽台高校。

第69回大会初出場から見てきたファンのひとり、またOBのひとりとして、ホッとしている。

長崎南山高校も次のチャレンジ、しっかり準備を。

ある少年の話を一つ

平成元年小学生6年生になる12才の少年は、兄と同じく週末の習い事として長崎ラグビースクールへ通っていた。
正直ルールは分からない、タックルは痛い、下手くそ、コーチは怖い、トライなんかしたことない。
毎年辞めたい辞めたいと過ごしていた。
しかしキライだったラグビーでも仲間には恵まれていた。

やる気のない少年にも仲良く一緒に頑張ろうと毎週気にかけてくれていた友人がいた。
彼が誘ってくれた花園予選決勝。

たまたま長兄が所属していた長崎北陽台高校は、創部10年目で大学受験を控えていた3年生が引退を撤回、夏休み明けから復帰し競技を続行した。
試合は、劇的な主将のドロップゴールで優勝を決めた。

少年にとって少しだけラグビーを見る目が変わった瞬間だった。

その年の年末、家族旅行と勘違いして乗った夜行バスで向かったのは近鉄花園ラグビー場。 

長崎北陽台高校はじめての花園である。

初戦三本木農業戦、躍動する選手たち。
鋭いサイドアタックからトライを決めるブラジル帰りの長身No.8亀井選手。
サッカー仕込みのプレースキッカーCTB福田選手。
そしてキックチャージから60m独走トライを決める兄。
兄は後に日本代表として活躍する元木選手や増保選手ら共に高校日本代表へ選出されスコットランド遠征へ。

二回戦、後にラグビーワールドカップ2019日本大会誘致に尽力された徳増浩司先生率いる茨城茗溪学園の前に力尽きる。

少年は試合後、メンバー入りが果たせなかったが、充実した顔で真っ赤な目をした三年生を見た。

見てしまったのである。

この瞬間、小学校で辞めるつもりだったラグビーの価値観が変わった。 

内発的動機づけ
→自分からやる子どもは、最強な理由である。

「君たちは何をめざすのか」

12歳元旦、彼は長期的な目標から逆算したやるべきことを整理した。

目標:父や兄のような体育教師をめざす
→教師になるために
 →体育学群がある筑波大学に進学するために
  →兄のように高校日本代表になるために
   →花園に出場するために
    →長崎北陽台高校に進学するために
やるべきこと
『学力をつけながらラグビーを続ける』

「好きだから壁を乗り越えられる」
そんな時間だったように感じる。


中学入学後は週末のラグビースクールに加えて脚力つけるため、小学校からの幼馴染数名と共に陸上部へ入部した。

英語教師だった陸上部顧問は、当時としては珍しく生徒へ問いかけ考えさせる指導をされていた。
記録を伸ばしたり、勝つことよりも、人として大切なことを、絶妙なタイミングでコーチングされていたと今更ながら気づく。


ラグビーはもちろん好きになった。
しかしそれは「ささいなこと」であり、生活の中心は学校生活や友人たちとの時間だった。

ラグビースクールでは、成長期真っ只中、中学1年ですでに170cm近くになり、気がつくと大型CTBとなった少年は対戦相手に「長崎はコーチみたいな大人が出てるからズルい!」と言われたりもした。
後の社会人チーム監督をするU氏の証言である。
小学生時代一度もレギュラーになれなかった彼は人生ではじめてキャプテンを経験した。  
※いわゆる早熟の選手であり、大学以降に苦労することになる。
 →指導する立場として、そのような状況にしないことが大切だと実体験を伝える必要がある


振り返ると小学生時代に活躍していたラグビースクールの友人達は成長に伴い、活躍の場が減っていった。
交歓会で交流あった福岡のラグビースクールの友人たちでも同様である。

ただスペシャルな選手は2人だけいた。

後に早稲田大学ラグビー部主将を務める長崎のエースと後の関東学院大学ラグビー部主将、日本代表となる福岡のエースである。

ただそんな選手は自分が知る限りごく僅かである。
むしろ小学6年生のあの日、長崎県予選決勝を見に行こうと誘ってくれたあの友人。
ジュニア時代には自分より小さな身体だったが、中学の終わり頃から身長が伸び、後には高校日本代表候補、優勝した福島国体の長崎県代表主将、進学した筑波大学でも主将を務め、現在体育教師となり、育成の最前線で頑張っている。
わたしの夢を高校卒業時に託した大切な友人である。


現在小学生のコーチングをしているが、
「子どもは日々成長していること、その成長は身長や体重などの目に見える成長だけでなく、心や神経など目に見えない成長もあること。
そして心理的、生理的、身体的な発育は、すべて同じタイミングで伸びるのではなく、それぞれ成長タイミングがあることを理解する必要がある。」
と言うことを実体験としても感じている。

小学生や中学生時代に活躍してきたスーパー小学生、スーパー中学生達がユース世代になると普通のプレイヤーになるような、。
悲しいけど期待が高い保護者やプレイヤーはそこで挫折するのかもしれない、。

12歳ごろまでは子どもが将来、どんな選手かを予測するのは困難だと言われている。
それに体の成長スピードもひとりひとり違う。

【親が、子どものスポーツでの成功を目指して、力を入れ過ぎてしまうことを防ぐにはどのようにしたらよいのか?スポーツ活動は親やコーチを喜ばせるものではない。】*サカイク「米コロラド大学のコークリー教授」より引用

【「子どもがスポーツ活動の持ち主は自分である」と感じられることは、スポーツからのドロップアウトを減らし、生涯にわたってスポーツを楽しむことができる基礎になるものと考えてみる。
「楽しまなければ勝てない~世界と闘う“こころ”のつくりかた」】*サカイク2019年5月23日より引用 


「好きだから壁を乗り越えられる」 イチローが実証した「夢中」の価値

野球だけでなくてもいいんですよね、始めるものは。
自分が熱中できるもの、夢中になれるものを見つければ、それに向かってエネルギーを注げるので、そういうものを早く見つけてほしいと思います。
それが見つかれば、自分の前に立ちはだかる壁にも、壁に向かっていくことができると思うんです。それが見つけられないと、壁が出てくるとあきらめてしまうということがあると思うので。いろんなことにトライして。自分に向くか向かないかよりも、自分の好きなものを見つけてほしいなと思います。
(引用元:AERA.dot イチロー引退【会見全文・前編】「監督は絶対無理。人望ない」「日本復帰の選択肢はない」) 



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