《馬鹿話 676》 体位
僕がぎっくり腰と云うやつをやった時の話だ。
ある日の朝、僕は何時ものように車に乗り込んで、会社に向かおうとした時だ。
運転席のドアを開け、車に乗り込もうとした瞬間、それが襲って来た。
最初は、言葉通りぎっくとしただけだったんだが、僕は大丈夫だろうと思って車に乗り込んだ。
暫く運転していると、段々痛みが襲ってきて、もう腰を動かせないくらいに痛くなったんだ。
そこで、僕は運転席のシートを調整して、できるだけ腰を固定できるようにして会社に向かったんだが、会社に着くなりそのまま整形外科に直行だった。
そこまでは、何も面白くない話だと思うんだけど、話はこれからさ。
僕は痛みに堪えて、診察室のベッドに寝転んでいた。
すると、仕切りのカーテンの向こう側にも、誰かが寝ていることに気が付いた。
当然、僕と向かい側は薄いピンク色のカーテンで仕切られているから、カーテンの向こう側に誰が居るのかは分からなかったよ。
でも、声はよく聞こえるのさ。
これから、治療の前にレントゲンでも撮ろうとしていたんだろうね。
先生とその患者さんの声が聞こえた。
患者さんは、多分声の感じからすると40~50代の女性だった。
先生がその患者さんに聞いたんだ。
「どこで、腰を痛めましたか?」ってね。
するとその女の人は「今朝お布団の上です」って答えたんだ。
先生は「そういう方も多いです」と言っていた。
「状況はどんな時でしたか?」と先生が尋ねると、その女の人は「上になった時です」って言ったんだ。
「上になった時?」と先生が言ったから、僕も「上になった時って?」と女の人の答えに興味を思ったんだ。
「布団から起き上がろうとした時ですね」と先生が尋ねると、女の人は「上げたり下げたりした時、急に腰が動かなくなちゃって」と可笑しなことを言い出したんだ。
僕は笑いを堪えるので必死になったけど、先生も可笑しかったんだろうね。
早くその場を離れて笑い出したかったんだと思うよ。
「そのまま楽な体位でいてください」と先生が言うと、女の人は「正常位ですか?」って真声で訊いたんだ。
もう僕は堪えられなくなってクスクス笑ったよ。
すると、腰に笑いが響いてさ、痛いし可笑しいし大変だったよ。