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感性の食育学「食とことば」

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星付き店を含む国内外数千軒の食体験を背景に持つフードコラムニスト・フジワラコウのマガジン「感性と食育学~食とことば~」です。ミシュラン・ガイドやゴ・エ・ミヨ等の評価機関をはじめ、…
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#食育

「美味しい食べ物」は存在しない

「美味しい食べ物」は存在しない

 「美味しい食べ物」は存在しない。食と感性を扱うコラムとしては常軌を逸したテーマと言えそうだが、紛うことなき筆者自身の考えである。ただし、その真意をご理解いただくには、いくつか説明が必要になる。

 予てより筆者は飲食物や飲食店等の感想・評価が情報となって他者から他者へ伝播する際、事実を除く価値性の大部分は媒介者の相対尺度によって維持されるため、その純度や密度は一次情報から二次三次へと段階を経るご

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なぜ「他者の美味しい」は信用できないのか

なぜ「他者の美味しい」は信用できないのか

 テレビやSNSなど各種メディアで話題沸騰のスイーツ店。長蛇の列に1時間以上並んで買ってはみたものの、声高に言うほどの味ではない。オープン直後から有名グルメサイトで高得点を叩き出し、全国にその名を轟かせた気鋭店。遠路はるばる足を運ぶも想像していた味と全く違う。お高い飲食店に足繁く通う食通の知人に勧められ、清水の舞台から飛び降りるつもりで数ヶ月前から予約した高級レストランの味がまさかの期待外れ。

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「美味しい」は美味しさを騙る

「美味しい」は美味しさを騙る

 好ましい食べ物を口にした時、「なぜ美味しいのか」とあれこれ思索するのは筆者にとっての日常だ。一般的には何かしら食への探求やレシピの研究・開発等でもしていない限りそのような態度は稀であろう。美味しさとは深々と考え込む対象ではなく、素直に感じ、浸るものなのだ。ましてや往年のグルメ漫画のように美味しいと感じた理由や経緯を聞かれてもいないのにペラペラと喋ったり、逆に他者から根掘り葉掘り聞かれるといった尋

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