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取り調べ資料8【告白】

人間が猿から伝来したと言うには猿はあまりにも善良である      ーニーチェー

なぁ、お前さ、なんか余計なこと言っただろ?

そう僕の机の上で話しかけているのは隣のクラスの藤内さん。

論点が見えてこないな…とりあえず僕の机からどいてもらえたりするかな?
スカした喋り方するやつだなぁ…かっこいいと思ってんのか?
初対面から、喧嘩腰の人に、何を話せばいいのかな?
はぁ…はじめましてぇ、しろつちくん。君が余計なこと言ったから俺怒られたんですけど謝ってもらえますぅ???
はぁ…?それは可哀想に、ごあいにくでしたね、ご愁傷様です。
なぁお前、俺のこと舐めてるだろ?
暴力で人を懐柔できると本気で思っている内は。

彼が苛立ちから強く握りしめた拳が、僕の頬骨目掛けて飛んでくる。

おい、泣くなよ、また怒られたくねぇからよ
怒られたくないだなんて…君はまだまだ子供みたいだね…

腹部に左腕がめり込む

おめぇが余計なこと教師に吹き込んだんじゃねぇかって言ってんだよ!おい
言ってないよ、頭の中でのシミュレーションを現実と誤認しちゃったんじゃない?

胸ぐらを掴まれる。現実でこんな喧嘩腰の人を初めて見た

男なんだから少しくらいやり返そうとかおもわねぇのかお前
自分の常識や考えが間違っているとか考えないの?君は
さっきから会話になってねぇよ、質問に答えろ。
会話になってないのは君が対話をしないからでしょ?答えろもなにも、君のいう余計なことがわからないのになにを答えろと?
お前それは…

…こら!!!!藤内くん!!あなたまた…って…
なにしてるの!!!?血出てるじゃない!!誰か!!池川君を保健室に連れて行って!!それから…藤内くんは…



ふぅ〜…しろくぅん…何であんなに煽ってたの?
何で優佳まで保健室にいるの?
え〜そんな恥ずかしいこと言わせないでよ〜…しろくんに会いたくて❤︎
サボりだな、ひまわり教室でサボればいいだろお前は
しろくんに会いたかったのは本当だもん。最近なんか落ち込んでるみたいだし〜
あの…
なぁにぃ?山田さん。
いや…しろくん、怪我がひどいから、あんまり刺激しないで欲しいな…って
はぁ?なに?俺がしろくんに無理させてるって言いたいの?
あ…いや…
優佳…辞めて…
はぁ〜!!?しろくん俺の味方してくんないのー!?
違うよ、2人とも大切だから喧嘩しないで欲しいの、わかってくれる?
え〜、俺だけのしろくんでいてよぅ
愛永が保健室まで運んでくれなかったら、僕は教室で死んでたかもしれないよ…?
なるほど…じゃあちょっとだけ許してあげるよ山田さん
あ…ありが…とう?
ごめんね愛永、ありがとう。
いや…私は…

みてただけだし…
僕を運んでくれたでしょ?そのこと以外は僕の問題でしかないよ。
私が余計なこと言ったからなんでしょ?
…なにが?
私が篠崎さんのこと言ったから、しろくんが先生に言ったりなんかして…こんなことになっちゃったんじゃないの…!?
え〜!みゅうが関係してるのー!ゆるせな〜い!
お前にとっての僕がどのくらい大事なのかたまにわかんなくなるよ…
一番!ママよりパパよりね!
…さて、愛永

こら!返事しなさい!
そろそろ怒るよ優佳、教室に戻ってて。
はぁ〜い!早く帰ってこないと山田さんといい雰囲気だったって皆に言いふらすからね
怪我してるんだから帰るよ、お前も嫌なら帰れ
ぴえん

…でていったか…ごめんね空気の読めないやつで。
うぅん、おかげで少し気持ちが落ち着いた。
強いね愛永は、だから僕なんかのために傷ついてくれる。
…なんかだなんて言わないでよ
俺なんか、だよ、愛永が気にかけてくれる価値なんかないよ、それに何も愛永のせいでこうなったことなんてないんだよ。
私…
…ん?


私、好きだよ、しろくんのこと
…そ……れは…
…ほら、困ってるでしょ?分かってるんだ、篠崎さんのことが好きなんでしょ、だから私が一緒にいられることなんてない、分かってるんだ、分かってるけど!!

ちょっとでも私の方に向いて欲しくて…


愛永が…俺のことを好きだなんて考えてもいなかった、そもそも、人に好きだなんて思ってもらえるなんて、おもっていなかったから。

あのさ、愛永
…はい…
僕は多分篠崎さんのことを好きじゃないよ。
…は?いや、いいよ、気なんか使わなくって、私が悲しんでるから…
いや…わかんないんだけど、多分篠崎さんに感じる感覚は好きじゃない気がするんだ、いや、好きではあるけどLOVEではないって言うか…
…は?じゃあ何?私が勝手に嫉妬して、勝手に余計なこと言って、勝手に傷ついて勝手に告白しちゃったってこと?
…う〜ん、多分?
…あの…私帰るね…
あ、待って
待たないよ、もう顔合わせたくないもん
え…なんで…?
ブサイクな顔…見せたくないし…
愛永…今度また、返事させてくれる?
…嫌だ、傷つきたくない。
はぁ…愛永、こっち向いて

目を向いて話させて?
…何
僕、遥ねぇのことがあってからずっと、毎日眠れない、遥ねぇのことを引きずってて、自分のことを好きになれない。
うん
だから、自分に人のことを好きになる価値があると思えない。
うん
それでも、僕のことが好き?

…嫌いになった?
何回も言いたくないの!!好きだよ!宮崎から大分に来てたまたま再開したら、すごく大人っぽくなってて、私が1人の時に声かけてくれて、ほかの友達と居ても、いつも私を気にかけてくれる!しろくんが好き!しろくんがどう思ってようと関係ないの!!
…ごめんね、僕が弱いから。
…ずるいよ。
それでも君がいいって言ってくれるなら、僕は愛永なら、そばにいて欲しいと思えるよ
…教室…戻るね…
ありがと



あとは、給食の前くらいまで、保健室で横になってよう、お母さんが大体そのくらいの時間で来るはずだから…





ん…んぅ…

自分のベットでなければ少しは休めるかと思ったのだけど、薬なしじゃやっぱり碌に寝れやしないな…

しろくん…?
…?篠崎さん……?
よかった…あの…お話ししたいことがあって…

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