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優しさというのは想像力のこと。 [お返事兼卒業note]
「優しさというのはね、想像力のことですよ」
温かい声に、一止はただ声もなく耳を傾けていた。多くのことを伝えようとして行きついた、それがひとつの答えだったのか。
・・・
…書棚を眺めたまま、独り言のようにつぶやいていた。
「あなたは優しい人だ。だからこそ、私のわがままを聞いてくれたんでしょうな」
そのまましばし身じろぎもせず、背表紙の群れを見つめていたが、やがて我に返ったように一止に視線を戻し、穏やかに微笑んだ。
「しかし優しい人は、苦労します」
先生はたぶん苦労人だ、と笑った声が、いつまでも耳の奥に響くようであった。
POOLOに入ってから、いろんな人から優しい言葉をもらってきました。言葉の形もさまざまで、口頭やチャットはもちろん、メッセージカードや手紙だったり、動画やサプライズという形だったりもしました。
場所や場面もさまざまで、旅先だったり山の麓だったり、誕生日や卒業式、年の暮れや年初めだったり。
みんな優しいなあ、嬉しいなあ、と思う一方で、自分はこれまであまりそういったメッセージを自分からは送ってこなかったし、もらったメッセージに対してもあっさり返してました。
ふと、そんな自分は嫌だなーと思ったのでこのnoteを書くことにしました。
そう、これは自分のために書くnoteです。「お返事返さなきゃ」とか「卒業note書かなきゃ」とかではありません。たぶん。
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とはいえ長々と書くのはあまり得意ではないし、伝えたいこともギュギュッとすると2つだけです。
ありがとう!
これからもよろしく〜
ようやくすっきりしたので、最後に少しだけ表題の話をします。
「優しさというのはね、想像力のことですよ」
これは冒頭にも引用した僕の好きな小説『神様のカルテ 0』に出てくる、ある末期患者のセリフです。
この患者は元国語教師で、自宅の書斎には多くの蔵書が揃えられています。
「本はよいですな、先生」
それが國枝さんの口癖であった。
「確かに本は良いですが、肝腎な時にかぎって、なかなか役には立ちません。國枝さんのように、治療を引き延ばそうとする患者に対してどうすればよいか、『草枕』にだって答えは書いていない」
いささかの皮肉を込めてそう言う一止に、しかし國枝さんは存外真面目な声で応じた。
「本にはね、先生。”正しい答え”が書いてあるわけではありません。本が教えてくれるのは、もっと別のことですよ。
…ヒトは、一生のうちで一個の人生しか生きられない。しかし本は、また別の人生があることを我々に教えてくれる。たくさんの小説を読めばたくさんの人生を体験できる。そうするとたくさんの人の気持ちもわかるようになる」
・・・
「わかると良いことがあるのですか?」
「優しい人間になれる」
・・・
「しかし今の世の中、優しいことが良いことばかりではないように思います」
「それは、優しいということと、弱いということを混同しているからです。優しさは弱さではない。相手が何を考えているのか、考える力を”優しさ”というのです」
・・・
そのまましばし身じろぎもせず、背表紙の群れを見つめていたが、やがて我に返ったように一止に視線を戻し、穏やかに微笑んだ。
「しかし優しい人は、苦労します」
先生はたぶん苦労人だ、と笑った声が、いつまでも耳の奥に響くようであった。
このセリフを引用して、だから本をたくさん読むべきだ、と言いたいわけではないです。
冒頭にも書いた通り、POOLOに入ってからいろんな人から優しい言葉をもらってきました。そうして思うのは、みんな優しいなあ、嬉しいなあ。
そして、みんな苦労してきたんだろうなあ、と。
(あと、これからも苦労するんだろうなあ、と。笑)
でも、そんな人たちだからこそ、出会えてよかったです。
これからもよろしくね。
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