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ドイツで博士(工学)を取得した話🇩🇪

この記事は HCI Advent Calendar 2024 の17日目の記事です。
去年も同じアドカレに参加しているので合わせてご覧ください。

前置き

初めましての方もいると思うので、自己紹介をさせていただきます。
渡邉洸(Ko Watanabe)と申します。最近、ドイツの RPTU Kaiserslautern-Landau という工学系の大学で博士(工学)を取得したのでその話をつらつらと書いていきます。

大学に関してはDWIHの説明が分かりやすいので引用します。

カイザースラウテルン・ランダウ大学(RPTU)は、2023年1月1日にカイザースラウテルン工科大学とランダウ大学が統合して誕生しました。

約2万人の学生と300人の教授、160の学位プログラムを有するRPTUは、ラインラント=プファルツ州で2番目に大きな大学であり、ドイツの高等教育機関の中で最も新しい大学の一つです。

RPTUは研究志向型の大学であり、高品質な大学院教育と革新的な経済的価値を持つ分野での博士前後の研究教育を提供しています。その多くが英語で行われる国際プログラムです。

RPTUは以下の国際的に有名な研究機関と密接に連携しており、これらの機関はカイザースラウテルンのキャンパス近くに位置しています。
・ドイツ人工知能研究センター(DFKI)
・フラウンホーファー実験ソフトウェアエンジニアリング研究所(IESE)
・フラウンホーファー技術・経済数学研究所(ITWM)
・Institute for Surface and Thin Film Analysis (IFOS)
・Research Institute for Technology and Work (ITA)
・複合材料研究所(IVW)
・マックス・プランク・ソフトウェアシステム研究所

学生はこれらのネットワークを通じて、グローバル市場の課題に直結した教育、産業研究プロジェクトへの参加(修士論文やインターンシップなど)、および学内16の学部での学生助手の機会を得ることができます。

https://www.dwih-tokyo.org/ja/supporter/rptu/

実は、去年のアドカレを見た!という方から留学希望の連絡メールが来たりしたので、今年もそれが執筆の背景です!

現在も僕が所属する、DFKIに興味のある学生さんは僕の Xのアカウント などにDMしてください。


今回のスコープ

今年は色々な出来事がありましたが、断トツで博士号取得が大きな出来事だったので、その話を書いていこうと思います。ご興味あれば幸いです。

進学が始まったのは、2021年の3月、コロナ禍でドイツに渡航しました。
その辺の時系列に興味がある方は、下記を一読ください。

今回の内容は、上記の内容の続き「学生申請したのちのドイツで博士号取得まで」の経験になります。

博士号取得に向けて、まず学生兼研究員としてのキャリアがスタートしたのは2021年3月15日でした。

正式に大学から学生として認められるために、初めに諸々の手続きをしました。当時、コロナ禍だったのもあり、手続きは全てデジタルで、申請内容は、「無犯罪証明書・視力検査(大学が実施)・修士の成績証明書」あたりでした。記憶から消えているものもあるかもです、申し訳ない。

申請後、まず確認されたのが単位互換でした。

同じ大学で修士から博士に進学した人にはあまり関係ないですが、僕がNAIST出身だったので、その際に取得した単位がRPTUのComputer Scienceの学生と同等かチェックするのが目的です。

ここで成績が悪いと落とされるというよりは、仮に対応教科を取得していない場合は、授業も博士の内に取りましょうというのが確認の意図です。成績はこの点数より上という明確な基準はない印象で、指導教員がその学生をプッシュすることが重要視されていた印象です。(海外進学したい人が留学するメリットはこれ

ちなみに大学院の成績は良いに越した事はないので、授業頑張りましょう。

申請から正式に学生として認可されたのは2021年11月24日でした。

3月に申請してそんなにかかるの?って感じですが、事務の方との手続き上のラリーを何度も繰り返したり、Faculity Meeting(教授会)のスケジュールに依存する形です。

外国人(日本人)だから遅かったの?って思うと思いますが、僕が修士として指導していた、ドイツ人の博士学生も申請してから4ヶ月かかったので、大体みんな時間がかかります(笑)

もし進学する・したいって決めている人がいたら、心配かもしてませんが、承認されるまで研究できない訳では全くないので、ご安心を。


学生承認

無事に学生承認がされると、学生証申請しました。

この辺の話はマニアックなのですが、ドイツの博士学生の多くは、学生の前に、研究員としての肩書きをもらって給与が発生するので、人によっては学生証申請が却下されるらしいです、お気をつけて(多分伝え方かもです)。

学生証の良さは、地域の電車が乗り放題・メンザが安く食べられます!

学生証を申請しないといけないというルールはないので、ゼメスター費(半年・300ユーロ程度)を払いたくない場合は払わなくて大丈夫です。

ただ、周辺の観光ができたり、最近は Deutchland Ticket というドイツ全土で使えるチケットも安く買えるので、発行するのが無難です。

雑談でした✋


研究に関して

研究プロジェクト(LeCycl)について

僕がやっていた研究は LeCycl という日独仏の合同研究でした。

内容としては、デジタルの力で教育サイクルを加速させていこうというのがざっくりとした内容です。

教育サイクル:Perceive, Master, and Transfer という3項目のサイクル

サイクルを詳しく知りたい方は論文もぜひ!

僕はこのサイクルの中の Transfer(知識伝達)を重点的に研究しました。


Transfer(知識伝達)について

3つの項目の中でも Transfer はやりがいのある内容でした。目的としては、人の知識伝達をデジタルの力でどう加速させるかというものです。

僕自身、コロナ禍で研究が始まったのもあって、この研究意義はものすごく感じました。オンラインミーティング、人に伝えるのが難しいなと。

特にそう感じる背景が、海外で研究していたのもあって、ボディランゲージ(非言語)の部分頼っていたのが大きなと感じます。

オンライン環境の上半身だけでのコミュニケーションは伝わる情報が削減される分、より細かい言語化が必要になります。アイコンタクトとかもそうですね。

そんな時代背景も相まって研究は難しさもありつつ楽しかったです。
論文は下記にあるので、興味のあるタイトルがあればご覧ください。

Google Scholar: https://scholar.google.com/citations?user=AluAUmEAAAAJ


博士論文投稿と公聴会までの流れ

博士論文投稿から公聴会まで、下記のような手順でした。

  1. アブスト・目次(TOC)・履歴書(CV)・論文数の提出

  2. 教授会で上記の内容を確認し、本稿執筆承認を貰う

  3. 承認後から3〜6ヶ月以内に本稿を提出

  4. 査読教員(主査・副査)によるチェック

  5. レビューが揃ったのちに教授会で公聴会の実施許可を得る
    (本稿のみの点数はここでもらう)

  6. 公聴会日程を査読教員 + チェア + 本人ですり合わせ

  7. 公聴会を実施し、その日に査読教員内で審査し結果をもらう

  8. 手書きの審査結果と本稿の修正内容を受け取る
    この時点で成績は確定しているが公式に博士号取得はしていない

  9. 修正依頼をもとに博士論文を添削し、最終稿を紙媒体で提出

  10. 学科長がサインしたのちに、公式に博士号取得

というような流れでした。

個人的にレビューの期間がなかなか長かったのという印象です。


まとめ

今回は博士号取得に関しての記事を書きました。実は現在インドにいまして、執筆に十分な時間が取れませんでした。随時更新していく予定で、とりあえず、「Done is better than perfect」の信念で、アドカレ日時内に投稿する目的で公開します!

YouTubeでも話しています!

では!

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