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「国家の逆襲」を読んで

(はじめに)


 
最近極めて興味深い本:The Value of Everything, Making and Taking in The Global Economy (邦訳:国家の逆襲)を読みました。慣れない経済の問題を扱っていますが、現代の世界的な問題を考える上で大変貴重で他では全く得られない知識が詰まっていました。是非、皆さんもお読みいただければと、ここにご推薦いたします。

本の内容の概略


かいつまんで内容をご紹介しますと、この本は、ここ30年、イギリスやアメリカが筆頭になって、銀行と金融が結びつき、何も生産しないにもかかわらず、お金を右から左に移動させるだけで巨額の利益を、国民から吸い取っている実態を明らかにしています。そして、世界の人々に大きな警鐘を鳴らしています。銀行と金融は、国家が邪魔で、小さな政府がよい、規制はない方がいいと、政治家を丸め込んで法律を変えさせています。昔は、銀行は国富をうむものではなく農業や工業などが国富を生み出すものだとされてきましたが、現代の英米の経済学は、全く、間違っており、銀行と金融が、国民や国家から価値の抜き取りが大規模におこなわれており、金融経済で稼いだ金をGDPに算入しています。そこでは目先の短期利益ばかり追求して、長期の研究投資やインフラ整備は行われず、工業や公共事業は衰退していきます。しかしながら、何も生産していないのに、金融でGDPが向上していると称賛する経済学になっています。経済学が間違っているのです。誰かが、この悪魔の経済学理論を打ち破り、本当に汗して働いている人の手元に、お金が残るような経済学と政治を作らなければなりません。

(おわりに)


素晴らしい本です。こういう視点が今の日本人に必要だと思います。「国家の逆襲」是非ご一読ください。
 
 
 
令和7年(2025年)1月8日 随筆
令和7年(2025年)1月22日 加筆


追記1

(転売目的)


 皆さん、上述の「銀行と金融が結びつき、何も生産しないにもかかわらず、お金を右から左に移動させるだけで巨額の利益を、国民から吸い取っている実態」というのが、ぴんと来ない方もいるかもしれませんね。
 35歳~45歳くらいの皆さんは、20年位前にSNSの走りで日本初の「ミクシー」っていうサイトが物凄くはやっていたのを覚えておられるでしょう。今のFacebookみたいなものでした。今もありますが、創業者の社長は、アメリカに進出する資金にしようと、この会社をアメリカのファンドに売りました。しかし、このファンドは1年もしない内に、ミクシーを転売して、巨額の利益を得ました。こういう、自分で、その会社を継承してやるつもりがなく最初から転売目的な行為が、「右から左に移動させるだけで巨額の利益」を得る手段になっていることを指します。
 会社の転売は禁止行為にはなっていませんが、なんだか違法行為の様に思える人が多いでしょう。そう、それは「ダフ屋行為」とかわらないからです。ダフ屋行為とは、転売目的でチケットや乗車券を購入したり、高値で転売したりする行為です。迷惑防止条例やチケット不正転売禁止法によって禁止されています。
 人気チケットや人気フィギヤーの転売は、違法で禁止行為ですが、会社の転売はM&Aとしてもてはやされています。普通の人から見たら、おかしいと思いますよね。そこで、この「国家の逆襲」の著者は、そのことを指摘しています。何も国富を生み出しておらず、国家が貧しくなり、人々の貧富の差が拡大していくと警告しています。そんなことを続けていると今に国家破綻がくる。中国の大量のマンション建設で行きづまった恒大の例を見てわかるように、多くが投資目的で住むつもりのない購入者は、コロナ不況後転売が出来ずに、みんな、会社も個人も経済的に破綻するのです。

令和7年(2025年)1月23日

追記2

私が昔勤めていた東芝も、原子力事業の失敗で多額の負債をかかえ、その立て直しのため、ファンドなどから多額の借り入れをしました。短期利益を目指すファンドは、優良な事業所を次々に切り売りしろと言い、彼らはその切り売りで多額のもうけを出しました。しかし、こんなことを続けていては、優良な事業所から真っ先に無くなって行くので、このままではファンドに食い荒らされてしまい、東芝そのものが立ちいかなくなってしまうと、多くの東芝OBは心配していました。東芝は、そこで、昨年12月あえて上場を廃止して、これらのハゲタカファンドのM&Aから逃げたようです。上場企業がステイタスというというイメージがありましたが、上場するのが良い事ばかりではないというのが、東芝の例からもわかります。東芝OBとして、東芝の復活を期待しております。
東芝や、船井電機[1]の事例を見ると、業績が悪化した時に、どう経営するかが、生死を分けるような気がしますね。

[1]  船井電気破産申し立て https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241203/k10014657161000.html

令和7年(2025年)1月25日
 
ご参考
*1「米中はなぜ対立するのか② マネーが倫理を破壊する」
https://note.com/lql/n/n456611183bd8

*2 故森本卓郎さんが、亡くなられる直前に、上述の(追記2)と同趣旨のことを述べらておられます。
「ろくでもないビジネス」と喝破していた「エリート集団」の「職業の名前」…そのヒドすぎる「嘘」と「詐欺」https://gendai.media/articles/-/146124:2025年2月15日記事

---------(以下、一部これより引用)-------
外資系銀行の“ろくでもないビジネス”

要は、彼らは次の3つをやっているに過ぎない。
1つ目は「相場操縦」だ。マーケットに介入し、自分たちが儲かるような相場を作っている。
2つ目は「M&A」。会社を買収し、転売して利益を出す。
3番目は、いろいろなデリバティブ取引を活用して、「低リスク高利回り」をうたうインチキ金融商品を販売すること。
 1についてはもちろん法律に触れない範囲でやっているわけだが、誰が見てもグレーな仕事だろう。2についても、M&Aが本当に経済の役に立っているかどうか疑わしいと私は考えている。もちろん、経営が悪化した会社を買収し、そこに資本やノウハウを注入して再建することはあり得る。ただ、いわゆる「外資系のハゲタカ」は、そんな面倒くさいことはやらない。バラバラに解体して転売するだけだ。3つ目についても、「低リスク高利回り」は名ばかりで、実際には「ハイリスクハイリターン」商品だ。リーマン・ショックはこうしたデリバティブ商品の暴落がきっかけになったので、こうした商品を売ること自体、経済を不安定にする行為だろう。
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