
取り調べ資料16【池川家家宅捜索詳細書(送付資料あり)】
池川堊
紅華中学1年、生徒会執行部庶務
周囲からの評判良し、成績平均程度
教師曰く、交友関係は浅く広くと言った感じで、年齢の割に礼儀がしっかりした子で大人びた印象を持つ子供
幼少期宮崎県延岡市にて、交通事故に巻き込まれPTSDの症状あり、延岡市内の精神科病棟入院後緩和、軽度の発達障害(文字のバランスが崩れる程度)と、PTSDの症状に付随した軽度のトラウマ症状あり。
「ふむ、一般的なお家の普通の子みたいですけど、本当に篠崎みゅうちゃんの失踪になにか関係があるんですかねぇ?」
「今の時代、監視カメラはどこにだってついてる、ついてねぇのは便所か更衣室くらい…」
「どこかで目撃証言があるのですか?」
「2日前、彼女が失踪する前、彼に会いに行っているところをみた、との同級生ならの事情聴取記録がある。」
「お言葉ですが、それなら、池川くん本人に聞いてみれば早かったのでは?」
「その通りだよ、だけど本当に関係があるなら、分かってて俺たちに黙ってるってことになるだろ?何か隠したいことがある奴に正面から突っ込んで行っても警戒されるだけだ。」
「なるほど…」
「しかし…だ、何も行動しなくては変わらないのも事実だ、後藤警部補、君が少し池川君のお家を訪ねて話を聞いてきてはくれんか?」
「はっ!でもなぜ自分に?」
「いや、お前はそのお節介な性格で子供好きだろ?こういうのはTHE!大人!みたいなやつが行くと本当に警戒されて何も喋ってくれないどころか悪化することだってあるんだよ。いいか?みゅうちゃんが生きているとも限らない、極めて繊細な調査であると、胸に刻んで向かう様にな」
「ハッ!すぐ調査を開始いたします!!」
…とは言ったものの、という感じである。
正直この話にあまり踏み込みたくないなぁとは思っている。
失踪の情報を警察に提出したのは学校の教師だという、その時点で察するものがあるのだが、彼女の母親は何をしていて、どうして気づかなかったのかという話である。
鍵っ子…とは言っても学校の教師が気づいて、親が気づかないなんてことがあり得るのだろうか、…とも考えればやはりネグレクトや虐待が付随して出てくる可能性が高い。
今回調査をしろと言われたこの池川くん、どうやら行方不明の篠崎ちゃんと非常に親密だったそうだし、気づかないわけはないだろう。
となれば、この池川君が篠崎ちゃん守るために匿っているという可能性も視野に入れていいだろう。だが、私の立場からすれば、本当に匿っていた場合は、その彼を捕まえて、ネグレクト(仮)の母親に返す必要があるということである。
結局、私にはどうもできないのだ。だからこそ、関わりたくない。私としては、まずは篠崎さんの家を調べてから行きたいところだが、上から直々に向かうよに言われたのではしょうがない。虐待が付随してくるのであれば、彼・彼女らはきっと今、大人の人に対しての警戒心でいっぱいのはずだ、少しでも大人を頼りにしてもいいんだよと、伝えてあげれるような接し方をしてあげたい。しかし無理に取り入ろうとしすぎては、この件を探っている怪しい人間であるというレッテルを貼られかねない。
…とりあえず、池川くんから話を聞いたら、篠崎さんの家に向かい報告書をまとめよう。
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「えっと…彼女のプライバシーに関わることですので、あまり詳しい内容は言えませんが、どうやらあの子の…」
驚いた、池川くん本人から情報が飛び出てくるとは思わなかった、家にいないでいてくれればとも思っていたのだが、これは及第点と言える成果を得られた。
ーーー「というのが今回の調査結果です、続いて、お手元の資料から、篠崎さんについての調査結果を報告します。」