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《馬鹿話 730》 終わらない話
「ちょっと思い付いたんだけど」と肉屋が声を掛けた。
八百屋は「何をだい?」と返事をした。
「鶏肉は肉屋、豚肉は肉屋、牛肉は肉屋、鯨肉は魚屋」
「どう、ちょっと言いにくいでしょう」と肉屋が言った。
「じゃあ俺も言うぞ」
「マンゴはマンゴ、子マンゴはマンゴ、孫マンゴもマンゴ」と八百屋が言った。
「なんだいそれ、その孫マンゴって言うのは何だよ」と肉屋が言った。
「孫マンゴってのは、子マンゴの子マンゴに決まってるだろ」と八百屋が答えた。
二人の馬鹿話を傍で聞いていた魚屋が、自分も話に入ろうとやって来た。
「マンボウはマンボウ、子マンボウはマンボウ、孫マンボウもマンボウ」
魚屋が突然早口で言った。
「おっ、なかなかやるねー。では、これは」と肉屋が早口で言った。
「ウチモモ、ソトモモ、ミスジ、ウワスジ、クリ、サンカク」
すると対抗心を燃やした八百屋が早口で言った。
「マツタケ、クワイ、ソラマメ、チョロギ、ササゲ、オクラ」
それを聞いた魚屋が更に早口で言った。
「モロコ、アカガイ、タチウオ、マス、カキ、ヤリタナゴ」
永遠に終わりそうもないので、肉屋が八百屋と魚屋に言った。
「ちょっと思い付いたんだけど」
「二人は牛と馬の肉ならどっちが好き?」
すると八百屋が言った。
「牛と馬なら、牛が旨いに決まってら」
それを聞いて魚屋が答えた。
「そうだなぁ、俺は牛肉食べてウマかった」
そして三人は、終わらない話を続けるのであった。