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取り調べ資料15【家宅捜索情報なし】

「皆さんにお知らせがあります、1年6組の篠崎みゅうさんが先日から行方不明になっているそうです、何か心当たりのある生徒は、職員室か、担任の先…」







「って、今日学校で話があったんだ、みゅう、これからどうしようか。」
「しろくんが、したいようにして…いいよ?迷惑は…かけられない…し」
「ごめん、意地悪な言い方だったね、ただ2人で話し合いたくて…その…うん…」

肩を振るわせる彼女を見て暗いものが込み上げる。
どうしてあの時、あの日、俺は止められなかったんだろう。


「お腹…空いたでしょ?ご飯買ってきたよ、あんまり栄養のあるもの買えないから…これからお金のこともしっかり考えないとなんだけど…」
「あの!!!!やっぱり…私、しろくんに、しろくんの迷惑なんじゃない…かな?」
「俺は.…、その…」
「?」
「ううん、ごめんね、なんでもないよ、大丈夫。これからのこととかは、また…考えておくから。それより、ほら、食べよう、せっかく買ってきたんだしさ。」



見ないふりをしていても気づいてしまう、俺はただ、君に遥ねぇを重ねているだけなんだと、わかっている。
君は違うっていうことも、分かっている。だから君をずっとここに置いておこうと思っていることが間違いだってことも、君の助けになることじゃないってことも



君の助けになんかなれないってことも。









ドンドンドン!!
ドアの音が響く、嫌な予感だ。

「すいませーん!!大分県警のものなんですけど!!」


…そりゃあまぁ、怪しいよな、最後に会ったのは俺なんだし。
にしたって良くもまぁ3日もバレなかったなとは思うが。
それもこれも…


「ぁの…しろくん…やっぱり…」
「大丈夫、任せてくれれば大丈夫だから。」

こんな行為が間違っているだなんて、わかっている。それでも君を助けるのは僕でありたいというエゴが、この愚行を止めることができない。



「とりあえず…さ!俺の両親の部屋のクローゼットに、靴を持って隠れてて。」

間違っている。


今の君から離れるべきではないのかもしれない。
今の君はきっと大人の力が必要だし。
僕が関わることでただ、傷つけてしまうことになるのかもしれない。
「…わかった…しろくん…ありがとう。」
そう言って彼女はくぐもった表情のまま、クローゼットの中へと消えた。




正しい生き方や、間違った人生だなんて、今の僕には知り得ないが、人生の不幸はきっとこうして生み出されていく。










「はーい!どうかされましたか?」
「…あれ、君1人?何してたの?」
「今は1人です!すいません遅くなってしまって…うとうとしてて…」
「ふむ…君が堊くん?すごい名前だね...」
出るのが遅くなってしまったことで怪しまれてしまっていることは、いい事とは言えないが、おかげでこの警察官の方が僕の名前までわざわざ調べて会いにきたことがわかったというのは一つアドバンテージとしておこう。まぁ何と戦っているのかという話ではあるが、わざわざ親ではなく僕の名前を見てきているということは十中八九みゅうのことである。
「はは…もう言われ慣れました…」
「ははは…最近キラキラネームって言うのが多くておじさんついていけないね。」
「はは…正直、こんな名前の僕自身もなんなんだこの名前はって思ってます…って、どうされたんですか?警察の方が。」
「あぁ…そうだ、私は大分県警の、後藤三四郎と言います、本日は少しお話を聞かせていただきたくて…」
前口上は正直どうだっていい、そうやって信用を得て、口を割らせようという警察官の動きは、かえって、同時に僕の心を遠ざけていっていた。
「篠崎さんのこと…ですか?」
「おぉ!!はい、どうやら仲が良かったそうで…行方不明になる直前にも一緒に会っていたそうですね?」
「…そう…ですね、篠崎さん…」
…いや、待てよ、この状況は最大限活かせるんじゃないだろうか…
「…?どうかしたかい?」
「あぁ、いえ、まだ頭が回っていなくて…えぇと、篠崎さんの話でしたよね?確かに会いました。3日前、僕は彼女に呼び出されて、あの場所にいました、少し話があるということで…いろいろ話を聞いていました。」
「ふむ…その…話…というのは?」
「彼女のプライバシーに関わることですので、あまり詳しい内容は言えませんが、どうやらあの子の…」














家宅捜査、情報なし
調査報告ーーー


篠崎みゅう失踪から3日経過

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